何を今更と言われそうですが、ツタヤに言ったら2の方がレンタル中だったので仕方なく1の方を見返すという暴挙に出てみました。ていうか似たような理論でRECのパチモンみたいな映画が貸し出し中だったから仕方なく1を……という流れが以前あったような気がして、本作を見るのはもう三度目だか四度目になります。そんなに好きか。いや別に好きではないんだが。

いわゆるPOV、Point of View方式で撮影された映画。まあ英語で言うと格好いいように聞こえますがその実なんてことはない、「カメラで手撮りした風味のエセドキュメンタリィ」と言ってしまえば身も蓋もないですがこの形の映画は低予算でもその気になれば(そして才能があれば)出来の良いホラー映画、パニック映画が撮れるってんで、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『クローバー・フィールド/HAKAISHA』以後乱造されるようになりました。
当然雨後の竹の子のごとく乱発されれば中身の方は推して知るべしみたいな有様でして、パチモン以下のゴミみたいな作品が生まれては消えていく儚い映画事情の中、全く無名の役者陣を使って成功を収めたのがこの『REC』でした。

TV局レポーターのアンヘラは消防士への密着取材中、あるアパートを訪れた。老婆が暴れているらしく、消防士や警官らが取り押さえようとするが、老婆は逆に警官に噛み付いてしまう。なんとか襲われた警官を助け出し、手当てのためにアパートの外に出ようとすると、出入り口はなぜか警察によって封鎖されていた。このアパートには何があるのか? そしてアンヘラたちが回し続けるカメラには、恐怖の一夜が映し出されることになる……。

上記のあらすじ以外に特に書くことはないんだけど、まあ、一生懸命中身を埋めなきゃそもそも刑に服していることにならないので、水増しに水増しを繰り返していきたいと思います。
『ブレア・ウィッチ~』では正体不明の存在(ブレアの魔女なのかどうかも不明)が、『クローバー・フィールド』では場面進行に合わせて体長が激しく伸び縮みする変な怪獣が襲ってきましたが、本作『REC』では未知の疫病に感染したアパートの住人達が襲ってきます。この未知の疫病、最初は犬に噛まれた奴から感染したという設定なのですが、何かラストの方では教皇庁がどうの悪魔に取り憑かれたのどうのと、設定の方が今ひとつ固定されていません。
まあホラー映画で設定が二転三転するのは日常茶飯事というかむしろ必須条件みたいなもんなので、そこらへんに突っ込むのは野暮というもの。これ以前のPOV方式で撮影された映画は「撮っている人間が素人なんだから、映像を固定することなんてできませんよ」という言い訳のもと、画面がグラグラ揺れて三半規管に著しいダメージを与えてくれたものですが、本作では撮影者がプロのカメラマンという設定のため、あの嫌なグラグラもなく安心して鑑賞することができます。

未知の疫病に感染し凶暴化(攻撃力アップ+HP大幅アップ+バーサク状態)したアパートの住人達、唾液によって感染するからか何なのか、主な攻撃手段は噛みつきです。ぶっちゃけちゃうとゾンビ映画やんけということになってしまうのですが、「この設定だと生きてる感染者を射殺してることになっちゃって倫理上まずい、ゾンビは一端生命活動が停止しているんですよー」という設定をバイオ3から慌てて付け足したカプコンのごとくに開き直り(4からはもう寄生虫の感染者←撃つと凄く痛がる人達をバシバシ射殺してましたね)、後半は怒濤のゾンビ・ラッシュ。
うっかりさんの集まりなのか、ことごとく一箇所に集まって防衛するという知恵の働かない住人達は次々感染、最後までアンヘラを守ろうとした消防士もいつ噛まれたのか知らないけどゾンビ化しちゃって、辿り着いたのは最上階の秘密の部屋。そこにはこの疫病に関する重大な秘密が隠されていた……という流れでして、まあネタバレしちゃうとアレなので詳しくは書きませんけれども、見ている誰もが「まあ、そりゃそうなるわな」というエンディングを迎えます。

映像は割と綺麗だし、素人っぽい役者陣が混乱し、狼狽し、慌てふためく様子が真に迫っていて迫力十分。「狭いアパートにゾンビっぽい感染者が出たよ」という一発ネタで1時間半近く持たせてくれる本作、もし未見の方がいらっしゃいましたら是非に! 一度御覧になってくださいませ。