『REC』

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何を今更と言われそうですが、ツタヤに言ったら2の方がレンタル中だったので仕方なく1の方を見返すという暴挙に出てみました。ていうか似たような理論でRECのパチモンみたいな映画が貸し出し中だったから仕方なく1を……という流れが以前あったような気がして、本作を見るのはもう三度目だか四度目になります。そんなに好きか。いや別に好きではないんだが。

いわゆるPOV、Point of View方式で撮影された映画。まあ英語で言うと格好いいように聞こえますがその実なんてことはない、「カメラで手撮りした風味のエセドキュメンタリィ」と言ってしまえば身も蓋もないですがこの形の映画は低予算でもその気になれば(そして才能があれば)出来の良いホラー映画、パニック映画が撮れるってんで、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『クローバー・フィールド/HAKAISHA』以後乱造されるようになりました。
当然雨後の竹の子のごとく乱発されれば中身の方は推して知るべしみたいな有様でして、パチモン以下のゴミみたいな作品が生まれては消えていく儚い映画事情の中、全く無名の役者陣を使って成功を収めたのがこの『REC』でした。

TV局レポーターのアンヘラは消防士への密着取材中、あるアパートを訪れた。老婆が暴れているらしく、消防士や警官らが取り押さえようとするが、老婆は逆に警官に噛み付いてしまう。なんとか襲われた警官を助け出し、手当てのためにアパートの外に出ようとすると、出入り口はなぜか警察によって封鎖されていた。このアパートには何があるのか? そしてアンヘラたちが回し続けるカメラには、恐怖の一夜が映し出されることになる……。

上記のあらすじ以外に特に書くことはないんだけど、まあ、一生懸命中身を埋めなきゃそもそも刑に服していることにならないので、水増しに水増しを繰り返していきたいと思います。
『ブレア・ウィッチ~』では正体不明の存在(ブレアの魔女なのかどうかも不明)が、『クローバー・フィールド』では場面進行に合わせて体長が激しく伸び縮みする変な怪獣が襲ってきましたが、本作『REC』では未知の疫病に感染したアパートの住人達が襲ってきます。この未知の疫病、最初は犬に噛まれた奴から感染したという設定なのですが、何かラストの方では教皇庁がどうの悪魔に取り憑かれたのどうのと、設定の方が今ひとつ固定されていません。
まあホラー映画で設定が二転三転するのは日常茶飯事というかむしろ必須条件みたいなもんなので、そこらへんに突っ込むのは野暮というもの。これ以前のPOV方式で撮影された映画は「撮っている人間が素人なんだから、映像を固定することなんてできませんよ」という言い訳のもと、画面がグラグラ揺れて三半規管に著しいダメージを与えてくれたものですが、本作では撮影者がプロのカメラマンという設定のため、あの嫌なグラグラもなく安心して鑑賞することができます。

未知の疫病に感染し凶暴化(攻撃力アップ+HP大幅アップ+バーサク状態)したアパートの住人達、唾液によって感染するからか何なのか、主な攻撃手段は噛みつきです。ぶっちゃけちゃうとゾンビ映画やんけということになってしまうのですが、「この設定だと生きてる感染者を射殺してることになっちゃって倫理上まずい、ゾンビは一端生命活動が停止しているんですよー」という設定をバイオ3から慌てて付け足したカプコンのごとくに開き直り(4からはもう寄生虫の感染者←撃つと凄く痛がる人達をバシバシ射殺してましたね)、後半は怒濤のゾンビ・ラッシュ。
うっかりさんの集まりなのか、ことごとく一箇所に集まって防衛するという知恵の働かない住人達は次々感染、最後までアンヘラを守ろうとした消防士もいつ噛まれたのか知らないけどゾンビ化しちゃって、辿り着いたのは最上階の秘密の部屋。そこにはこの疫病に関する重大な秘密が隠されていた……という流れでして、まあネタバレしちゃうとアレなので詳しくは書きませんけれども、見ている誰もが「まあ、そりゃそうなるわな」というエンディングを迎えます。

映像は割と綺麗だし、素人っぽい役者陣が混乱し、狼狽し、慌てふためく様子が真に迫っていて迫力十分。「狭いアパートにゾンビっぽい感染者が出たよ」という一発ネタで1時間半近く持たせてくれる本作、もし未見の方がいらっしゃいましたら是非に! 一度御覧になってくださいませ。
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『KEY THE METAL IDOL』

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多分僕がアニメという媒体を好きになる切っ掛けとなった作品。本作がなかったら僕の中のアニメ遍歴は恐らく『ゲゲゲの鬼太郎』ぐらいで終わっていたことでしょう。まあそれはそれでいいんですけどね。水木先生はいつまで経っても僕の心の師匠なので、その師匠の作品でアニメ遍歴が閉ざされるというのもまた一興。

いやしかし本当に鬼太郎は面白い。特に面白いのは新版、及び最新版。新版はヒ一族とかが出てる方で、最新版はやけに劇画タッチになったぬらりひょんが大暴れする方の話です。新版がかつての古き良き(怪奇を前面に押し出す形の)鬼太郎であるのに対し、最新版はさながら冒険活劇。主人公であるはずの鬼太郎ぬらりひょんにボコボコにされ夜行さんにボコボコにされ地獄童子にボコボコにされ、とにかく主人公とは思えぬ不遇の扱い。まああいつ南国の娘と結婚したりしてますからね。アニメだと夢子ちゃん(足手まとい。最終回に至ってすら足を引っ張る役立たずぶり)がさもヒロインのようなツラしてやがりますが、実のところ鬼太郎は妻帯者なのでした。おのれ鬼太郎。僕だって独身なのに! 妖怪のくせにッ、妖怪のくせにィ! こうなったらヒ一族とか作って妖怪を全部ソーセージに変えてやるからな!

いい加減関係のないネタで引っ張るのは見苦しいのでやめます。普通に語ろう。これは本当に好きな作品なのだし。

いわゆるOVA作品としては、先駆けとまでは言わないまでも「その気になれば15巻ぐらいは続くのだ」ということをきっちり証明した作品。フジテレビが制作ということもあってか、ジャンルは珍しい芸能界もの。間違ってもアイドル八犬伝みたいなトンデモではないのでご安心を。そもそも芸能界ものと言っても、それらしい要素はあまり多くはありません。むしろ一人の少女「キィ」こと巳真兎季子(みま・ときこ)、そしてその親友である厨川(くりやがわ)さくらの成長物語です。

自分はロボットであると信じている少女、「キィ」こと巳真兎季子。彼女が山間の村から上京して以来、彼女の回りでは奇怪な事件が頻発します。しかしそれらに目を奪われることもなく、キィは自分を造った(とキィが信じている)祖父、武羅尾(むらお)が死ぬ間際に残した「3万の、純粋にキィを慕う人々の手助けによって、おまえは人間に生まれ変わることができる」という遺言に突き動かされるのでした。
初めて訪れた東京で偶然目にした、トップアイドル鬱瀬美浦(うつせみほ)のライブ映像に触発され、自らもアイドルの道を模索しはじめるキィ。無謀とも言えるその試みは、しかしキィよりも先に上京していた親友・厨川さくらや彼女が淡い想いを抱く青年・三和土州一(たたき・しゅういち)らの協力を得ることで次第に現実化していき……。

キィが自分をロボットだと教え込まれたその理由、3万人の友人を得るための試練、さくらとの友情と軋轢──様々な要素が複雑に絡み合って一本の作品として完成している本作。何げに声優も豪華で、主人公であるキィはかの「どんな役でもろくすっぽ喋らないのに、みんなとギャラはおんなじ」で有名な岩尾潤子、親友の厨川さくらには長沢美樹。その他にも若き日の森川智之、三木眞一郎などを配しています。更には『トライガン』でウルフウッドを演じ、そのあまりのヘボい関西弁に「あれは本当に関西生まれなのか」と見ている人間全てを驚愕させた速水奨も出演しており、声優好きな人にもお勧めの一品となっております。

しっかし森川さんはともかく(方向性的には最初からこの方向性を向いていたという意味ですよ)、三木さんに関してはまさかこの後ポケモンでコジロー役としてブレイクするとは思いもしませんでした。今じゃすっかり有名アイドル声優ですねえ。この頃はまだ「飲んだくれファン喰いまくり」キャラはついていなかったのになあ。

何はともあれ、DVD化を機に、今ではレンタル店のアニメの棚に行けば大抵並んでいる作品となりましたので、もし少しでもご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非是非手にとってみてくださいませ。この手のOVA全てに言えることですが、一巻をまず借りてみて、面白いと思えなかった人は続巻を借りるのは止めた方がいいと思います。作品全体の雰囲気は一巻に凝縮されていますからね。

OP、及びEDのテーマ曲を歌うのは貴島サリオ。どちらも普通にいい曲なので、早送りしないように

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『DOOR』

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ストーカー、という言葉がまだ影も形も存在していなかった頃、ストーキングを題材に取り上げた先見性溢れるホラー映画。ホラーだと思う。多分。ていうかこれを先見性と言ってしまうと、できるだけ奇抜なことをすりゃあ現実が後からついてくる方式に走ってしまう映画監督が必ず数人は出てくるわけで、そんな積極的に褒めたくはないというのも確かなところ。面白いっちゃ面白いんですけどね。手放しで褒める程かっていうとそうでもないというか、何というか。見て損はしないという意味では★3つ。珍しく本文中で評価を明らかにしているのは、特にこの映画に対して思い入れも何もないからです。

しかし世の中にストーカーという言葉を一気に広めた例の事件、本当に悲惨な事件でしたが、未だ規制法も何も存在しなかったことに加えて警察側が打てる手を全て打っているという完璧な防御法により当時のニュースを騒がせたものです。僕自身は「触れないおっぱいは干しぶどう以下の価値しかない」という信念のもと、おっぱいを触らせてもくれない女の人にまとわりつくとかマジで意味わかんないんですけど、世の中の人はきっとこういう理由ではストーカーを否定しないんだろうなあ。よく『歪んだ愛情』とか簡単な言葉で済まされてしまいがちなこの手の事件ですが、どこまで歪んでも愛情というのは相手を想っているからこそ愛情と呼ばれるものであって、執拗に悪戯電話をかけたり行く先々で待ち伏せたりするのは、それはもう既に愛情ではなくただの憎悪ではないかと思う今日この頃。どうでしょう僕の新説、『ストーカーはストーキングしてる相手が好きじゃない』説。結構いいセン突いてると思うんですけどね。おっと、みんなどうして僕をそんな白い目で見ているのかな?

しかしなあ。

僕は幸いにしてストーカーというものにまるで縁がない日常を送っているわけで、ストーカーしたい程いい女というのも目にしたことがないのですが、そこまで自制の効かなくなる状況っていうのは一体どんなもんなんでしょうか。昔読んだ寄生虫対策の本で「自慰行為などがなんら性欲を抑制する効果を持たず、禁欲が不可能な状況の場合でも、みだりに売春宿に足を運ぶべきではない」という記述を見つけたときの僕の心境、「オナニーですら自制の効かない性欲ってなんだよ。男数人に四肢を押さえつけられて現地の女にのしかかられたりすんのかよ」というアレとまるで一緒。溜まってんならオナニーでもすりゃいいじゃねえか、そっちの方がよっぽど健全だし待ち伏せとか悪戯電話とか労力も必要としないぞ、と心底から思うのですけれども。人間、理解できないものは怖いのだとよく言いますが、この場合、理解できないので心底馬鹿じゃなかろかと思います。

本作『DOOR』に登場するのは、まさにその馬鹿の総大将が如きストーカー男。そしてそれに対抗するのは、これまたちょいと偏差値が若干おとなしめな感じの主婦です。ふとしたことからストーカー男に付きまとわれるようになった主婦、そして次第にエスカレートしていく男の付きまとい行為。何とか男を撃退しようとする主婦の猛攻、そしてそれをはね除け更なる猛追をしかけるストーカー! この戦いの勝者はどっちだ!? とりあえず観客は全体的に敗者寄り!

主婦・靖子は、夫の悟、息子の拓人と三人で、都会の高層マンションに住んでいました。いたずら電話やセールスマンの勧誘に神経質になっていた靖子はある日、ドアチェーンの間から強引にパンフレットを入れようとしてきたセールスマンの指をドアで挟んでしまいます。指を潰され怪我をした男に、しかしすっかり気が動転した靖子は逆に暴言までぶつけてしまい、怒りと狂気に駆り立てられた男は、その後執拗に靖子の周囲に付きまとっては嫌がらせを繰り返すようになり……。

靖子とセールスマンの攻防戦、ここがたとえば今映像化するとしたら次第に神経を磨り減らしていく靖子と、何とか科学やら警察やらの力を駆使してストーカーの所在を突き止めていくというちょいとしたサスペンスものに仕上がりそうなのですが、この映画は違います。ストーカーは積極的であり、靖子はパワフル。旦那が家を留守にすることがわかった途端勝手に家に上がり込むストーカー、あまつさえ息子の拓人とすっかり打ち解けてしまう始末。そこで強いヒロインとしてはミラ・ジョヴォヴィッチすら上回るのではないかというパワフルぶりを見せつける靖子のとった選択肢は、ストーカー男のドタマをビール瓶でおもいっくそかち割るというものでした。おいおい、悪くしたら殺人罪になっちゃうよ。しかしストーカーもまた非常にパワフルであり反撃開始という流れから、一気に物語はヒートアップ。

というかこの『主役二人がやたら偏差値低め+攻撃力高め』という設定は、何だか今でも充分通用しそうな気がします。誰かこういう題材で映画作ってくんないかなあ。

ビール瓶での打撃すらものともしないストーカー、何故かチェーンソーを装備し靖子と拓人の二人を風呂場に追い詰めます。ここで『シャイニング』ばりの緊張感溢れる展開に流れるかと思いきや、そこはさすが日本映像界、外すところを見逃しません。壊れたドアの隙間から手を差し込むストーカー、すかさずフォークで突き刺す靖子! 延々その繰り返しで、ストーカーの偏差値はこの時点で30を切ってます。いい加減「あ、俺今ちょっと手が痛いや」と気付いたストーカーはその場を去り、玄関を開けて家から去っていったように見せかけるのですが……そこで同じく偏差値低め+攻撃力高めの靖子がとった選択は、「真っ先に子供を寝かしつける(警察に連絡一切なし)」という素晴らしいものでした。案の定トイレに隠れていたストーカーに追いかけ回され、あえなく捕まってしまう靖子。どっこいストーカーはここでも脳みその働きの悪さを遺憾なく発揮、「とりあえず口でしろ」という偏差値20を切る素晴らしいご提案。チャップリンじゃねえんだぞ。そんな馬鹿なことをしてるもんだから「そこでもうブチギレですよ」となった靖子、「おまえの血は何色だぁぁぁ!」と言わんばかりにチェーンソーを奪い取り、ストーカーの首をぶった切って元の平穏な生活に戻るのでした。正当防衛とか絶対成立しないと思います。

あれ、結構文章量あるなあ。僕これ好きなのかなあ

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かつて日本を激震させた映像作品、悪名高き『ギニーピッグ』四部作。

しかし果たして、これを紹介せずに「誰も見ないものを見に行こう」などと偉そうに言えるでしょうか!? 言えるともさ! こんなもの見る価値は全くないともさ! しかしだからこそ敢えて言おう、地雷は踏むなと! 後続の皆へと告ぐ、これは地雷も地雷、レンタル代を無間地獄へと吸い込む魔の地雷であると! 諸君らはもっと倫理的にも正しく、そして感動に胸打ち震わせる作品をこそ観賞するべきである! 映像とは何か!? それは、一時の享楽などでは決してない! 心に響き、胸を震わせ、鼓動を踊らせ、後々の人生のよりよき指針となる、それこそが真に正しい映像作品である! しかるに、この『ギニーピッグ』のような公序良俗に反する俗悪な映像作品は根絶されてしかるべきである! 青少年への正しい教育のため、我が国の未来を担う若き少年少女らのために! ていうかこれでビデオ代だまくらかされたボンクラ映画ファンのために!

行くぜ四部作一気切り、まずは色々と有名な第一作目から!

『ギニーピッグ・悪魔の実験』

ものっそブスな、演技をする気のまるでない女を、三人の男がこれまたやる気のない演技で痛めつける(フリをする)駄作。何が駄作って、本当に出演者達のやる気がまるでない。心霊スポットを取り上げられた稲川淳二だってもう少しマシな演技をするよと言いたくなるぐらいにやる気がありません。殴ったフリをしているのはモロバレですし、女はそのまま『ザ・マグロ』とかってタイトルのAVになりそうなぐらいの無反応。たまに何か言っても「いたいぃ~ん」という脳みそ溶解必死の腑抜けボイス。何を思ってこれをシリーズとして撮ったのか、未だに僕には理解できません。きっとお金が余っていたんだね。

『ギニーピッグ2・血肉の華』

痛みを快楽に変える薬を注射された女を、鎧兜プラス白塗りという実生活で見たら鉄板でSANチェック確定のイカレ親父がただひたすら延々と解剖していくお話。ちなみに僕は医学生が見る法医学アトラスとか間違った意味での裏ビデオであるところのリアル事故映像とか見たことあるので、「ちっちぇえなァー!」と余裕の構えで見てました。グロいけど作り物だし、何より失敗してるのは「痛みを快楽に変える薬」という設定。ホラー映画で襲われる人間がマゾってちっとも怖くないでしょ? つまりはそういうことです。これだったら以前に紹介した『ラッキースカイダイアモンド』『ザ・ギニーピッグ~マンホールの中の人魚』の方がずっと残虐描写としても秀逸です。あれはきちんと痛がってしね。

これから何か人を不快にさせるボンクラ映画を撮ろうとしている皆さん。

キーワードは「痛み」ですぜ。間違っても景気よくお腹をおっぴろげされているというのに、ノンキに「クソ、ボケナスども」なんて罵るようなことをしてはいけませんよ(ブルータル・ギャグ)。

『ギニーピッグ3・戦慄! 死なない男』

唐突にギャグ方向へと切り替えた不思議な作品。しかもそのギャグというか何というかがえらいヌルく、不快でもなければ快でもない、実に微妙な位置づけとなっております。ある意味過渡期的な作品で、次作ではこのギャグっぽさが前面に押し出されているんですね。ちなみにこれはどんな話かっていうと、突然三只眼に見込まれたかのように不死身の体と化した男が、「あれ? 俺ってひょっとして死ななくねえ? 死ななくねえ?」とやたらヌルいテンションになるというお話。家に来た後輩に「ほらほら、こんなことしても死なないよ!」と自分の体を破壊していくという、本当にそれだけのお話。考えた人は旅立った方がいいと思います。シャングリラとかに。

『ギニーピッグ4・悪魔の女医さん』

出演はピーター、竹中直人、今村ねずみ、久本雅美、柴田理恵、林家こぶ平、景山民夫……etc。今考えるに恐るべき超豪華キャスト。というかワハハ本舗。今このメンバを集めて映画を撮る方が困難な気がしますがそれはそれ、ボンデージルックのピーターがグロテスクな患者との交流を深めていくハートフル・スプラッタ大作。一見珍しくないように思えて実に珍しい久本雅美のパンチラという素晴らしくゲンナリな映像が拝めます。この後後続シリーズである『ザ・ギニーピッグ』にも出演している辺り、ひょっとしてこの手の方向性が好きなんでしょうか。ンなワケないけど

まあこの四部作に続き三本の作品が発表されて一連のシリーズは終焉を迎えたわけですが、作品をこうして紹介するに、終焉して本当に良かったね。本当ホラー映画ファンとかってキモい! 内臓とか見たくないですわ! あーらお待ちになって蝶々さん、アフタヌーンティーを優雅に楽しみましょう! もう本当、スプラッタとかって見ていられませんわ! オホホ、皆様ごきげんよう!  オホホ! オーホホホ! オーホホホ……(フェードアウト)

……僕の人生、間違ってますか……ッ(唇を切れるほど噛み締め、泥を握り、四肢を地へと突いて、胃の奥から絞り出すような声で)

怪談と言えば淳二、淳二と言えば怪談。

夏と言えば淳二、淳二と言えば夏。

とまれかくまれ、今や日本の納涼には欠かせない存在となった怪談ストーリーテラーにして工業デザイナー・稲川淳二氏が、今一つパッとしない女の子達を連れて様々な心霊スポットを訪れるという体裁の作品。続編も作られるぐらい愉快痛快な出来上がりですが、やはりあらゆるシリーズものと同じように、初期作が一番面白いですね。いわゆる予告編的なダイジェスト映像が冒頭流されるのですが、その時点で見ているこちらのハートを鷲掴みにする見事な構成、見事な淳二の言語センス。「ストッキングも黒!」「女です! 女です! 顔は青い!」「螺旋階段じゃないんだ!」……etc、etc。的確かつ強力に刺激される笑いのツボに、僕は果たして怖がればいいのか笑えばいいのかすらわからない、前後不覚の状態へと陥ってしまいましたよ。危うく過呼吸気味になっちゃいました。

すげえなあ、稲川淳二。この人がいなけりゃ日本の夏は輝きを失いますよね。金造とかえだ豆とか、何か淳二の二番煎じみたいな連中も出てきていますが、はっきり言って本家とは格が違いすぎて相手にもなっていません。この作品を見て、ますます日本の怪談は淳二のものだという確信を深めましたよ。

僕自身はぶっちゃけた話霊とか魂とか信じてないというか、いてもいなくても同じだと思っておりますので、この手の作品を見る場合の評価基準は「僕のような観賞態度で見ていて怖いか、あるいは恐怖ではないにせよ、何か強く感情を揺さぶる要素があるか」というものになります。その点既に冒頭ダイジェスト部分で僕の感情は揺れに揺れておりますので、本編突入前からテンションはヒートアップしっぱなし。間違いなく祟りとかそんなもんはこの世にないと言い切る僕をして、果たして淳二とオマケでついてくるアイドル達がどのような目に遭わされるのか興味津々です。

だいたい祟りとかってマジわけわかんねーですよね。霊なんていうよくわかんないものが人を殺したり不幸にしたりすることはどう考えたって無理っていうか、そう考えた時点で頭のお薬を準備すべきだとすら思います。僕と友人達の三人で茨城の心霊スポットまでわざわざ深夜に出かけ、「このトンネルの入り口で三回パッシングすると……出るんだよ」と聞かされていたので二十回ぐらいパッシングしたんですけど、出たのはゲップぐらいのもんでしたよ。あらよっと、ゲフゥ。

車中でケンタを貪り、「かーめーはーめー、波ー!」とかトンネルの中で叫んでみたり、およそ偏差値の低い中学生が思い付くようなことは一通り試してみたのですが、三人とも元気でピンピンしてますしね。まあでもそこのトンネルの呪いが「いい年した大人の癖して心霊スポットでドラゴンボールごっこに夢中で興じる呪い」とかだったら絶好調で呪われてたと思いますが、この世にまさかそんなIQの十の位が若干おとなしめな霊はいないと思いますので、祟りとかってナイんじゃないの方向性で一つ。一つよろしく。あそこで僕らを祟らねば誰を祟るかぐらいの勢いでしたしね。

だいたいパッシング三回したらライトが突然切れて霊が現れるとかっていう話だったんですけど、それ霊じゃなくてパッシングのせいでヒューズ飛んだんじゃねえの? という説がかなり僕の中では濃厚です。一瞬だけ通電するって一番負担かかりますからね。だいたい霊を呼び出す以外の目的でトンネルの入り口に陣取りパッシングする必要なんかないわけで、最初に試した奴は一体何を考えていたんでしょうか。

怪談を作るときは細部にこそ神が宿るということは、きちんと頭に入れておくべきだと思います。

さて、本編の基本的な流れは至極簡単。日本でも有数の心霊スポットに稲川淳二がアイドルを連れて乗り込み、探索し、そこの過去にまつわる怨念話を語って聞かせ、挙げ句の果てには泊まり込みでの調査を敢行するというもの。旧天城トンネル、九州の廃墟となったラブホテル、秩父湖にかかる吊り橋と、別に幽霊がいようがいまいが関係なく怖いスポットに行くというだけでもかなり無茶なのに、散々淳二が怨念話をあのイイ顔で語って聞かせるもんだから、アイドル達は半泣き状態。霊感少女ぶった真似までし始めて、観客の目は画面に釘付けです。

錯乱するアイドルの肩を抱いたり、手を握ったり、甘めのセクハラも忘れない淳二。超ミニ(果たしてこれは最早死語なのかそうでないのか)にストッキング、あるいは網タイツという心霊スポットどころか何処に行くにも微妙に憚られる格好のアイドル達には、仕事とは言え大変だろうなあという同情の念を禁じ得ません。秩父なんか雪残ってんのに

怖い話をして、その肝心の場所でテントを張って、アイドルだけ残すというとんでもない調査まで実行されたりして、さすがにスタッフはやるべきことがわかってます。たとえ霊とは何の関係もない場所だろうと僕は廃墟となったラブホテルとかでテント張りたくはないと思いますがそれはさておき、心霊ものには付き物である「奇妙なうめき声」や「謎の人魂」、「心霊写真」もばっちり収録されていて、とにかくサービス精神満載。

特に秀逸なのは本編終了後に流れる音声解析の結果。「……ぅ~~~……」というおどろおどろしげなうめき声がトンネルの中で聞かれるのですが、その解析をした学者さんがあっさり「これはトンネルの内部で反響した複数の人の靴やなんかの音ですね」と切り捨ててしまうところなんかは、明らかに笑かそうとしているとしか思えません。心霊写真の方も何か凄く微妙で、とりあえず淳二が語るから怖いという感じがヒシヒシとします。

これはとりあえず必見の作品。ただし、心霊モノに興味のない人、稲川淳二が嫌いな人、あくまでも真面目な心霊モノが好きな人には向いてません。笑いのツボがヘンテコな感じの人向け。いや別にスタッフも笑かそうと思って作ったわけじゃないと思うんですけれども、淳二が「これは全て本当にあったことなんです。演出じゃないんです!」と力説した直後のスタッフロールで堂々と「演出」と流すのはかなりハイレベルのギャグだと思いました。

いや、つくづく稲川淳二という人は凄いです。この人が本当に霊が見えてるのかどうかなんて僕にとっては全然興味がないことで、この人が怖い話をするという、ただそれだけが面白いのですね。