原題は『MICROWAVE MASSACRE』。電子レンジ大虐殺とでもいったところでしょうか。知人に「いい加減普通の新作とかレビューしてください」と甘く叱られたのであえて時流に逆を向いてみようと思います。しかしそれで選ぶタイトルがよりによってこれというのが何とも言えません。リクエストにお応えしているのだという言い訳すら通用しないヘッポコ邦題。しかもその邦題に恥じないヘッポコな内容なので、「こんなタイトルだけど実は面白いんだぜ!」と胸を張ってお勧めすることすらできません。何てこった。一応食人映画の分類には入るのですが、その中では『食人大統領アミン』に次いでの地位の低さを誇る本作、とりあえずまずはいつも通りにあらすじ解説から行ってみましょう。

おまえの記事は前振りが長すぎて映画本体にまるで触れてないじゃねえか」って怒られたし。

建設現場で働くしがない中年作業員・ドナルドは、新しく買った特大電子レンジを活用してはおかしな料理ばかり作る悪妻・メイを苛立たしく思っていました。ある日酔っ払って帰ってきたドナルドはメイと口論になり、誤ってメイを殺してしまいます。電子レンジの中に隠した妻を、間違って焼き上げてしまうドナルド。死体を捨てるわけにもいかずバラバラにして冷蔵庫に保管していた彼は、うっかりメイの手首を食べてしまい、人肉の味に開眼。狂気に取り憑かれ殺人鬼と化したドナルドは、売春婦を連れ込んでは食べることを繰り返し……。

……。

……しかしこうしてあらすじを通して見ると、いかにこのドナルドさんがうっかりな人間であるかがわかります。奥さんを殺すのもうっかり。レンジでチンするのもうっかり。あまつさえチンした奥さんを食べちゃうのもうっかり。更にはその死に様すらうっかりという、まさにキング・オブ・うっかりさん。そのうっかりぶりには、買い物に出かけて財布を忘れたことに気付く日本人主婦に勝るとも劣りません。

一応カルトホラーの地位を得てはいるのですが、そのあまりのくだらなさと中盤以降の売春婦と寝る・喰う・寝る・喰うの連続になるためあっという間にシナリオはグダグダ、微妙なコメディタッチのすべりっぷりと併せてヘッポコの名を欲しいままにする本作。まがりなりにも主人公のくせに、喰う寝る以外に作中何ら能動的な行動をしないことで有名なドナルドさんは何故か「一番」と書かれたエプロンをしていたりするイカした親父です。手首バーベキューとか売春婦ケーキとか、食人メニューに色々なバリエーションがあるのも本作の特徴。まあ別にそんな特徴があろうとなかろうと本作がどうしようもなくヘッポコでありつまらない作品であることに変わりはないんですけどね。

しっかし本当、語るところねえなあ

毎度のように思うのですけど、別に僕はスプラッタ映画マニアではないのですよね。ビデオ屋の棚を端から借りて見ていたら、いつの間にかそういう方向の作品まで楽しめるようになっていたというだけのことで(人から教わったというのもありますが)。だからこそ僕は「スプラッタ映画なんてただのゲテモノでしょ」というスタンスを崩したくないと常々思っています。だってどう考えたってオカシイぜ、人間がブワッと内臓と血糊をぶちまけて死ぬような映画ばっかり楽しんで見るのって。「こんなグロい映画見ちゃってるぜ、ゲヘヘ」みたいなノリでそういうビデオばかり見るというのは正直、まあこういう言い方するのも何ですけど、退くなあ。「どうせこんな映画俺ぐらいしか見てないんだろうなあ」は逆に好感持てるんですよ、それは僕が心がけているスタンスですから。

基本的に僕は「人の見てる映画に話を合わせて生きていたい」が目標なんですけど、こういうスタンスで映画系ブログをやっていてもいいものでしょうか。いいですよね。いいんだーい! バンザーイ! ことなかれ主義ばんざーい!