香住沖で戦い撃沈した第13号海防艦。
中之薗航海長の著書から戦闘の様子を抜粋させていただくでござる。
(海のパイロット物語より)
わが第13号海防艦が昭和20年8月14日、境港から兵庫県の日本海沿岸を舞鶴に向けて東航中、昼食をとっていた私は、突然の「配置につけ」のブザーで、艦橋にすっ飛んだ。
その時、見張り員が「右10度、浮流機雷らしきもの多数」、引き続き「先の浮流機雷は誤り、人間の頭らしい」と叫んだ。
僚艦・第47号海防艦が前を走っているはず、もしや…電信で確かめたところ応答無し、やられたらしい。
ただちに厳戒態勢をとり、艦長は「爆雷戦用意!」を下命。
緊張でシーンと静まりかえった、見張り員の絶叫「雷跡左40度!」、艦長「取り舵一杯!」白い雷跡が艦側をかすめていく。
5分もしないうちに「雷跡右30度」、「面舵一杯!」。
これもかわしたが、3回目はどちらから来たのか分からないまま艦尾に命中した。
爆雷戦の用意はまだかと艦尾を見ていた私の眼に閃光が走り、大火焔と轟音がおこった。
その瞬間、「爆雷戦用意よし!」と右手を挙げた掌機雷長と爆雷員の姿が消えた。
爆雷員は吹き飛んだのにどこから出てきたのか、燃えさかる後甲板で爆雷が誘爆するのを食い止めようと必死になって海に放り込んでいる者がいる。
さすが連日連夜の護衛戦やレイテ湾海戦を生き残った我が13号海防艦の百戦錬磨の乗組員である。
*解説
当時のソナー性能では敵潜水艦及び魚雷を感知しにくく目視に頼っていたでござる。
対潜水艦戦闘になると爆雷員は甲板後部の爆雷投射機(12機)で爆雷が起爆する水深を手動で設定する為、爆雷の近くで待機する。
艦後部に魚雷が命中し、何発か格納庫の爆雷が誘爆したようだが、さらなる誘爆を避ける為、炎上している中で爆雷を艦外に投棄した。
残念ながら爆雷員はほぼ戦死されましたが、決死の作業で第13号海防艦の沈没を遅らせる事ができ、多くの戦友を救ったのでござる。
ご冥福をお祈り申し上げます。