iPS細胞でがん治療 和歌山県立医大や理研が成果 | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

iPS細胞でがん治療 和歌山県立医大や理研が成果

iPS細胞を使ってがんの新しい治療法を開発する研究で、成果が出始めた。第4のがん治療法として期待される「免疫療法」で、和歌山県立医科大学が免疫力を上げる「がんワクチン」用の樹状細胞を大量に作る技術を開発。理化学研究所は、がん細胞を攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」を活性化させることに成功した。実用化には時間がかかるが、再生医療や創薬に次ぐiPS細胞の活用法として注目されそうだ。
和歌山県立医科大学の山上裕機教授と尾島敏康助教、岩本博光医師らは、樹状細胞をマウスのiPS細胞をもとに大量に作ることに成功した。
がん細胞をつかまえて特徴を覚え込むことができる樹状細胞は、免疫細胞にがん細胞だけを攻撃するように指示する。樹状細胞をもとにがんワクチンを作るが、治療効果が期待できるほどの大量の樹状細胞を確保するのは難しい。
研究チームは、iPS細胞から作製した樹状細胞が、悪性黒色腫(メラノーマ)というがん細胞を攻撃する機能があることをマウスの実験で確認した。2014年からヒトのiPS細胞を使った実験を開始し、同じ結果が得られるかどうかを確認する。
理化学研究所はキラーT細胞を皮膚がんの患者から採取し、iPS細胞を作製した。このiPS細胞を大量に増やしてキラーT細胞にしたところ、病気で働きが落ちていたキラーT細胞が若返り、がん細胞を活発に攻撃する能力を取り戻していることを確認した。
がんになると、T細胞の多くは無力化され、免疫反応が弱まる。少数のT細胞を活性化させる従来の免疫療法と比べ、無限に増殖するiPS細胞を使えば、寿命が長い免疫細胞を大量に作れる。
理研は5年以内にiPS細胞から作ったキラーT細胞の安全性や有効性をサルを使い調べる。
抗がん剤の治療効果をiPS細胞を活用して検証する研究成果もある。
東京大学の辻浩一郎元准教授と海老原康博助教、山本将平医師らは免疫細胞「マクロファージ」が異常に増える珍しい白血病の患者からiPS細胞を作製した。このタイプの白血病は治療薬の効果が明確ではない。培養して病気の状態にある細胞を作ったところ、予想通りにマクロファージが異常に増えており細胞レベルで病気を再現できた。
今後、iPS細胞を使い効果のある治療薬を探るほか、病気の発症メカニズムの解明にも取り組む。
(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO56052720R10C13A6TJM000/




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