先日読了しました

$梟の耳。黒猫の瞳。海馬のツブヤキ。

『深泥丘奇談』
綾辻行人
MF文庫

「怖」と言うよりは
「奇」の印象の方が強く

例えるならば
テレビドラマ
『世にも奇妙な物語』
のような感じ

舞台は京都から連なる異界
深泥丘

少しずつ趣の違う
9話が収録されています

どこか違和感がある場所なのに
妙に和むというか
落ち着くのはなぜだろう

心のどこかで
そういう場所を
求めているからなのか

オチがなかったり
謎が謎のまま明らかにならなかったり

ストーリーの起承転結を
求めてはいけないお話

悪夢のような
曖昧模糊とした
その雰囲気を楽しむ作品です

個人的に印象に残っているお話は
『丘の向こう』と『長引く雨』

『丘の向こう』は
最後の強烈なシーンが
脳裏で鮮烈に展開し

恐ろしい状況であるというのに
と言うか、異様過ぎるが故に
それを通り越して
なぜだか陶然…

『長引く雨』は
昔、本当にあったんじゃないか
と思えるような事象で

こちらも

主人公である私が
巨鳥と同化し
夜闇に溶けこんだ異形の翼を
はばたかせ
甲高い声をあげながら
「なにか」を運んでいく…

その一連のシーンが
とてもリアルに感じられ
小さな戦慄とともに
どこか目眩のような
酔い心地が漂ってくる…

いけないいけない

あまり深入りすると
帰ってこられなくなるかも
しれません

こちらは第一集で
どうやら第二集もあるもよう

また朦朧とした境を超えて
酩酊したくなった
そのときに
手を伸ばすことにしよう

なぜだかここのところ
綾辻祭のような状況に
なっていましたが

これで
手もとにある
読まれる順番待ちの本
(常時30冊以上が並んでいる…)
の中に綾辻本はなくなったので

ひとまずこれにて
綾辻祭は終了

そう言えば、私
氏の本流であるところの
本格ミステリ「館」シリーズは
ひとつも読んでないな…







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