「女王の教室」が最終回を迎えてしまいました。

その乱暴な手法に問題はあるものの、本質的には子供たちの真の自立を促そうとする確固たる信念を持った「熱血教師」だったわけですね。はっきりしたのは、「再教育センターに送られた理由」が明らかになった回です。あとはどういう風に終わらせるのかなと観ていました。

当初、「過激だ」ということで放送中止を訴える声が上がったり、HPにアクセスが殺到したりと、何かと話題にもなりました。僕が思ったのは、「あくまでもフィクション」なんだから、途中でごちゃごちゃ言うのはよそうよ、というものでした。で、僕は第1回と2回あたりの段階では、「これはどんな話にもできそう」と考えました。

例えば、マヤの正体は地下組織のエージェントで、小学校教師はかくれみの。子供たちを洗脳して地下組織に送り込み、将来の国家転覆の為に働く精鋭部隊の一員に育てるのが本当の目的。マヤのバックには当然ながら黒幕(丹波哲郎あたりがいいな)がいて、そいつが「新しい日本国」を作るべく、別のマヤを日本各地の公立校に送り込んでいるという話。

例えば、マヤは実はサイボーグ。文部省が秘密裡に作った裏組織が理系の優秀な科学者を引き抜いてスパルタ教師型サイボーグを作らせていた。子供たちがどういう反応を示し、従うのか抗うのか、今後の日本の将来を占う上での大いなる実験を密かに行なっていた。

このシミュレーションは3ヶ月ごとに行なわれ、プログラムを入れ替える事で、マヤは昨日とはうってかわって心優しい教師に突然・・・演じる方も大変だ。

・・・なんて、地下とか裏とか、考えたらわくわくしません?


え~と。

「いいかげん目覚めなさい」という言葉に象徴させているように、「現実から目をそらさず」「今できることをしっかり見て」「やるべき事をやる」

「イメージできる?」

できなければ、「それができる自分に早くなれ」と言っている。

わからなければ、「他人の言葉に惑わされることなく」「自分をみつめなさい」と言っている。

あら?ちょっとこれは恣意的かな?

責任の所在。ルールの遵守。対価としての罰。集団内における個。強者と弱者。対人関係における信頼と裏切りの心理。その他さまざまな問題をこれでもかと提起してくれましたね。非常に有意な作品でした。


最終回に卒業式を持ってきて「仰げば尊し」を歌わせたのは、「この作品は大人にこそアピールしているのです」というメッセージだと感じました。セリフにもありましたが、最近は卒業式であまり歌われないそうですね?僕は歌った世代で、歌詞に重みのある、卒業に相応しいものだと思います。

一例をあげるなら、「蛍のともしび積むしらゆき」の部分。蛍の発する光や白い雪明りを利用して刻苦勉励に励む姿ですよね?そんなものでは勉強しようにも現実として文字は見えないわけですが、それほどまでに懸命に取り組む姿を言っています。「蛍雪の功」を言っています。わき目もふらず勉強に打ち込んだあの日々。必ずしも勉強でないにしろ、学び舎で過ごした時代には純粋に何かに取り組んだ時期が誰にだってあるはず。そんな時代を思い起こさせてくれますね。

現代の教育現場には、似つかわしくないものが大変に多いように感じます。携帯電話、携帯ゲーム、身だしなみを含めたファッション、ブランド小物、などなど。これは社会全体の問題でもあります。もちろん、その周辺にも問題はあるでしょう。給食に異物が混入するとか、殺人者の侵入を許してしまうとか、教師そのものの資質もそうです。いじめもありますね。

この作品を観た人が、子供たちはもちろん、保護者を含めた大人たちが、それぞれの立場で自分自身に立ち返って、「なすべきことは何か」を考えたら、少しはこの社会にいくばくかの影響をもたらすのではないかと思います。


そういえば、和美ちゃんの姉役の夏帆ちゃんが光ってましたね!などと思い出したように言う。雑誌にありましたが、天海祐希は子役たちに刺激されて、かなり気合いが入ってたそうで、休憩や空き時間も子役たちと意識的に接触を避けて、完璧な「女王」に徹したようです。それから、撮影期間がどれくらいか知りませんが、子役たちはみな成長したなと感じました。和美も、ひかるも、馬場ちゃんもゆうすけも、ぽわんとしてたのが軒並みきりっとした顔つきに変わりました。まあ、女の子は一歩女性に、男の子は一歩青年に近づいたというところでしょうか。マヤは「女王としてのマヤ」を通したわけですが、子供たちは演じる中でマヤの真意を彼らなりに汲み取って「小泉チルドレン」ならぬ「マヤチルドレン」になったんではないかと。最終回での子供たちの涙はそういう涙だと感じました。


マヤはいったいいつ笑顔を見せるんだぁ!とずぅ~っと思っていましたが、脚本家は最後の最後で、和美とすれ違わせました。そして、そこでも和美にさえ笑顔を見せず、視聴者にだけとっておきのサービスカットを見せてくれました。ま、子供たちの胸の中ではマヤはにっこりと微笑んでいるでしょうけどね。


本日のおやつ


ロッテ 爽