このドナーに関して小松美彦氏は、さらに救命医療が不充分であった疑いについて書いています。


①まずCT撮影がなされた

→初期治療が不適切であったという疑い。CT撮影の前に一刻も早く施すべき呼吸の確保や昇圧剤の投与は行なわれていない。


②血種を取り除く開頭手術が行なわれなかった

→この症例はグレード5(症状の程度を示し、数字が上がるほど重篤)であったとし、手術は不適応、つまりやっても意味がないとの判断がなされた。しかしながら、この症例について全国353箇所の臓器提供指定病院に日本テレビがアンケートを行なっており、その結果50%の医師が手術で改善の見込みありと解答している。また、前出の初期治療についての不適切を指摘した医師(日本救急医学会認定医である近藤孝氏)によれば、この症例のグレードは4でしかなく、当然手術を行なうべきであるとしている。グレード4におけるアンケートの結果は、手術適応70%。


③脳低温療法も行なわれなかった

→脳低温療法は、脳死判定の前段階で施すべき医療として「臓器移植法」の附帯決議に特記されている。簡単に言うと、脳は障害を受けると温度が上昇して膨れ上がり、それに伴って脳細胞の活動が却ってダメージを広げていってしまう。ここでいったん脳温を下げる事でその進行を食い止める効果が期待できるというもの。行なわなかった理由については、「脳低温療法は脳挫傷に対して有効であって、この症例はくも膜下出血なので適応ではない」と答えている。確かに脳挫傷に対する場合に、より効果が認められるのは間違いがない。しかしながら、この治療法の開発者(日本大学医学部教授、林成之氏)が平成9年6月に発表した論文によれば、「グレード4~5のくも膜下出血患者10人に対して脳低温療法を試みたところ、7人(70%)を救命し、そのうち良好な回復3人、中程度の後遺症2人、(重い後遺症1人、植物状態1人)という成果を上げた」とある。高知赤十字病院では、それ以前に20例の脳低温療法の実績があり、実施するのに支障はなかったはずです。ところが、手術と脳低温療法を実施しうる二人の脳外科医はその日、宿直の救急医に任せてなんと!帰宅・・・しているのです。


やってはいけない事をやり、脳死にさせようとしたとも、脳死の判定欲しさにした、ともとれる、極めて怪しい脳死判定。心臓の提供意志なんて初めからなかったかもしれない(それがあったという確証がない)未公表のドナーカード。生死に関わる、ある意味最も重要であったのになされなかった初期治療。10人のうち5~7人の医師が行なうべきと答えた手術は行なわれず、普通であれば24時間状態を注視すべき脳外科医は揃って帰宅。


みなさんどう思われますか?


次回は、これほどまでに杜撰な脳死判定や数々の不備があったにも拘わらず、いったい何故問題にされないのか?について話します。