独りで観に行きたい舞台
普通は、気の合う人と一緒のほうがいいのです。幕間や帰り道であれこれ感想を言い合えば、観劇も一粒で二度、三度と楽しいですもんね。
でも例外の作品が一つあります。「LOVE LETTERS 」です。
これは、男女の役者さんがカップルになって戯曲を朗読するだけの舞台です。動いたり歌ったりしません。内容は、アンディとメリッサという幼ななじみの二人が、大人になってもずっとやりとりしていたたくさんの手紙を読み上げるというもの。 ……う、こう書いてる今も目の奥が熱くなってくる。
これまでに、いろんな役者さんが演じています。私は去年、戸井勝海さんと横山智佐さんの組み合わせで観ました。2幕の途中から、涙がぼろぼろ止まりません。後ろのほうだったし、独りだったし、もういいやと思って遠慮なく泣きながら話に浸らせていただきました。戸井さんも終わったあと、本を持ったまま涙ぬぐってました。
誰かと一緒だったら、きっと恥ずかしくて、物語に没頭できなかったと思います。ほどほどに泣いて、ほどほどの感想しか持たなかったでしょう。知らない人ばかりの空間で観たからこそ、忘れられない体験になりました。
この作品の良さは疑う余地がないのですが、あんまりにも心の深いところを突かれたので、この後、また観る気力がなかなかわいてきませんでした。
でも今度の8月公演のキャスト、ちょっと興味があるな…。夏の夜、また涙の海にざぶざぶ浸ってくることになりそうです。