「ふと」、デスノート(漫画版)の事について考えてしまうことがある。
特に理由は無いですけど。


アレは実に面白い漫画だったですね。
友人が「面白いでー」と言うので、本屋さんにあったお試し版(確か2話まで自由に読めた気がする)を読んで、こいつは途轍もなく面白いぜと思い、その時点で発行されてた全巻を買ったものです。たった2話でグイグイ引き込まれた作品を他に知らないワタシです。


色々とデスノートの矛盾というか、ミスを探してる人々もいるらしいですが、今のところ明らかなミスは

ポテチの袋に液晶テレビ

のシーンだけみたいですね。まぁ、アレはどうしようもなくミスですね(笑)どうやっても画面見えないし、見ようとしたら監視中のLに速効でばれる。
実はアレを最初に読んだとき、「よくテレビ画面見られるなぁ」とライト君の天才っぷりに感心していたアフォなワタシがいます。


(ここでの「矛盾」とは、漫画的表現として許容されるものや作画ミスは含まず、あくまで作品の売りであるトリック・推理・心理戦に関わる部分を範囲にします。都下の事件を捜査するのは警察庁じゃなくて警視庁だろ!という類のミスにツッコミを入れると漫画、引いてはフィクションは楽しくなくなるし、そういうのは無粋だと思う。

それと、登場人物の発言は極力信用する。リュークが「カメラはコレで全部と言ったら、それで全部。カメラは全部取り外されたと言ったら、一つも残ってない。これはミステリにおける"フェアな出題"という決まりごとなので)



そんなワタシが「ふと」最近になって、「これはかなり無理があったんじゃないか?」というシーンがありまして。
ずばり、Lがレムに殺されるシーンです。


あの時、レムに与えられた選択肢は

1.ライトを殺す
 ミサへの追求が早まるだけで、結果としてミサは助からずに抹殺されるので意味が無い → 断念

2.Lを殺す 
 ミサの寿命を延ばすことに繋がるため、レムは死ぬが、ミサの安全は確保される。

この2つだった。

「屍になるのは ミサか 私か」とレムは考えた。結果、自身の死と引き換えにLを葬り、ミサの安全を守ることにした。


ってのが原作の流れですね。



まー、勢いに流されながら読んでる時は、気にしてなかったのですけど、コレってかなり危うかったと思う。というか、ライトにしちゃ思考が雑だ。


ここで"レムの主観は別にして"、ライトの立場からは第3の選択肢が当然に出てこなければならない。



3.レムはミサを諦める


これを選んだ場合、ミサはいずれ捕まる。コレはほぼ確実。
ミサが捕まればライトもヤバイ、というのはレム自身も考えに至っている。

ここでライトは「レムは絶対にミサを助ける」と断定している。もしかしたら・・・?などとはまるで考えてない様子。これは後述の自宅での件と照らしても、かなり強引である。

何故、レムが自身の命と引き換えにしてまで、ミサを守ると断じる事ができたのか?
ここに筋の通った説明は無い。「死神のくせにミサに入れ込んでるのは分かってる」と、それだけである。

命を差し出す程の自己犠牲を「100%確実にそうする」と断定できる事は、人間社会でさえほぼ無い。まして、生態も何も分からない死神を相手に断定できるというのは、これは強引というか無謀と言っていい。


ライトの自宅でミサと会った時に、レムはミサを守る為にノートを使ったら自身が死んでしまうことに対して「それでも構わない」とライトに宣言している。

が、これはライト自身も「この死神 本気か?」と確信を持てずにいたし、脅しの可能性も相当に高いと踏んだはずだ。この"ライトが確信を持っていない描写"がありながら、そこを未解決のままで"断定に至った"のが問題。



正確に言うと、コレは矛盾でもミスでも無いのだけどね。悪く言えばご都合主義というやつで、好意的に見るなら、「それくらい良いじゃん」という程度のものである。


ただ、数多の人間がデスノートの隙を探しては撃沈していったのと同様に厳しい目で見るなら、ここは根拠に乏しく、強引であったと言わざるを得ないというだけの話。


「精巧極まりないトリックは、極めて簡単な心理的側面から否定される」というのが当たっていると思う。すなわち、「何はともあれ、自分の命は大事だよ」


しかし、ライトはこの危ない橋を無事に渡りきり、Lに勝利した。
運も実力のうちだから、やっぱりライトは凄いし、デスノートの面白さが損なわれる事も無いと思う。