『南泉普願』
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【第30則 《趙州大蘿蔔》】
【本則】
僧が趙州に質問した。
「お聞きしたところでは、和尚は南泉に直接お目にかかったことがあるそうですが、本当ですか?」。
趙州が言った。
「鎮州では大きな大根が採れるぞ」。
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【頌】
鎮州出大蘿蔔、
天下衲僧取則。
只知自古自今、
争辯鵠白烏黒。
賊、賊、
衲僧鼻孔曾拈得。
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頌って云う、
鎮州では大きな大根が採れる。
天下の禅僧どもは、それをお手本にする。
昔も今も同じというだけで、
この先も、どうして鵠(こく)が白く、烏が黒いと言えるのだろうか?
賊だ、賊だ。
禅僧どもの鼻をつまみ上げてやったぞ。
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【公案の解答例】
人と一対一で会っているときに、他人の話を持ち出すのは筋違いで、全く関係のない場所の話をするのも場違い。
たしかに、趙州は南泉から禅を学んだが、現在、禅風は南泉の手を離れ、趙州自身のものとなっている。
俺はあの人を知っているとか、俺はあそこに住んでいたとか言うのは、今の自分や居場所に満足していない証拠。