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晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)  著:大崎梢


105円読書-晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> 晩夏に捧ぐ
成風堂書店事件メモ(出張編)


大崎梢:著
東京創元社 ISBN:4-488-01730-4
2006年9月発行 定価1,575円(税込)








前回に続きミステリ・フロンティア配本の一冊(けっこう、積読本の中にあるんだよね)…デビュー作で、書店を舞台にしたミステリ短編集「配達あかずきん」がなかなか面白かった大崎梢の、同じく成風堂シリーズの2作目。今度は長編になったので期待していた。2009年11月に文庫化もされています。

成風堂書店の店員・杏子のもとに、かつての同僚・美保から手紙が届いた。その手紙によると、美保が現在務めている長野の老舗書店内で、幽霊騒動が起きており、それがどうやら27年前に地元で起きた作家殺しの事件に関わっているというのだ。そこで、杏子の後輩アルバイト店員で、いくつもの書店がらみの事件を解決してきた多絵と二人で、事件の謎を解きに来てほしいと依頼を受けるのだが…。

あれ、あんなに書籍愛、読書愛、なにより書店愛に満ちて面白かった「配達あかずきん」の続編なのに、なんだか普通のトラベルミステリーになってしまった。こなれた文章なので、前作同様、読み易さの部分では決して悪くないんだけれども…ミステリーとしては凡庸ですね。丁寧すぎるというか、馬鹿正直というか…幽霊の正体とかも、途中のヒントですぐに悟れちゃうし。物語の中身は、文芸社とかで出してる素人自費出版ものと同レベルになり下がった(笑)

27年前の作家殺しの事件の謎を解くということなんだけれども…変に中身を作りこみすぎちゃったのが敗因かな?このキャラを使うのなら、無理に殺人事件を題材にしないでも、重箱の隅をつつくような日常ミステリで充分面白いと思う。殺人事件など絡めずに、幽霊騒動だけで何かほのぼのとしたオチをつけてもいいくらいだ。

前作では、実在の作品名や著者名といった固有名詞が、たくさん出てきて…それらが上手にミステリーと絡み合い、読書好きのツボをくすぐるいい按排になっていたんだけれども、今回はそういうものも期待していると全然だめ…。本格的に商業作家になった事で、いろいろとためらいの部分があるんじゃないですかね?そんな件も影響し、前作ではリアリティのあった本屋のイメージが、単に著者の妄想になってしまった感じだ。



文庫版 晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)
東京創元社 2009年11月発行 定価672円(税込)






個人的採点:55点






ヘビイチゴ・サナトリウム 著:ほしおさなえ


105円読書-ヘビイチゴ・サナトリウム ヘビイチゴ・サナトリウム

ほしおさなえ:著
東京創元社 ISBN:4-488-01701-0
2003年12月発行 定価1575円(税込) 









ミステリ・フロンティア配本の一冊、だいぶ前に同じミステリ・フロンティアから出ていた「天の前庭」を読んだ、ほしおさなえのこちらがミステリ・デビュー作だそうで、既に文庫化もされている。個人的にミステリ・フロンティアの装丁が好きなので、これからもこのレーベルは文庫じゃなくて、なるべくこちらで集めたいなぁ~。

中高一貫の女子高の屋上から、高三の江崎ハルナが墜死…実は以前にも校内で生徒の飛び降り自殺が起きていたのだ。ハルナの死後、校内で度々目撃される幽霊の噂…中等部三年の西山海生と新木双葉は、死んだ生徒が二人とも自分が所属する美術部の先輩であったことから事件に興味を持ち調べ始めたのだが…その矢先に、ハルナと交際が噂されていた国語教師がまたも墜死する!その国語教師が執筆中だった小説に事件の謎を解く鍵があるらしいのだが…。

女子高が舞台というので、ラノベっぽい軽い読み物なのかなぁと思いきや、わりと文学っぽいノリの作品。作品内にも登場するポール・オースターを意識したかのような、作中作の構成が取り入れられており、入れ子的な物語はしばし頭が混乱する。この作中作が、事件の真相を解く鍵にもなり、この著者こそが事件の真犯人ではないかということになっていくんだけれども…。

二転三転し、最終的には事件の黒幕みたいなのも判明するんだけど、結末に至るまでが複雑で実にややこしい…本文と作中作と似たような文章が出てきて、今まで読んでた物語も、もしかして作中人物の手による創作だったのだろうかなんて、奇妙な錯覚にも陥り、わけわからなくなる。きっと、そういうところがこの作品を楽しむ要素なんだろうけど、好みは分かれるだろうね。

あとは案の定百合っぽい要素なんかも入ってて、そういう世界って男にはわかりづらい部分も。思春期の女の子が、そういうものに傾倒していくような様子は、よく描かれているとは思いますけどね…簡単に言うとストーカーなんで怖いなぁと(笑)



文庫版 ヘビイチゴ・サナトリウム
東京創元社 2007年6月発行 定価861円(税込)






個人的採点:65点






ソウルケイジ 著:誉田哲也


105円読書-ソウルケイジ (光文社文庫) ソウルケイジ

誉田哲也:著
光文社 ISBN:978-4-334-74668-1
2009年10月発行 定価720円(税込)









誉田哲也の警察ミステリー、姫川令子シリーズ2作目を文庫でGET、1作目の「ストロベリーナイト」と、3作目の短編集「シンメトリー」は過去にハードカバーで読了済。シリーズものだけど、順番は関係なく読めると、巻末解説でも太鼓判を押していたっけ。

多摩川土手で発見された放置車両から、血まみれの左手が!近所の工務店のガレージが血の海になっており、手首の持ち主はこの工務店の主人であるとみられていたのだが、肝心の遺体が発見されなかった。死体のないまま殺人事件として捜査本部が立ち、捜査一課殺人犯捜査第十係、姫川令子率いる姫川班のメンバーも捜査に加わるのだが…。

事件的には「ストロベリーナイト」よりは地味目だが、短編集だった「シンメトリー」よりはそれなりに読み応えがあり。姫川ほか、警察関係者がコツコツと捜査を展開する視点(現在)と、事件関係者たちの視点(過去)が入り組んで語られていく構成なんかは「ストロベリーナイト」と似ているか?

真犯人も含め、作品のキモである事件の真相はかなり早い段階で見抜けるんだけれども…まさか犯人がアソコにというのは、意外と灯台下暗し、やられた感がありました。犯人が被害者を解体する描写と…その直後の描写が、読んでてなかなか痛かったね(笑)

本格推理っぽいトリックとかをさりげなく使ってるんだけど、そこはあまり見せどころ、読ませどころにはなっておらず…やっぱりキャラで読ませるのがメインなのかな?姫川を中心に、部下の菊田との恋人未満な微妙な距離感や、ライバル的存在だった日下警部補との一方的な確執とか、そのあたり楽しく読めますよね。






個人的採点:65点






罪深き海辺 著:大沢在昌


105円読書-罪深き海辺 罪深き海辺

著:大沢在昌
毎日新聞社 ISBN:978-4-620-10741-7
2009年7月発行 定価1785円









昨年買い逃していた大沢在昌のハードカバー「罪深き海辺」をBOOKOFFで見つけてGET!とある田舎の港町を舞台に、フラっと現れた風来坊の男が、実は今は亡き大地主の遺産相続人である事が判明し、騒動になるという話。

さびれた港町・山岬にふらりと現れた若い男。干場と名乗るその男は、かつて“殿様”と呼ばれた町一番の大富豪の血縁者であり、遺産相続人であるらしい…。しかしその遺産は故人の遺言により全て市に寄贈されていた!亡き母親の親族を探しに来ただけだという干場だが、彼の出現で…関係者たちが俄かに騒ぎだす。引退間近の地元のショカツ刑事・安河内は“殿様”の死にも疑問を持っており、騒動に便乗して真実が明るみになるのではと考える…。

前半、ぬる~い感じなんだけれども、一人の刑事の死をきっかけに、徐々に話はきな臭くなり、ヤクザや権力者が絡んだ大スキャンダルへと事件は発展していく。事故や自殺に見せかけた殺人事件がどんどん起き、その一方でヤクザ同士が一触即発な関係へ。“殿様”の死の真相の他、過去の事件も調べなきゃならないし…誰がいったい黒幕なのやらという犯人探しも気になるところ…。

関係者は限られてるし、動機も絞れてるんだけど、最後のピースがなかなか埋まらない感じ。それに加え肝心な主人公でさえ、どこか如何わしいときている。「用心棒」のように、関係者の間をいったりきたりする主人公、どこか掴みどころのないキャラなんだけれども…本当に“殿様”の血縁者なのかどうかという引っ張りが最後まで続き、意外なオチへと繋がっていく。過去に読んだ「撃つ薔薇」並に、最後の最後で驚かされた大沢作品であった。

やっさんこと老刑事の安河内や…干場を気に入り、なんとかビジネスパートナーに取り込もうとする、ヤクザものらしい柳さんなど、脇役キャラクターが魅力的で、特にやっさんなんかは主人公の干場の代わりに…けっこ物語を引っ張っていく存在になる。地元のヤンキー小僧に慕われちゃったリ、スナックのママさんと主人公の微妙な距離感なんかも適度なスパイスとなり最後まで飽きないで読めた。さすが在昌センセ…和製ハードボイルドの真骨頂って感じで面白かったです。






個人的採点:80点






心霊探偵八雲 1 赤い瞳は知っている  著:神永学


105円読書-心霊探偵八雲 1 赤い瞳は知っている 心霊探偵八雲 1 赤い瞳は知っている

神永学:著
角川書店 ISBN:978-4-04-388701-9
2008年3月発行 定価580円(税込)










巷じゃけっこう人気があるそうで、NHKでTVアニメ化されることも決まった「心霊探偵八雲」…角川文庫版の1~5巻を一気に100円コーナーで入手したので、読んで見たんだけど…。もともとは文芸社で自費出版したものを、角川でお色直しして大ブレイクしたらしい。

長編なのかと思ったら…連作形式の3本、プラス文庫用に書き下ろしたショートストーリーが1本オマケでついた構成。正直、これで本当に人気があるの?と疑いたくなるレベル…話はありがちだし、単にキャラクターで物語が動いてるだけって感じのお子様な作品。逆にここまで解りやすくないと、今は小説って売れないのって感じですよね。

中身が薄いので、テンポよくサクサク読めるんだけど…話に魅力を感じないので、集中力が持続せず、一日一話読むのが精いっぱいだった(笑)最初は文芸社で出したっていうあたりが、なんだか山田悠介と同じ匂いがするが、まぁ、アレよりはもうちょっとまともだったかな?手直ししたといっても、これがデビュー作でしょ?2巻以降で巻き返しは期待したいが(なんかシリーズを意識した伏線もあったし)、続けて読もうとは思わない。

「読みやすい」って誉め方をする人がいるんだけれども、それじゃ活字、小説の意味ないんじゃね?読書嫌いの人が、文庫本一冊読んじゃったよと、そういう満足感を得るにはちょうどいいのかもしれないけどな…。幽霊を見ちゃう主人公が、幽霊からヒントをもらって事件を解決していくという設定は否定しないけど、そういう大きな嘘を描く以上、事件そのものや、展開にはもう少しリアリティを持たせて欲しい。

発表時期をみるとたぶん、あっちがパクリなんだと思うけど、三津田信三の「死相学探偵」と酷似したキャラと作風。ただ文章力は三津田信三の方が上だし、ホラーな怖さや、本格推理的な雰囲気が味わえる分、全然「死相学探偵」の方が面白いと思うんだけさ…それってやっぱりあっちを先に読んじゃったからなのかな?今後のことを考えると、各エピソード都度の感想を書いた方がいいのかもしれないけど、とりあえず今回は書く気にもなれないなぁ。






個人的採点:40点







邂逅 警視庁失踪課・高城賢吾 著:堂場瞬一


105円読書-邂逅 警視庁失踪課・高城賢吾 邂逅 警視庁失踪課・高城賢吾

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-205188-1
2009年8月発行 定価900円(税込)









堂場瞬一の警視庁失踪課シリーズの3作目…一応、今現在はこれがシリーズの最新刊ということみたい。今回も文庫書き下ろし…3作全部、100円コーナーで見つけられてラッキーだったなぁ。これなんかまだ新刊で出てから半年くらいしか経ってないのに…。

港学園大理事長が失踪し、母親が失踪課を訪れ捜査依頼を。高城と明神はさっそく捜査を開始するのだが、その途端、母親は捜査の依頼の撤回を申し出る。事件性を感じた二人は大学関係者に当たるが、こちらも非協力的。一方、法月は持病を抱えながら、別件の女性大学職員の自殺事件を追いかけていたのだが…。

学校法人を運営していくのは色々と大変なんだよ…学校内って世間一般の常識はあまり通用しないしねって感じのお話が事件に関わってくる感じです。他の部署が横やりを入れてきたりするので、どんな大事件に発展するのやらと思っていたんだけど、引っ張ったわりに、大した事がないオチだったかな?あと、堂場作品は、関係者と意外なところで偶然バッタリと会っちゃうというパターン多いけど、酒好きの大学教授と、あんなところで会っちゃうのはさすがに都合がよすぎないか?

高城の捜査のパートナーは1作目でコンビを組んだ明神メインだったけど、法月のおやっさんが、サブキャラの中では一番クローズアップされていた。なぜ、法月は無理をして仕事を続けるのかということなんだけど…こちらも引っ張ったわりに、最後に明かされる真相は大した事がない。なんか、この物語やシリーズ全体に影響するような秘密でもあるのかとおもったが…。まぁ、一応、1作ずつで各サブキャラクターを掘り下げていこうってことなんだろう。

つっけんどんな女刑事だった明神は、だいぶ高城との関係が確立されてきた感じだね…シリーズものらしい、キャラクターの変化なんかは楽しめたけど、事件自体はちょっと面白みや意外性に欠けたところがある。このシリーズ…ファンの間ではやはり鳴沢シリーズよりは不評らしい。個人的には高城の抱えてる過去のトラウマなんかを前面に出した物語を読んでみたいと思ってるので、中途半端に終わってほしくないんだけど…続きは出るのかちょい心配。






個人的採点:65点






相剋 警視庁失踪課・高城賢吾 著:堂場瞬一


105円読書-相剋―警視庁失踪課・高城賢吾 相剋 警視庁失踪課・高城賢吾

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-205138-6
2009年4月発行 定価900円(税込)










前回に続き、堂場瞬一の警視庁失踪課シリーズの2作目、今回も文庫用の書き下ろし作品。キャラクターの性格なども把握できてきたので、シリーズものとしての面白さが味わえる余裕が出てきたが…。

捜査一課から、失踪課に協力要請が…情報提供を約束した目撃者が行方をくらませ、手がかりがまったくないという。高城は一課の尻ぬぐいなどしたくないというが、室長の命令で、法月と明神が捜査にあたる。一方、高城は、高校進学を目前に控えた少女の失踪事件を担当する事に。連絡がとれないという友人が訴え出たのだが、少女の家族に連絡をとると、どこか対応が不自然だった。事件性を感じ取った高城は醍醐と共に非公式で捜査を開始する…。

鳴沢了シリーズが、毎回コンビが変わったように、このシリーズも毎回、パートナー役が変わるようですね。今回は元プロ野球選手という異色の経歴を持つ、巨漢の醍醐が高城をサポート…前作でも、頼りになる活躍をみせていたけど、今回はさらに踏み込み、彼が実は優秀な刑事であることを再確認させてくれる。ただ、高城同様、自分の過去にトラウマを抱えており、そういったものが少し捜査に影響してくる。

皮肉というより、単なるオヤジギャグ?(鳴沢よりも年齢が高い設定なんで仕方がないよね)…仲間や事件関係者と高城の丁々発止なやり取りはさらに磨きが掛ったようで、なかなか面白く、作品に惹きこまれていくんだけど、最終的な事件の真相なんかは、やはり前作同様にインパクト不足に感じてしまう。なんか、事件の内容では、あらためて感想を語るようなものはないなぁって感じなんですよね。

もしかしたら、高城が抱えている過去の問題、シリーズの最終目標は、その真相を描くことにあり、今はまだ、そのお膳立てをしている最中なのではないだろうかと、思ってしまったのだがどうなんだろうか?続いて3作目を読んでみるつもりだけど、またメインになるパートナーは違うのかな?






個人的採点:70点






蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾 著:堂場瞬一


105円読書-蝕罪―警視庁失踪課・高城賢吾 蝕罪 警視庁失踪課・高城賢吾

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:978-4-12-205116-4
2009年2月発行 定価900円(税込)









鳴沢了シリーズの堂場瞬一が手がけた、新シリーズの警察小説、第一弾、文庫書き下ろし。今度は失踪調査専門部署の刑事たちを描いた話。現在、三作目まで発売中…一気に3作を100円コーナーで見つけたので連続で読もうと思っている。

高城賢吾は警視庁に設立された失踪人捜査課、その三方面分室に配属されたが、そこは自分も含め訳あり刑事ばかりが寄せ集められたお荷物部署であった。しかし分室室長の阿比留真弓は、高城の力で課を引っ張るよう命じる。そして着任早々に舞い込んだ、結婚を間近に控えた一人の青年の失踪。彼の親と婚約者の依頼で捜査を開始するのだが…事件は意外な方向へ。

新シリーズの1作目ということで、主人公の刑事がどんなキャラなのかも手探り状態で、それは今後レギュラーになるであろう脇役キャラたちもしかり。なので、事件そのものよりも…この1作目では、チームワークがまとまっていくさまの方が、読んでいて面白かったかなという感じでしょうか?

主人公も最初は飲んだくれのアル中刑事で、なんでそんな風になってしまったのかは追々、作品の中で触れられていくし、この1作目ではそのバックボーンにまだ謎の分部も残っていたりするんだけれども、とにかくみんな訳あり揃いの面子ばかり。で、主人公は教育係も兼ねて若い女性刑事とコンビを組んで、地道に地味な捜査をしていくというのが主な内容。

この女刑事…やっぱり気が強くて、どこか鳴沢シリーズに出てきた小野寺冴とダブってしまう分部があり(ということは、この前読んだ「蒼の悔恨」なんかにも似ている)。また、巨漢で、愚図でノロマにみえるけど、意外と神経が細やかで頼りになる刑事なんかも出てきて、そちらも鳴沢シリーズに出てきた今を彷彿とさせる。

一見、鳴沢了とは全く別の作品のように見えるんだけれども、やっぱり同じ作者の作品だなという臭いはどこかで感じますね。そういうクセものキャラ(刑事)が、みんな同じ課にいるわけですよ。こういう関係がどうなるのかというところでは、今後がけっこう楽しみ。失踪人調査ということで、物語の滑り出しはややもたついたが…手がかりがつかめてきて殺人も絡んだ大きな事件へと発展していくと段々面白くなり、最後には派手な見せ場もあった。






個人的採点:65点






四隅の魔 死相学探偵2 著:三津田信三


105円読書-四隅の魔 死相学探偵2 四隅の魔 死相学探偵2

三津田信三:著
角川書店 ISBN:978-4-04-390202-6
2009年3月発行 定価660円(税込)










ちょうど昨年の今頃読んだんじゃないかな?三津田信三の「十三の呪 死相学探偵1」…その続編シリーズで、今回も角川ホラー文庫書き下ろし作品。前作同様、オカルトと本格推理の適度な融合が読みどころみたい…。

城北大学に編入して“月光荘”の寮生となった入埜転子は、オカルト好きな男女が集まった大学非公認のサークル“百怪倶楽部”へ、半ば無理やり入部する羽目に。次第に仲間たちと打ち解け、夏休みのある日、女子寮の地下室で「四隅の間」という儀式を行うことになったのだが、その最中にメンバーの一人が突然死を起こしてしまう!以降、参加メンバーを次々と死が襲い、その都度不気味な“黒い女”が目撃されるようになった!転子は知人の紹介で死相学探偵・弦矢俊一郎に真相究明を依頼する…。

古典ミステリー的な味わいだった前作に比べると、現代ミステリー的な切り口へ。逆にホラーっぽい怖さは前作よりも増した感じ、“四隅の魔”を行っている最中の転子の心情などがなかなかいい雰囲気で、恐怖を盛り上げてくれる前半…死相学探偵の続編のくせに、中盤になるまで主人公が全く出てこないし…けっこうパターンは変えてきたかなって印象は受けた。

後半の、推理小説的な謎解きに関しては、割と予想通りだったというか…提示されている伏線で充分、真犯人まで看破できる。シリーズものなので仕方がないが、主人公が登場しちゃうと、俄然、ラノベっぽいチープさが急に目立ちまくるのが難点か?前半は緻密なのに、後半に入ると急に展開が大雑把になるね。

退屈しないで、サクサク軽く読めるミステリーとして、及第点な印象。前半の印象だけだったら、1作目より面白かったけど、トータル的な評価だと、面白さは同じくらいかなってところですね。将来的にはまだまだ続きが出そうな感じだけど、急いで続きが読みたいというレベルにまでは正直、達してないですね…続編が出ても100円コーナー待ちで充分かなと。






個人的採点:65点






カンニング少女 著:黒田研二


105円読書-カンニング少女 カンニング少女

黒田研二:著
文藝春秋 ISBN:978-4-16-775358-0
2009年3月発行 定価650円(税込)









メフィスト賞出身の黒田研二作品…叙述的でトリッキーな作風が多く、好きな作家の一人なので期待していた。交通事故死した大学生の姉の秘密を探るため、カンニングまでして同じ大学に入ろうとする妹の話…初出2006年の単行本を文庫化したもの。

高校三年生の天童玲美は、交通事故死した姉が実は殺されたのではないかと疑いを持つ。犯人は姉が通っていた馳田大学関係者か?玲美は真相を探るため、志望校を変えてでも超難関の馳田大学を受験することを決意するのだが…彼女の学力では到底無理。そこで友人たちの力を借り、カンニングで大学入試に挑むのだが…。

姉の死に隠された真相とはいったいどんなものなのだろうか?入学後にどうやって犯人と対決するのだろうか?とミステリー的な展開をかなり想像していたんだけれども、そういう分部での盛り上がるには欠けます。どちらかというと原田宗典の「平成トム・ソーヤー」みたいなノリの青春小説としての割合の方が多い感じ…。

いや「平成トム・ソーヤー」の方がもっとスリリングな展開だったなぁ。ただ、大学入試に万引きやカンニングが描かれるというあたりで、なんとなく引き合いに出して、比べたくなってしまったが、似ている部分もあるが、大半は主人公たちが、あの手、この手でカンニングに挑む様子が描かれる。

まず、大学に入学しなくても真相を調べられるのではないか?という疑問を、最初に物語の中で否定してるんですよ。それで、カンニングしてでも入学しなくちゃいけないという状況に追い込んだのに、結局…入学する前に物語は完結してしまう。もちろん、謎の分部は解明されるので、中途半端ってわけじゃないんだけど…ちょっと物足りないです。

一応、なぜ主人公の姉が事故死したのか、という真相が解明されるあたりに…推理小説っぽいネタは仕込んであったけど、過去のクロケン作品のように、騙されたと感じるほどのものではない。ミステリーとして期待してしまうとやっぱりガックリ…高校生が主人公ってことで、ラノベっぽい軽いエンターテイメントだと思えば、テンポは決して悪くない。






個人的採点:65点