「ん?」

クラウドとキラは、珍しい骨董品などが所狭しと並べられた

大通りより落ち着いた雰囲気の商店街を散策していた。


「どうしたの?クラウド」

「いや、別に・・・」

不意に振り返ったクラウドは、キラに笑いかけた。

「なんか、誰かの熱い視線を感じてさ。いや~ 俺、モテるからなぁ」

「・・・バッカじゃないの!?」


キラは覗き込んでいた、古風な壺から離れると地面マットに並べられた手作りの

綿糸製アクセサリーを手に取った。

「ねぇねぇ、これなんかいいんじゃない?トキのお土産に」

「んんっ? あぁ、そうだなー良い感じじゃないか」

「あんたねー、余所見しながら空返事するのやめてくれる?」


キラが憤然としながら、他の商品も見ようと隣りの店舗に入ろうとしたその時

――ドンッ

「きゃ」

何者かに蹴飛ばされて、キラは顔面から地面に叩きつけられてしまった。

「ぇ、キラ? おい、大丈夫かよ!」

事態に気付いたクラウドが急いで駆けつけるが、キラのスイッチはすでに入っていた。

「ちょっと~ レディーを蹴飛ばすとは、どういう了見よ!?」

「ヒィ! ご、ごめんね。急いでたものだから・・・」


キラを蹴飛ばした張本人は、そのまま派手に転んでいた。

いかにも弱気で、鈍臭そうな黒髪の青年だ。

「あー・・・君も、大丈夫?」

憤慨し喚くキラを宥め、抱え挙げながらクラウドは10代後半と見受けられる青年に小首を傾けた。

「えぇ、はい。大丈夫です。すみませんっ」

「君、キラに蹴躓いて転んだだけにしてはボロボロ過ぎるだろ」

クラウドがしゃがんで覗き込んだ青年の顔は傷だらけで、服も破れていた。

謝罪の言葉を聞いて、よしとしたのかキラも少し心配そうに声をかける。

「本当。どうしたの?」

「いや、僕は何も・・・気にしないで下さい」

青年はオロオロしながら立ち上がると、身なりを整えてペコッと頭を下げた。

「お気遣いなくっ 僕の方こそ、本当にごめんなさい」

「・・・・・・」


「おやまぁ、セルジュ様じゃないの。近頃見かけないと思ったら・・・どうしてたの」

店の中から出てきた膨よかな女主人が声をかけた。


「こんにちは。 えっと・・・」

セルジュと呼ばれた青年はたじろぎながら辺りを見回した。

「おばさん、ごめん。それはまた今度」

セルジュは姿勢を低くすると、聞き耳を立てた。

「おい、お前何やってんだ?」

思わずお前呼ばわりするクラウドに向かって、セルジュは苦笑いを浮かべる。

「すみません。 僕、ちょっと急いでますので、失礼します」

「え、お おい!」

クラウドの声が道に木霊したが、セルジュは振り返らずに走り去ってしまった。

「何なの?あの子」

キラも怪訝そうに黒髪の青年の背中を見つめて言った。




                                      by 蓮