「そういえば、トキはこんな都会に来るのは初めてじゃない?」
キラがクラウドの肩の上で跳ね上がる。
「うん・・・それに、とてもいい国みたい」
民の表情からも、努力の末に手に入れた暮らしの良さや充実感が伝わってきた。
「へぇ、トキは田舎育ちなのか?世界にはここよりまだまだでっかくて進んだ国があるんだぜ」
クラウドは調子を取り戻しつつ、歩みを再開した。
「んじゃ、カストロ帝国の城下町なんかに行ったらトキはびっくりするんだろうな」
「カストロ帝国なら、僕も少しは知ってますよ」
トキは、からかうクラウドにムスっとした表情を返した。
「それより、この国に来てからずっと考え込んでるみたいですけど。何か気になることでもあるんですか」
「んー?」
メインゲートから4つ目の角を曲がりながら、クラウドは返事を返した。
「この国は、なんつーか。急成長しすぎなんだよなぁ」
「え?」
「別に、俺たちが気にする程のことじゃないさ。 おっ、この辺りじゃないか?」
トキは、クラウドが何に取っ掛かりを感じているのかを理解出来ぬまま、早足になった彼の後を追いかけた。
向かう先は第2ホテル・セクターという、大規模なホテル街。
入国審査官から手渡された、トリップチケットを見せれば旅人や観光者は3日間無償で宿泊ができるというのだ。
「素性の知れない旅人なんかでも、お金を取らずに泊めてくれるなんて太っ腹よね!」
ホテル街は、日暮れまでまだ時間があるというのに既に電灯が灯され煌びやかな雰囲気を醸し出していた。
豪勢な装飾の白い柱が黄金色に浮かび上がっている。
ホテルの入り口付近には様々な肌の色・異国の服を纏った人々の姿が見える。
装いからして、金持ちの訪問者が多いようだった。
所々に粗末なマントに身を包んだ人の姿も見受けられた。
彼らも、恐らくトキたちのような渡り者なのだろう。
「ちょっと、僕たちには場違いな感じですね」
一応身なりはそこそこに整えているとはいえ、華やかなホテル街には簡易で粗末な衣服が悪目立ちしていた。
一際大きいホテルのフロント前には観光客が溢れ、黒服たちが慌しげに歩き回っている。
社交場感覚で、貴族夫人たちが立ち話に花を咲かせている為、各部屋への案内がスムーズにいかないのだ。
「お金持ちからは、しっかりお金を頂いてるみたいだな」
その様子を横目に見ながら、クラウドが呟く。
「見て!あそこだわ!!さっきのトコにも負けず劣らず素敵なホテルじゃない」
キラは、早くフカフカベッドに飛び込みたくて仕方がないと言った様子で声を弾ませた。
「そんじゃ、早速チェックインと行きますか」
by 蓮