「あ!」
クラウドが突然何かを思い出し声を上げた。
「そういやキラお前さっき銃に変わらなかったか?」
突然の質問にキラは瞬間的に耳をピンと立てた。
「さ、さぁ何のことかしら?暑さのせいで幻でも見たんじゃないの」
惚けた口調で誤魔化そうとするがクラウドは退かなかった。
「いや、絶対間違いない!こうグチャグチャになってトキの手に巻きついてたの見たぞ」
「グチャグチャって失礼ね!レディーになんてこと言うのよ」
「だって本当になってたぜ」
「違うわよ!あんたには美的センスってものがないの。もっとこう繊細に流れるように変化してるわよ」
「やっぱり銃になったんじゃないかよ!」
「あ・・・。って、そんなこと今はどうでもいいでしょ!とにかくここから出ることが先よ」
「・・・・」
緊張感も危機感の欠片もなく、いつもの如くガヤガヤうるさい二人を余所目に、トキは歩みを進めた。
痛む足を気にも留めずに扉の元へと進んでいく。
2、3分ほど歩いた場所に扉は存在した。扉と言うより、最早大きな壁のようだ。
少し錆びついてはいるが、表面には綺麗な花の模様が彫り込まれている。
「ほらな、開かないだろ」
クラウドはそう言い、再度扉を全力で開けようと試みたが開く様子は微塵もない。
恐らくこの中で一番力が強いであろうクラウドが開くことが出来ないのだ。トキには到底無理だろう。
そう思いつつも何か手掛かりは無いものかとトキは扉に手を触れてみた。
ガガガガッ―――
すると、轟音と砂煙と共にその大きな扉は頑なに閉ざしていたはずの道をいとも容易く差し出したのだ。
「なっ!!トキ、お前なんて怪力・・・」
「違います。扉が勝手に!」
目の前の光景にトキは一瞬焦ったが、
「トキは扉を開けるのが得意ねぇ」
などと、落ち着き払った口調でキラが揶揄ったのですぐに冷静を取り戻していた。
本当にトキは何もしていない。ただ触れただけのはずだった。
しかし、扉は開いた。それは、その先へ踏み入ることを許された証なのだろう。
道は一つしかない、迷うより進むしかない。
トキは足の痛みなど忘れたかのように扉の中へ進んでいた。
その先にいるはずの魔女に聞きたいことがあったから――――
by 沙粋