クラウドはとうとう歩みを止めて、その場に座り込んでしまった。

無言のトキも、重度の疲労が見られ膝を押さえながら立っているのがやっとだった。


――このままだと、体力が持たない


細めた目で周囲を臨むが、目的地は捉えられない。

アラバス城壁の門番に貰ったパンと水も底を尽き、いよいよ野垂れ死の危機が迫ってきた。

トキに小さな諦めの念が過ぎった刹那、クラウドとキラの吃驚面が目に飛び込んできた。

「な、なな なんだアレ!?」

クラウドが指差す先には、巨大な風の渦が砂を巻き上げながらこちらに向かってきていた。

「・・・!?」

急な奇怪現象に、トキは思考を乱される。

先まで灼熱の静寂地だった、この砂漠に一体何が起こったのか。

しかし、正確な状況判断をする時間は与えられなかった。

砂を含んだ旋風は、風息を強めながら、トキたちのすぐそこまで迫ってきた。


「っ! キラっ!!」

キラは体から光を放ちながら瞬時に銃へと姿を変える。

「おぉ! って、えぇぇええーー!? そんなのアリか!?」

クラウドが違う驚きを覚えている傍ら、トキは旋風の中心へと銃を撃ち放つ。

しかし、風の勢いは止まず、ますます周囲の砂を散らしながら突き進んでくる。

「くっ ダメか・・・」


その時、グラッと足場が崩れ、トキ達は砂に足を捕られた。

「なっ、こんな時に・・・ 流砂か」

クラウドは、自分よりも深く流砂に埋もれたトキを引き上げようと手を伸ばした。

トキは元に戻ったキラをクラウドに差し出す。

クラウドの手に移ったキラは、そのまま肩まで駆け上がると、吹き上げる風と砂で曇った上空を見上げた。

「上に逃げても もうダメだと思うわ」

「トキっ! 早く」

クラウドは再び手を伸ばしたが、トキは既に胸まで砂に浸かっていた。

「・・・っ」

トキは手を伸ばしたが、その手が届く前に完全に砂に飲み込まれてしまった。

「トキ! ・・・クソぉ」

クラウドはキラが離れないように手を添えながら、流砂の流れに従って砂に潜った。



      by 蓮




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