トキは宿を出て、東に向かって歩き出した。
(トキはまた間違えて西へ向いていたが、宿のおばさんが正しい東の方向を教えてくれたのだ。)
「もう!ホントにトキは駄目ね~」
キラがバックの中から顔を出した。
「お日様が出てくる方に行けばいいのよ!」
東雲(しののめ)の空。
もうすぐ、夜が明けようとしていた。
アラバスを象徴する赤い旗がまた、トキを出迎えてくれていた。
城壁を守る門番に開門を頼むと、門番は快く聞き入れてくれた。
「こんな時間に、子供一人で大丈夫かい?気をつけるんだよ」
優しい門番は トキにパンと水筒を手渡してくれた。
「ありがとうございます」
トキはお礼を言うと門を通った。
ギシギシと音を立てて閉まる門――と、その時
「待てよ。俺を置いていく気かよ?」
聞き覚えのある声。
振り向くと、大きな門を片手で押さえながらこちらを見る男が。
「クラウドっ!?」
トキは思わず声を上げた。
どうして・・・
この時、トキは自分が驚きと喜びの入り混じった表情でクラウドを見つめていたことに気付いてはいなかった。
蓮