アンジェは、マリア様のステンドグラスのあったホールの

隅に作られた階段から上へ上がり、

小さな部屋の前へトキたちを案内した。

「このドア、ずっと開かないの」

アンジェがノブをがちゃがちゃ動かしている。

「トキ・・・ここよ」

キラが促す。

何回やっても無理なの、とアンジェが横から言ったが、

トキは、蹴破る前にノブに手を掛けてみた。

その時!!

―――カチッ。

「!!?」

アンジェがどんなに力いっぱい開けようとしても無駄だったドアが、いとも簡単にその道を開いた。

「・・・どうして?」

アンジェはとても理解できない、という顔でこちらを見るが

トキやキラの方こそなぜ開いたのか検討もつかずに、困惑の表情を浮かべる。

「とにかく、開いたんだわ。やっと中に入れる!!」

アンジェが部屋の中へ駆け出した。

「!!・・・待って!」

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  ―――ソレイユでは、サラがキッチンを片付けていた。

       その時、ブワッっと一瞬空が赤く光り、雨の強さが急に増した。

       風も吹いてきて、凄まじい嵐になっていた。

       思わずサラは、窓に近づき外の様子を伺う・・・

       「・・・・・アンジェ?」

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―――教会

「待って!」

トキの忠告は、もはや手遅れだった。

部屋の中には、赤く怪しい光を帯びた黒い玉が邪悪な力を発しながら浮かんでいた。

「オブシディアだ!!」

キラが叫んだ。

「アンジェ!!」

少女の目は漆黒に染まり、黒い玉に吸い込まれるかのように近づいていく。

「それに、触れちゃいけない!」

もう、彼女にトキの声は届かなかった。

そしてとうとう黒い玉―――オブシディアにアンジェの手が掛かった。


赤い光が眩しいほどに、部屋を包み込み

次の瞬間、強力な風と水の渦で出来た、触手の様なものがトキたちを襲った。

「くっ、キラ!!」

トキが叫ぶとキラはすぐさま銃に変化した。

バン、バンッ

オブシディアに向かって攻撃するが、大したダメージを与えられない。

「ダメよ!これ以上やったら、アンジェに当たっちゃう!」

キラに言われて、トキはすぐさまアンジェの方へ走った。

その間にも、オブシディアからの激しい攻撃が容赦なく向かってくる。

どうにか、彼女の元にたどり着いたトキは急いでオブシディアから手を離そうとした。

「きっと、このオブシディアは暴走しているんだ。アンジェ、この手を離すんだ」

その時、トキの背中をオブシディアの水の触手が襲った。

「うっ、」

弾き飛ばされた。しかし、運良くアンジェも一緒に。

オブシディアから、アンジェを離す事が出来たのだ。彼女は、気を失っている。

「トキ、大丈夫?」

キラに言われて、背中を見るトキ。

不思議なことに、コートは傷一つ付いていなかった。

「大丈夫だよ」

アンジェの手が離れても尚、オブシディアの暴走は止まらない。

「トキ、オブシディアはアンジェを狙ってくるわ」

「分かってる」

どうにか、彼女を守らなければ。

トキはゆっくり立ち上がり、オブシディアを睨みつけた。

「アンジェの命は、お前の力の為なんかに使わせない」

     by 蓮



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