朝起きて、ほの暗い光の差し込む窓を見ると、やはり外は雨だった。昨日と変わらず

教会の上の雲は、妖しく赤みを帯びている。

トキは荷物を整理し、出掛ける準備を始めた。キラはそれを見ながら忠告するように言った。

「あの光、何かとても強いエネルギーを感じるの・・・。気を付けた方がいいわよ。」

「・・・・・・・・・・・・わかってる。」

トキは何か考えるようにして応えた。

「またしばらく入っててくれるかい?」

トキが申し訳無さそうに言うと、キラはしぶしぶウェストバッグへともぐり込んだ。

部屋を出ようとノブを握ろうとした瞬間、ドアは自然と開かれた。

「あら、もう行くつもりだったの!?」

目の前に大きめのバスケットを抱えた宿屋の女性が立っていた。おそらく朝ご飯を運んで

きてくれたのだろう。

「毎朝、朝はパンを焼くの。良かったら召し上がってもらえる?」

そう笑顔で女性に言われ、思わずこコクンと頷いてしまった。

女性はうれしそうに仕度を始めた。バスケットからかわいいポットとティーカップを取り出し、

いい香りのお茶を入れてくれた。奇麗なお皿を取り出し、おいしそうに焼き上がったパンも

並べてくれる。

昨日アップルパイを食べたキラもピンピンしているし、せっかく用意してくれた食事を

断るのは気が引けたので頂くことにした。

「どうかしら?」

女性は不安そうに尋ねた。

「おいしいです。」

そう言うと、女性はうれしそうに言った。

「よかった。お茶も飲んでみてね。」

トキが食べていると、女性は話し始めた。

「雨がやむまで休んでいってくれるものだと思っていたわ。」

さっきとは打って変わって悲しげに言う。

「私の名前はサラ。トキ君とはもっとお話したかったわ。」

そう言って苦笑いを浮かべた。


「ごちそうさまでした。」

そう言って食べ終えた。

サラは玄関まで案内してくれた。

「ありがとうございました。アップルパイとパン、おいしかったです。」

トキは丁寧に礼を言う。

「また気軽に立ち寄ってくださいね。」

サラは少し寂しげな笑顔でいった。

トキは宿屋を後にした。

宿屋が見えなくなったところで、ウェストバッグからぴょこんとキラが顔を出す。

「ちょっと~!!私もあのいい匂いのパン食べたかった~!!」

いかにも泣き出しそうな声でキラがぐずる。

トキは不適な笑みを浮かべながら、上着の内ポケットから先程のパンを取り出した。

「ちゃんと取ってあるよ。」

キラはキラキラと目をひからせた。

予想通りの反応に、トキは笑いをこらえきれずに笑ってしまった。

トキはパンに夢中のキラに言ってみた。

「とりあえずガロさんのところに行って、教会の場所を聞こうか。」

キラは聞いているはずも無く、パンに夢中だ。

トキはガロのところへむかった。

                                                    by 卑弥呼



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