男はつらいよ 寅次郎夢枕 その2 | 岩崎公宏のブログ

男はつらいよ 寅次郎夢枕 その2

寅が題経寺の門の前に立って境内を見ると子供たちが遊んでいた。その中にいた子供の母親が「馬鹿みたいに遊んでばかりいると寅さんみたいになっちゃうんだよ」と叱っているのを見た寅はややむくれた表情になった。おまけに門の壁には「トラのバカ」と書かれた落書きがあることに気がついてますます不機嫌になってしまった。寅が立ち去ったあと近くにいた源ちゃんが慌てて落書きを消した。

とらやの店先に花嫁姿の女性が挨拶に来ていた。おばちゃんの車つね(三崎千恵子)が「さくらちゃん、お嫁さんだよ」と声をかけるとさくらが店の奥から出て来た。「まあ、さっちゃん、綺麗ねえ、おめでとう」と花嫁に祝いの言葉を伝えた。おいちゃんの車竜造(松村達雄)も「この姿を見てると、とてもお転婆のさっちゃんには思えないねえ」と言った。

この花嫁は源ちゃんを演じている佐藤蛾次郎の本当の奥さんだ。島田紳助が司会を務めている「人生が変わる 1分間の深イイ話」でこのエピソードが取り上げられたことがあり、そのときに初めて知った。撮影のあと店のセットで記念撮影をしたときの写真も紹介された。この写真を撮影したのが渥美清と親交があった篠山紀信だったというエピソードが紹介されるとスタジオにいた人たちは「ほぉー」と感心していた。当時の佐藤蛾次郎の収入が少なくて、同棲していた彼女と結婚式を挙げる余裕がなかったことを聞いた山田洋次監督の配慮によって実現したそうだ。

店内で三人で雑談しているところに寅が戻って来た。機嫌が悪い寅は三人が雑談している様子を見てまた自分の悪口を言っているのではと勘ぐってしまった。店の入口まで来て三人と顔を会わせた途端に店に入ることなく通り過ぎてしまった。三人は店の奥の茶の間に移って寅が戻って来るのを待った。

寅は朝日印刷の従業員通用口のほうへ行って「すぐ戻ると思ってるんだろう、そうは問屋が卸さねえぞ」と呟いた。

三人が茶の間で待っていたけど、寅はなかなか戻って来なかった。タコ社長が慌てて駆け込んで来て、「大変だよ、寅さんが俺の工場で工員たちを捕まえて、物凄い剣幕で『やい、てめえら、俺のいないときはいつも俺の悪口を言ってんだろう』って騒いでるんだよ」と叫んだ。