闇に消えた怪人   グリコ・森永事件の真相   (一橋文哉著 新潮文庫) その4 | 岩崎公宏のブログ

闇に消えた怪人   グリコ・森永事件の真相   (一橋文哉著 新潮文庫) その4

事件の最中に警察にとんでもない失態があった。午後9時18分に白い布が置かれた柵の下を交差する県道に不審な白いライトバンが停車しているのを滋賀県警のパトカーが見つけた。極秘捜査が進行中という連絡を受けていなかった警察官は職務質問をしようとしたら、ライトバンはいきなり逃走した。パトカーはすぐに追跡したけど、草津駅付近で見失った。数分後に駅の近くで発見された。車内には改造無線機などが残されていた。しかしこの不審車両が事件と関係があると気がつくのが遅れて特別緊急配備を敷いたのは2時間半後だった。捜査本部と滋賀県警の連携が不十分だったことに原因があった。

子供の声で吹き込んだテープが公開されたときに犯人グループには子供がいるのかという衝撃を世間に与えた。当時、私は事件とは無関係の子供に文章を読ませただけではないかと推測していた。一橋氏は鑑定書の「別々の非常に短い文章の朗読テープを繋ぎ合わせて編集し、録音し直した形跡が見られる」を引用して犯人グループの一員と見て男児の声を公開した捜査本部は失敗を犯した可能性があると指摘している。

最後に敗因の3つ目の要因として遺留品の捜査が進まなかったことに触れている。正確に書くと、捜査が進まなかったのではない。車、衣類、塵芥に至るまで遺留品を徹底的に調べた結果、ほとんどの遺留品の製造元、販売経路、犯人が購入、入手先まで割り出した。しかし量販品が多くてそこから先を詰めることができなかったのだ。去年の12月に一橋氏の「三億円事件」をブログで取り上げた。あの事件はグリコ・森永事件の16年も前に起きた事件で大量の遺留品があったのに、大半が大量生産品で犯人の逮捕に結びつかなかったことと似ていると思った。従来型の捜査方法の限界が大量消費社会の到来と共に生じたようだ。



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