「知るを楽しむ」 中原中也 その1 | 岩崎公宏のブログ

「知るを楽しむ」 中原中也 その1

教育テレビの「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝」において、10月は「中原中也 口惜しき人」というタイトルで4回の放送があった。1997年(平成9年)に最初の小説「くっすん大黒」で野間文芸新人賞を受賞し、2000年(平成12年)に「きれぎれ」で芥川賞を受賞した作家の町田康さんが講師を務めていた。

中原中也は30年の短い生涯で「山羊の歌」と「在りし日の歌」という2冊の詩集を残した。青春や人生の哀しみをテーマにした彼の繊細な詩は今でも多くのファンを惹きつけている。

第1回は「落ちつかない故郷」というテーマで放送された。町田さんは高校2年生のときに一緒にバンド活動をやっていた友人から中原中也の詩を紹介されたけど、そのときには自分の感性とは合わなくてピンと来なかったそうだ。ところが数年前に改めて読んでみて、興味をかきたてられたと語っていた。

去年の12月に中原中也の生家がある山口県の湯田温泉を町田さんが訪れたときの映像があった。ここは明治の元勲だった井上馨の出身地でもあり、彼の銅像がある高田公園には中原中也の「帰郷」の詩碑もある。生家の中原病院の跡地には中原中也記念館が建設されて遺品や遺稿が展示されている。町田さんは中也の直筆の原稿を初めて見たと言っていた。記念館には全国のファンからの手紙や感想文も公開されていた。

市街の西部を南北に流れる吉敷川がありそのほとりに中原家の墓がある。「中原家累代之墓」という墓碑は中也の文字だ。中也に文字を書かせたのは、病院の跡取りであることを自覚させようとした両親の意向があったそうだ。中也は両親が結婚してから7年目にようやく生まれた息子だった。中也の誕生を喜んだ父は軍医として赴任していた中国の旅順にすぐに連れてくるように命じた。旅順で撮影された中也の生後間もない時期の写真の紹介もされた。3年後に生まれた弟の亜郎と仲が良かったけど、中也が8歳のときに弟が亡くなり強いショックを受けたそうだ。


私のこだわり人物伝 2008年10-11月 (NHK知るを楽しむ/火)/町田 康
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