男女の境界があいまいになるジェンダーレス時代 | 島村 美由紀

島村 美由紀

都市計画、商業施設計画、業態開発等のコンセプトワークやトータルプロデュースを手掛ける
弊社代表・商業コンサルタント 島村美由紀の執筆記事を紹介していきます。

男女の境界があいまいになるジェンダーレス時代
(不動産フォーラム21 2016年3月号掲載)


●ジェンダーレス男子
 一昨年のこと、渋谷の路上で“子犬のような男の子”というキャッチコピーで男性モデルがポーズをとる広告を見かけました。従来感覚では男性と子犬がかけ離れた存在なので、この2つが融合することがどいうことなのか理解しにくい広告でした。
 その驚きから1年もたたぬ間に原宿や渋谷には“ジェンダーレス男子”が誕生して、若者のトレンドになっています。ジェンダーレス男子とは性別の壁を超えた美しさを持つ新イケメンスタイルで、男性的でもなく女性的でもない中性的な存在。ジェンダーレス男子の特徴は、派手な髪色にカラーコンタクトをして華奢な身体であり、美意識が高く化粧は常にして「キレイ」であることに強いこだわりを持っています。いま、こんな男性の存在が10代を中心に人気となり、TV出演する有名ジェンダーレス男子が憧れの的となりファッションアイコンとしても注目を集めいています。
 男でも女でもなくオカマや女装家でもない、性差とは関係ない世界で自分なりの美しさをつくり表現する新しい世代の人種が誕生したと言ったら少々言い過ぎかもしれませんが、その“自己へのこだわり感”は新感覚であると言えます。


●境目のないジェンダーレスファッション
 2015年秋冬から「ジェンダーレスファッション」が注目されています。いままでは男性的、女性的という性差によってファッションスタイルが分かれていましたが、ジェンダーレスファッションとは、男女のスタイルの差を出さず、境界線のないスタイルを男女が同一に楽しもうというファッション傾向なのです。例えば、男性のショートパンツにフリルがついていたり、シャツが鮮やかな花柄であったり、女性がゆったりとしたパンツやオーバーサイズのシャツを着たりと、男女の差をなくして両性に向けた同一のデザインを多様なサイズだけで販売するデザイナーズブランドも生まれています。



 特にミレニアム世代の12歳~19歳の人たちは男女の境目がどんどんあいまいになり、固定的な感覚を持ち合わせない傾向が強くなっていると言われています。私の周囲のこの世代では有名ブランド認めてはいるが、無印良品やユニクロや古着も認めていて、自分の認めているものを男物であろうが女物であろうが有名・無名関係なくファッションとして楽しんでいる若い人達です。この若者達は実に自由。のびのびしています。ラクそうにファッションを楽しんでいます。渋谷や原宿にはこんなジェンダーレスファッションの人達が増加しています。


●今どきはやりのペアルック
 大昔ペアルックは、カップルが同じセーターやシャツををお揃いで着たファションのこと。あまりにこれ見よがしな同じアイテムなので恥ずかしくもあったルックスですが、長い間ダサいファッションとて世の中から抹殺されていました。ところが近年からこのペアルックが流行しています。発端は黒いパーカーを着たきゃりーぱみゅぱみゅとボーイフレンドのツーショット写真が公開されたこと。今のペアルックは“双子コーデ”といって仲の良い女子同士のパーカーやネルシャツやデニム、スニーカー等、スポーツアイテムが主流になっています。
 考えてみれば、この20年、サークルやチームやプロジェクトスタッフが同一のTシャツやジャージを着て仲間意識を盛り上げたり、ライブに行くときやスポーツ観戦の楽しみ方としてユニホーム的にコスチュームを楽しんでテンションを上げることに私達は慣れ親しんできましたね。大昔の外に向かった恋人宣言のようなペアルックから、今は仲間・共感を自分達で楽しむペアルックが時代のココロなのかもしれません。

 ‘男らしさ女らしさ’が時代の流れで薄れていき、‘自分らしさ、仲間らしさ’が枠なしで自由につくられる時代になってきたことを感じます。


(島村 美由紀)