【第3回RWラリー小説】コールとコリー | 乱歩酔歩--Random Walk official blog--

【第3回RWラリー小説】コールとコリー

コールとコリー

「そろそろうちも欲しいよな」

と、新製品らしいタイムマシンのCMを観ながらふと言ってしまったせいで、今朝は妻と喧嘩をしてしまった。「家計のことも考えてよ!」と彼女は怒ったが、来月の結婚記念日に時間旅行なんてお洒落じゃないかと、僕はここのところずっと考えていたのだ。

ぷりぷりと怒りながらも食卓に置かれた弁当に、結婚して良かったなあと思いつつ。
「行ってきます」と言う僕の言葉に返事はない。しばらく彼女の怒りは収まらないのだろう。
今日の帰りは花屋に寄ろうか、ケーキ屋に寄ろうか。

そんなことを考えながらの平和な朝は10メートル先で綺麗に霧散する。

「ご注文の品ですよ!」

「え、僕ですか?」「コールさんですよね?」彼は、注文票を提示する。確かにそれは僕の注文に違いなかった。「ID認証を」「はい」生体認証もパスしてしまう。注文成立というわけだ。

彼はコールに荷物を手渡すとそそくさと帰って行った。なにを頼んだのかな?と不思議に思ったが、僕に荷物の心当たりは無かった。出社前だった事もあり、荷物は彼女に任せ、僕はその日一日のスケジュールや妻のご機嫌をどうやって取るかをつらつら考えながら家を出た。

今思えば、これが間違いだったのだ。

僕はあの荷物を妻に渡すべきではなかった。怪しいと思ったそのときに、中身を確認するべきだったのだ。
しかし、僕が過ちに気付いたのは、それから何時間も経って帰宅したとき…。そのときには、もう事件は始まっていた

会社に着きいつものように仕事をこなしていると、突然携帯電話が鳴った。見慣れない番号を訝しがりながらも電話に出る。

「もしもし」

一泊置いて聞こえたのは、かすかな息。次いで「…あなた…!!」

彼女のそんな声を聞いたのは始めてだった。ただならぬ雰囲気を感じ取って「どうしたコリー?!」っと僕は聴いた。僕が聞くと彼女は「私、今、自分が何処にいるかわからないの?!」っと言った。


 ============(続く)=============

 以下、オチ担当:米原でお送りします。スタートは夏野氏だった分けですが、「今SF書く練習してたので~」的な事を呟いてたと思うのですが…。うん。まぁ。正直、

 個人でやってくれ…

 って言うのが正直な感想ですね。はい。SFを書く予定も無く、SF知識・タイムパラドックス知識は「Back to the Future1~3」しか無い私にとっては辛かった…。SFって世界設定や伏線の張り方・回収の仕方で面白さが決まってくると思うんですが、

 「今までの流れ+設定+それを踏まえての続き」を3分以内で考えるのは、無理だった。

 ↑の最後の文は自分で書いたやつなんですが、なんでタイムスリップしてんのに電話繋がってんねんっていうね。自分で自分の首を絞めてるって言うね。もうこれSFじゃなくてファンタジーです。

 まぁ難産なのは割と今までのオチ担当見ると同じですね~。ふわっと終わらせる事になりそうですがお付き合い下さいませ~。



※※※編注(by 須々木)※※※

※第3回ラリー小説まとめはこちらをどうぞ。
※ラリー小説についてはこちらをどうぞ。
※ちなみに、ラリー小説本文以外のやりとりも見たいという方がいれば、RW公式リストをどうぞ。かなりさかのぼらないといけませんが。

※※※※※※※※※※※※※



============(ここからつづき)===========

僕は一瞬何を言われたのか理解できなかった。「それは、いったいどういう…」僕がコリーに聞き返そうとした瞬間。

ブツッ!

と電話は切れてしまった。ただ事では無い…。言いようのない不安と、落ち着かなければという気持ちが混ざって冷たい汗が流れた。僕は上司に早退を告げて急いで家に帰った。

「コリー!」僕は玄関の扉を開けて彼女に呼びかけたが、いつもの返ってくるはずの返事は聞こえなかった。
リビングに入ると、今朝届けられた荷物が、開けられた状態で置いてあった。そして床には小さな機械が転がっていた。それは今朝のCMで見たタイムマシンだった。

確かに欲しいとは思っていた。時間旅行が一般人でも(お金はかかるが)行けるようになったのだから、自分だって憧れはあった。だが自分で注文した記憶は…無い。他に心当たりがあるとすれば、僕では無く「コリーが注文した」という線だ。銀行の口座や名義は全て僕の名前で統一してあるので、彼女が買い物をしたとしても、引き落としは全て僕の名義・口座で行われる。その代わり全て僕が本人確認であるID認証をしなければいけないのだが、お互いに自分たちがどんな買い物をしているか分かっているので、余計な買い物が減るという利点がある。

しかし、彼女がタイムマシンを注文するとは考えられなかった。何故なら彼女は機械があまり得意では無いからだ。
ここ数十年でテクノロジーの進化は留まる所をしらず、タイムトラベルも一般化する程になったが、全ての人間がその技術を使いこなせるという訳じゃない。生活に必要な機材やPC、携帯など日常で良く使う物は問題無いが、最先端の機械には、兎角慎重なのだ。以前にも、タイムマシンが一般化された当時、僕が欲しいなぁと呟いた時なんて「タイムトラベルなんて宇宙旅行以上に規制が厳しいに決まってる!」「新しい商品は情報少ないんだからクチコミを見てからの方が良い!」「なにより家にそんな余裕は無い!」と畳み掛けられてしまった。ついでに、今まで彼女からサプライズ的な贈り物をされたことも無いし、今は誕生日や記念日が近いわけでも無い。

 …いや、今重要なのはそこじゃない。タイムマシンがココにあり、コリーがココにいないというコノ状況。かなり、やばいのではないか?
 今でも彼女に電話は繋がらない。なら彼女は何処へ行ったのか。もし誤ってタイムマシンを起動させていたとしたら、彼女は『どの時間』へ行ってしまったのか。タイムマシンがココにあるなら、彼女はどうやって『現在』に帰ってくれば言いのだろうか?

どの時間のどの場所に移動したか、履歴がないか慌ててタイムマシンをイジってみるが、どうやらすぐに帰ってこれるように、自動で「タイムトラベルをした瞬間」の時刻を保存するようで、場所は自宅・コリーから電話がくる少し前の時間を表示している。

これではコリーが向かった場所が「過去」か「未来」かなのかも分からない…。

…そうだ。今、僕の手にはタイムマシンがある!もしコリーの身になにかあった原因が「このタイムマシン」なら、コレを使って過去を変えれば良いんだ!そう、歴史を大きく変えるわけじゃ無し、ただ今朝届けられたタイムマシンを返品すれば良い。それで「今コリーがいない」という状況は変えられるはずだ!僕はさっそくタイムマシンの時刻を今朝に設定し、スイッチを押した。

瞬間、視界がブレて、エレベーターに乗った時の様な感覚がした。僕はタイムマシンを落とさない様にギュッと強く握った………。

瞬間、僕はリビングから玄関の外に移動していた。タイムトラベルというよりは、瞬間移動と言った方が正しいような。…本当に、僕は今朝という「過去」にいるのだろうか。今、家には今朝のコリーと僕がいるのだろうか?

「あ、どうもー!お届け物でーす。」
「?!」

突然声をかけられてビックリした。が、声を掛けて来たのは間違いなく「今朝の配達員」で、彼が持っている荷物は「タイムマシン」だ。

「ッ!す、スミマセンッ!これ!返品でお願いします!」
「…えっ。ぁ…はい分かりました。え~と。『コールさん』。ご本人様でよろしいですか?」
「はい!」
「じゃぁID認証お願いします。」
「はいっ!」
これでコリーに「なにか」が起こる未来は変わるはず!と僕は安堵した。が。

ビー!ビー!ビー!
音と共に、パネルには『規制によりこの操作は無効になりました』の文字が表示された。

「…え?コレってどういう…。ぁ、私は本当にコールで…あれ…?」
「ぁ~…もしかしてお客さん、タイムトラベル中じゃありません?」

「え?!なんで、分かったんですか?」
「タイムトラベル中の人には、色んな制限があるって聞いているので。タイムパラドックス。過去や未来の自分に会っちゃいけない~とかあるじゃないですか。」
「ぇ、えぇ。まぁ。」
「タイムトラベル中は、何か契約したり、買い物して持ち帰ったりする行為は原則禁止なんですよ。そうしないと、タイムマシンもただのトラブルメーカーというか、クレームメーカーになっちゃいますから。」
「た、確かに…。」

過去で色々できてしまっては、誰でも未来を改変し放題になってしまう。

「なので、現在の「コールさん」のIDを「あなた」は使う事ができません。申し訳ありませんが、キャンセルも「現在のコールさん」しかできないようになってます。」
「そんな…過去って言っても、ほんの数時間前に戻って来ただけなのに…。なんとか返品できませんか?!」
「申し訳ありませんが規則ですし、私はただの配達員なので、タイムトラベルやタイムマシンの対応に関してはなんとも…。」
「そ、それなら、『現在の僕』に頼んで返品を…。」
「ぁ、おそらくそれも無理だと思います。」
「ぇ。」
「『自分』との接触のリスクを避ける為に、『自分』がある一定の距離まで近付いたら『強制送還』されるように設定してあると思いますよ。」
「そ、そうですか…。」

僕はガクッと項垂れた。結局なにも変えられない。コリーの身に何が起こったのかすら分からない。そもそも彼女がタイムトラベルをしているという確証もない。一度未来に帰って別の方法を考えた方が良いのか…。はじめにタイムマシンの製造会社に問い合わせた方が良かったのでは無いか?そうだ…冷静にならなければ…一度現在に帰ろう…。と、ひとり考え込んでいたら…。

「…コール?」
「………ぇ?」

聞き慣れた声がした方を見たら、コリーが、配達員の後ろから恐る恐るといった感じにこちらを覗き込んでいる。
一瞬、「過去のコリー」に会ってしまったのかと思い心臓が跳ね上がった。が、確か、『過去のコリー』は『過去の僕』と今は家の中にいるはずで…。

「…君は、…タイムマシンを使った…会社の僕に連絡をくれた…コリー?」
「…ッ…そうよ…貴方は…私の…コール?迎えに…来てくれた…の?」
「ッ!そうだよ!」

僕たちは安堵から強く抱き合った。横で配達員さんが「詳しい事情は分かりませんが、丸く収まりそうで良かったですねー。」と呑気な事を言った。…いや、仕事中に足止めして、おまけに恥ずかしい所を見せて申し訳無いとは思っている…。

コリーから話を聞くと、やはり誤ってタイムマシンを起動させてしまったようだ。しかし、初期設定がタイムマシンを購入した日である1日前であり、場所の設定はタイムマシン専門店だったようだ。自分に何が起きたか分からず、混乱した状態で僕に連絡してきたらしい。しかし携帯もすぐ切れて使えなくなってしまった。どうすれば良いか分からず途方に暮れていた所、専門店の店員ロボットに保護されたそうだ。

―――――――――

「どうしよう…あれってやっぱりタイムマシン…だったのかしら?だとしたらココはいつのどこなの?…過去…未来…?携帯はもう繋がらないし…。どうしよう…驚いた時にタイムマシンは落として来ちゃった…。帰れない…。どうしよう…。どうしよう…。」
「イラッシャイマセ!オヤ、タイムトラベル中ノ、オ客様デ、間違イナイデショウカ?」
「えっ!?ぁ、はい!そ、そうみたい!です!私、この時間に移動する時にタイムマシンを落としてしまって…。」
「ソレハ大変デス。ゴ自分ガ、ドノ時間カライラッシャッタノカ分カリマスカ?」
「いえ…それも分からないの…。」
「チナミニ、本日ハ西暦●●●●年○○月○○日×曜日。朝8:52分デゴザイマス。」
「それ本当?!」

結果、どうやら1日過去に来てしまっただけの様だ。本当に良かった…。

「じゃ、じゃあ私は1日だけ過去に来たってことなのね?あぁ良かった。…なら明日の私は、また1日後にタイムスリップしちゃう訳だし…このまま1日時間潰せばなんとかなりそうね!1日得した気分だわ。」
「イエ。オ客様。ソレハデキマセン。オ客様ニハナントカ、オ帰リ頂カナクテハ。」
「…え?どうして?タムマシンが無くても済む話じゃない。」
「イエ。一度タイムトラベルヲシタオ客様ニハ、多クノ制限ガカカッテオリマス。イマカカッテイル制限ヲ解除スルニハ、一度オモドリ頂カナクテハ。」
「でも、肝心のタイムマシンが無いのよ?あ、そいえば、このお店はタイムマシン専門店なのよね?ここにあるタイムマシンで帰してもらえるの?」
「イエ、ソレモデキマセン。」
「ど、どうしてよ!?」

「タイムトラベルハ、1回ノ転送デ別料金ガ発生シテオリマス。トラベル中ノオ客様ハ原則オ金ヲ使ウ事ガデキマセンノデ。」
「そんな…。じゃぁ、私はどうやって帰れっていうのよっ!帰れって言ってるのに帰さないっておかしいわよ!」

「オ客様ニ提供デキルノハ、《非常用タイムマシン》ノミトナッテオリマス。」

「 … … … 」「 … … … 」

「だったら早くその非常用のを貸してよ!」
「ハイ、カシコマリマシタ。」

な、なんて融通が利かないロボットなの!?
私がやろうとした事や聞いた事に対して律儀に答えているだけなんでしょうけど…。今の私は分からない事だらけで、不安の所為か気が立ってるのよ!ロボットはタイムマシンを取り出して私に渡した。

「コレハ非常用ナノデ、万ガ一マタ違ウ時間ニ行ッテシマッタ時用ノ保険デ2回ノミ使エル仕様トナッテオリマス。2回ツカワナクトモ、一定ノ時間ガ経テバ、自動的ニ壊レル仕組ミニナッテオリマスノデ、ゴ注意下サイ。コノ非常用ヲオワタシスル前ニ、パネルニ必要事項ヲ記入シテイタダキマス。」
「はぁ…。」

良く分からないけど…なんかもう帰れるならもう何でも良いわ…。私は言われるがままに出されたパネルに個人情報等の必要事項を記入して行く。非常用と言ってもタダでは無いらしく、戻った時間の後に口座から料金が引き落とされるシステムの様だ。…ものすっごく損した気分。でもコレで帰れる。と、安心して最後の確認ボタンを押した瞬間。

ビー!ビー!ビー!

「え?」
「オ客様。記入頂イタオ名前ト口座ノ名義ガ違イマスネ。」
「ぇ…それは夫の名前です。私は妻です。」
「妻ノ『コリー様』。ゴ本人様ト確認デキルモノハゴザイマスカ?保険書ヤ免許書ハ?」
「な、何も持って来てないわ…。せ、生体認証は?」
「タイムトラベル中ハ生体認証ハ使エマセン。」

「 … … … 」「 … … … 」

どうしろと?!?!

「ソウナリマスト、『タイムマシン』ヲオワタシデキルノハ、『旦那様』ノミニナッテシマイマスネ。」
「じゃ、じゃあなんとか『この時間のコール』に頼んで生体認証して貰えば…。」
「原則トシテ、近シイ人物トノ接触ハ禁止サレテオリマス。」
「そ、そんな!じゃぁどうすれば良いのよ!?」
「オ客様。タイムマシンニハ、様々ナ注意事項ガアリマシテ、ソレヲ、ゴ了承頂イテゴ購入サレタトコチラハ認識シテオリマス。コレ以上ノ対応ハ、コチラデハデキカネマス。」
「む、無責任よそんなの!なんとかならないの?!」
「コチラデ責任ハ負イカネマス。」

…だ、駄目だ…この頭の硬いロボットじゃこれ以上何を訴えてもきっと同じ返事しか帰って来ない…。

「そんな…生体認証もできないんじゃ…私に出来る事なんて何も…。」
「オ客様ニデキルノハゴ注文ノミトナリマス。」

「………はい?」

…お金が使えないのに注文なんかしてどうすんのよ?!

…ん?でも待てよ。
「じゃあその非常用のタイムマシンを家に届けさせる事はできるのね?」
「ハイ。注文スルダケデシタラマダ料金・取引共ニマダ発生シテマセンノデ。チナミニ、ソノ場合デスト、非常用デハナク、正規ノタイムマシンヲゴ購入シテ頂ク形ニナリマスガヨロシイデスカ?」
「ぇ」
「非常用ハ商品デハアリマセンノデ、ゴ注文デキナイノデス。」
「…ッ!…分かったわよ!もうなんでも言いわよ!!」
「カシコマリマシタ。オ届ケハ明日ニナリマス。」

もう、こうなったら明日届くタイムマシンで帰るしかない!私はそう思ってタイムマシンを注文した後、タムマシン専門店に泊めて貰って1日を過ごした。

―――――――――

こうなったら、今朝届けられて夫が生体認証したタイムマシンを使わせて貰うしかない!私は朝早く起きて自分の家に向かった。ロボットに地図を見せて貰ったら、幸いに家から比較的近い店舗だったので、なんとか歩いて帰れる。
……ん?でも今朝タンムマシンが届いて、私もタイムマシンを注文したのなら、家には今朝2台タイムマシンが届けられる事になるのかしら?

…???

…まぁこの際、帰れれば何でも良いわ!兎角この後私はタイムマシンで過去に行っちゃうはずだから、リビングにあるであろうタイムマシンを使わせてもらって………ん?………リビング?

家に入るには生体認証がいる!

私はすっかり失念していた…。目当てのタイムマシンは家の中…。「この時間」のコールにも会っては行けない…。私はすっかり重くなった足取りで家に向かった。なんとかして家に入る手段があるはず。多分。きっと。…希望を捨てちゃいけない…よね…。

―――――――――そして今に至る。
「本当に良かった!私もう帰れないかとっ!お金も使えないし、どこかで野垂れ死ぬのかと…うぅ…。」
「た、大変だったね…良かった本当に会えて。」
「うん。」
「…というか、僕はてっきり、君は「過去のコリー」に会いに来たのかと思ったよ。」
「…え?どうして?確か別の時間の自分と会っちゃいけないんじゃ…。」
「トラブル防止の為に、自分に一定距離近付いたら『強制送還』されるってさっき聞いたから…。」

「 … … … 」「 … … … 」

「…そ…そ…そんな、こと、あのロボット一言もッ!言ってない!」
「まぁ、原則自分に会うのは禁止事項ですし、禁止事項を勧めるロボットはいないんじゃないですかねぇ…。」

横から配達員さんが言った言葉を聞いて、コリーはガクっと崩れ落ちた。

「まぁ、兎角、今は帰ろう。」
そう言った瞬間。

ガチャッ

「「「あ」」」

玄関が開く音と同時に、僕の視界は歪んだ。

―――――――――

…戻って来たんだろうか?そうだコリーは…

「コールッ!!!」「わっ」

コリーが背後から泣きながら抱きついてきた。

「よ、良かった!コール、先に、送還、され。私もすぐ、帰ってこれた、けど、帰って来たはずなのコールッ…いなくてっ!タイムマシンッも!無いし!…コールに何かあったのかと…ヒック!」
「…ぁ…あぁ。それぞれ転送した時間に送還されたのかな。僕が転送したのはコリーの3時間くらい後だったから。ラグがあったんだね。」
「よ、良かったー!もうヤダーッ!ワーンッ!!!」

一緒に送還されたはずの僕がいなくて動揺して、そこまで思い至らず3時間泣き通しだったのだろう。僕らはお互い無事に帰って来れた事を抱き合って確かめ合ったのだった。
とりあえずハッキリしているのは、タイムトラベルで二人が得たモノは『なんとも言い難い疲労感』だということだ…。一瞬、早退した直後に戻って、今頃溜まっているであろう仕事を片付けてしまえたら…と思ったが、仕事が溜まるより面倒な事が起こりそうな気がしたので、その考えはすぐに打ち消した。…タイムマシンはクーリングオフしようと思う。

そもそも、「タイムマシンを買った」のは「タイムマシンを使って過去に来たコリー」ということになる訳だが、それでは矛盾が生じる。結局、「何時の僕たち」が「最初のタイムマシン」を買ったのかは分からない。最初の僕たちは相談した末にタイムマシンを買ったのかもしれないし、それでも結局は、同じ様にコリーが誤ってタイムマシンを操作して、同じ様にタイムマシンを注文したのかもしれない。それとはまた違った経由かもしれない。が、僕たちがそれを知る術は無い。

後日談だか、そう遠くない未来の話。規制が厳しすぎる・使い方が分からないという大勢の客からのクレームや対応に追われた製作会社は、一般向けの製造販売は中止する事になる。コリーのような時間遭難者の問題も何件かあったようだった。タイムマシンは、一部のツアーや学校の修学旅行、歴史の専門家や科学者が使用するのみになるのであった。


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あとがき

ふわっとした世界観でツッコミ所しか無い気がしますが、私にはコレが色々限界です。SFという言葉が泣いてるね。おそらく2人は、この後めちゃくちゃ夫婦の営みをしたんだろうなぁと。はい。色々お粗末様でした。


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