脳科学的母乳育児考 | 助産師&針灸師で養蚕やって糸とか紡いでいる人と言えば岐阜県郡上に住んでる加藤祐里のことです

脳科学的母乳育児考

神経学者ポール・マクリーンは
脳の構造を

「爬虫類脳(トカゲ)」
「旧哺乳類(イヌ)」
「新哺乳類脳(人間)


の3種類に分けて論じています。
$「おっぱいあげるのやめちゃおうかな…」と思った時に読んでほしい。頑張らないで母乳育児ができるブログ-爬虫類脳

爬虫類脳は脳幹という脳の一番奥の
呼吸や体温の維持、
生命維持や種の保存をつかさどっていて生きていくために
必要な身体の働きを司っています。

旧哺乳類脳は大脳辺縁系をはじめとした
情動や快・不快の判断「感じるための脳」です。
種の保存(生殖行動)を司っています。

例えば、無意識のしぐさなどもそうですね。
営業マンが社長さん相手に
ペコペコお辞儀しながら小さくなって話して、

社長は腕組みして足を広げてふんぞりかえって座っている。

イヌの尻尾で機嫌が分かるように
私たちの身体も言葉がなくても
感情や本音を言い表しています。

新哺乳類脳は人間ならではの理性や言語が発達した
人間ならではの「考えるための脳」です。

ここで、母乳育児と脳の働きについて
考えてみましょう。

いくら、「母乳が良いことがよく分かっているし
完母だけでいきたい気持ちも満々」という人でも

母乳がでなくて…という方はたくさんみえます。

逆に「母乳なんかこだわりたくない」と思っていても
おっぱいがたくさん出てくる人がいます。

新哺乳類脳(人間脳)だけで、母乳はでてきません。

母乳はホルモンが影響していますから
爬虫類脳(トカゲ脳)の影響はいうまでもないとして

泣いている赤ちゃんを抱っこして
一日に何回もおっぱいをくわえさせるという行為は
旧哺乳類脳(イヌ脳)が司っています。

今のママたちは自分の子どもが人生で初めての
赤ちゃんのお世話をする方が多いので

まるでペットの飼い方を習うように
抱っこの仕方もおっぱいのあげ方も習いますから
新哺乳類(人間)脳」が必要な面もありますが

動物たちがそうであるように
人間にも生まれたてのわが子を
何も分からなくても、何もできなくても
ただ抱いて温めて寄り添って
それを幸せや安心と感じる脳が備わっています。

人間の母乳育児も本能にまかせて行うならば
旧哺乳類脳の機能を高めてやることが
重要なようです。

人間が爬虫類哺乳類
人類と順を追って進化したように

旧哺乳類脳を活性化させてやるためには

まずは爬虫類脳を安定させてやること。

安心できる環境で静かに休み、
副交感神経優位になるように
温かいものや消化のよい食べ物を食べて
心を落ち着かせる。

新哺乳類脳の部分ばかり使いすぎる
(刺激が多すぎると)

下部の脳である旧哺乳類爬虫類脳
働きが抑えられてしまいます。

以前もブログに書いたかもしれませんが

妊娠後期でいつ陣痛がきてもおかしくない時期に
お化粧ばっちし、ネイルごてごてで来院される初妊婦さんは

まだたいてい子宮口が硬いですから
当分、生まれません。

「10分毎に痛いんです~」って大騒ぎしてかけこんでくる初産婦さんも
つけまつげにチークが入っていたら

「まだまだ」です。

お化粧って新哺乳類脳が働いてないとできませんから。

そういうこと気にしていられるくらい余裕あるんだな~って判断します。

話し言葉やしぐさが
動物っぽくなってくると
「いよいよだね!」って言ってあげれます。

母乳育児も同じです。

いくら産後、頑張って授乳しなくてはいけないことが
分かっていても体が動かない、

赤ちゃんのお世話に自信が持てず、気持ちが落ち込む、

出産で心や体が傷ついて赤ちゃんのお世話をすすんで
行うことができない、など

現代ママならどこにでもあるマタニティブルーの症状ですが
旧哺乳類脳が抑制されていると
本脳の動きも発揮できていないのです。

テレビや、携帯、育児本をあれこれみたり
明るく煌々とした部屋や、たくさんの面会者、
イヤホンで音楽を聴き続けたり

目、耳からの情報はとくに新哺乳類脳
活発化させてしまいます。


昔、親戚のおばさんが酪農をしていて
番犬を何匹か飼っていました。

鎖につないで餌もあげていましたが
小さい私などは近づくことができないような
野生に近い犬も何匹かいました。

飼い主でさえ妊娠していたことに気づかないことがあって

ある日、気づいたら赤ちゃんが何匹か生まれていたのだけど

その次にみたら

なんと母犬が赤ちゃん犬を殺して(食べて)しまっていた
と聞いたことがあります。

このような異常行動は妊娠期や出産や子育てのスタートで
母犬が何らかのストレスや恐怖を感じた結果
みられるそうですが、

人間の女性にだって
殺しはしなくても

たくさんのストレスがかかれば
脳が上手く機能しなくなってしまうのでないでしょうか