2014年11月3日 入院翌日

誰かが僕の右手を握りながら、僕の名前を呼ぶ。
『Yさん、Yさーん。聞こえますか。ご自身のフルネーム言えますかー?』
ぼんやりする意識の中で問いかけに答える。

うっすら目を開けると、真っ白な天井とライト。手術室だ。
そうだ、盲腸の手術を受けたんだった。

意識がはっきりしてくると、全身が燃えるように熱くて驚いた。
体が熱い。焼けるように熱い。のどがカラカラに乾く。
右下腹部が特に熱い。そして痛い。
体が思うように動かない。鉛でも入っているのか。

あつい、いたい、のどがかわいた、水がほしい。
水がほしい。水がほしい。水がほしい。

看護師に嘆願するも、手術後は水が飲ませられないとのこと。
こんなにのどがかわいたこと、今までない。乾きすぎてつばも出ない。

わめきながらもストレッチャーに移され、病棟まで運ばれる。
少しの振動もおなかに響いて痛い。少しの段差でも、声がでる。

手術前までは、この手術で痛みから解放される。そう思っていた。
こんなにきついなら、事前に言っておいてほしかった…。

病室に運ばれ、ベッドに移る。
いちにのさん!でベッドにスライドするのも激痛。
いろんな管と心電図がテキパキとつながる。
合間にも水をくれと嘆願するもかなわず。

処置が済み、看護師からようやくうがいの許可が出る。
絶対飲まないことと念押しされ、コップが差し出される。

常温の水がこんなに冷たく感じられるとは。
のどの奥まで潤して、名残惜しく吐き出す。

時間を聞くと、夜中3時過ぎ。4時間近い手術だったようだ。
他にも何か聞いたと思うが、体にまだ残る麻酔に誘われ、意識を失った。

その後は、一時間~二時間おきに寝たり起きたり。

起きてる間は全身の熱とのどの渇きと痛みにうなされながら、時折看護師を呼んで
うがい用の水をもらう。目を開けて周囲を見渡すも視界がぼやけてぐるぐる回る。
一人部屋なのか二人部屋なのかもわからない。痛い、乾く、しんどい…そう思いながら、
また眠る。

体力がある程度戻ったら痛みや乾きで起きる、の繰り返し。
その間、医師や家族が来て何か話したり荷物を置いて行ってくれていたような気もするが、
正直覚えていない。

意識がようやく落ち着いてきたのが夕方ごろ。
熱や乾きは続いているが、痛みはようやくおさまってきた。
痛み止めがようやく効いた。

妻が置いて行った会社携帯を手に取り、上司・同僚・部下にそれぞれメールを打つ。
医師はたしか2週間程度の入院になるだろうと言っていたので、その旨をそれぞれに
伝える。
スマホでFBやニュースアプリなんかを見て気を紛らわそうとするが、熱と乾きと痛みで
集中できない。

結局何をすることなく、うんうんうなされながら一日を終えた。
早く退院したい。そればかりを考えながら。