企業が倒産した場合、その銘柄のオプションはどうなるのかという話ですが、先日の記事内でもちょろっと触れた通り、プットオプション購入者の『行使価格で売る権利』は、企業が倒産しようが何だろうが必ず保証され、逆にプットオプションを売却した人は、仮に取引が停止になろうと、購入者から行使価格での買取りをせねばいけません。

 


少し具体的に順番に触れてみます。

 

まず、企業が倒産手続きに入った場合でも、しばらくはその会社の株の取引は続けられることもあるようです(もちろん株価は劇的に下がると思いますが)。その場合、オプションも通常通り取引きされ続けます。

 

もし対象の株が取引停止状態になった場合は、その株に対してのオプションも、同じように取引が停止されることになります。

 

 

ほとんどの場合、取引が停止された後、その株はピンクシート(OTC=店頭取引、非上場株式が扱われる場)で取引きされ始めます。

 

こうなった場合、もちろん対象の株の名前も変わるので(倒産手続きで移行した場合、末尾にQがつく)、オプションの名前も変わるわけですが、その手続き自体は自動的に行われます。

 

しかしこの場合、OCCは基本的に、そのオプションに対して『closeしかしてはいけない』『新たなポジションをopenすることは禁止』とアナウンスするようです。

 

(※close=保有していたポジションをたたむこと。買いポジションを持っていたのであれば売り払うことを意味し、売りポジションを持っていたのであれば同じオプションを買い戻すことを意味する。
  もちろんopenはその逆で、持っていなかったオプションを新たに買ったり売ったりすることです。
  言うまでもなく、買いでも売りでもどちらでも、openもcloseもすることは可能であるので、ここでは買うこと(売ること)自体が禁止されているのではなく、ポジションをopenすることが禁止されている、ということに注意です。)

 

またこの場合でも、一般的に、権利行使に対しての制限はありません。

 


では、株が完全に抹消されてしまったらどうなるのか?裁判所の判断で、ピンクシートに移行などせず、即座に株の存在がキャンセルされることもあるようです。
もちろんピンクシート以降後、最終的に企業が完全に破綻して消滅し、株の存在がなくなることも大いにあり、その場合についても同様の話になります。

 

この場合は、株は完全に紙くずとなり株主は一切何も得られることがなく、同じようにコールオプションも完全に紙くずとなるため、コール購入者は購入代金分が丸損、コール売却者は売却代金分が丸儲けとなります。

 

そして気になるプットオプションの扱いですが、仮に株が消滅して受け渡し対象の現物がこの世から存在しなくなっても、権利を行使することで権利行使価格の100倍の現金を受け取ることができるとのことです。この際、株やその他、現金以外には一切何も受け渡しする必要がありません。


つまり、プット権利行使者は、本来であれば自分の保有する株、あるいは保有していないのであれば市場からその時の株価で株を購入してくる形で、オプションの枚数 x100株を権利行使者に渡すことで、その売却資金として行使価格 x100の現金を受け取れるわけですが、最早その株はこの世に存在しないので、株を渡す必要はなく、単純にお金だけを受け取れる、という非常にありがたい状況になっているということですね。
(もちろん逆にプット売却者は、何も見返りを受け取ることなく、単純に権利行使価格 x100の現金を支払わねばなりません。)

 


ということで、言うまでもないことではありますが、オプションは派生商品でありその倒産した会社が発行したものではないため、会社が倒産しようがどうなろうが、プットオプションを購入した人は行使価格 x100の資金を受け取ることが保証されており、プットオプションを売却した人はそれを支払う義務がある、という話でした。

 

 

倒産待った無しの企業であれば、プットオプションを買うのもいい選択肢かもしれませんね。

(もっとも、倒産手続きに入ったら大抵速やかに取引停止になりピンクシートに移行するので、新たにプットオプションを買うことはできないわけですが…。
  先見の明で、『こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ─────ッ!!』という邪悪な企業を見つけられたら、それはプット買いの大チャンスかもしれないですね!…もちろん、潰れるまでいかなくても、大きく下がりさえすればプット買いで十分利益を上げられるので、倒産どうこうはあまり関係無い話かもしれませんが…!)