(前回のあらすじ)
NYMXのカバードコール売りに挑戦するも、いつものように微妙に欲をかいた結果注文が約定せず、ガッカリ意気消沈のスライム。月1オプションの満期日は今週金曜日だ、このチャンスを逃す手はないかもしれないぞ、どうするスライム?!

 


---------------
スライム「そろそろ僕にも必殺技がほしいなと思いまして」

 

オプーナ「必殺技とはまた物々しい響きですナ。しかしその名前に反して、必殺技を完璧に喰らわせても、本当に相手を死に至らしめたケースというのは、とんと見た記憶がありませんがナ」

 

ス「そうかもしれませんが、でもカッコいいでしょう?コブチャさんのロウガグーグゥ拳とか、憧れるなぁ~。何に憧れるって、失笑を買うのが分かっているのにあえて技名を叫びながら技を繰り出すその鋼のメンタルに、ですけど」

 

オ「ホッホッ、まぁそう言ってやりますナ。いずれにせよ「必殺技」はバンダイによって商標出願されてしまったので(http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1603/15/news119.html)、ひょっとすると今後は使いにくくなるかもしれませんナァ」

 

ス「じゃあ急いで必殺技を考えなくっちゃ!僕の場合は何がいいだろう、slimeはイタリア語でlimoって出てくるな……そうだな、ここはカッコよく、リモ・フィナーレなんてどうかしら…」

 

オ「…何だか巨大な銃が出てきそうな感じですが、スライムさんに必要なのは敵をやっつける技ではなくて、株取引に使える技でしょう。違いますかナ?」

 

ス「失敬失敬、僕としたことが、ついつい名前のカッコよさにばかり気を取られて本質を見失う所でした。イケナイイケナイ、こんな隙だらけの考え方では、首がはね飛んでも文句は言えないや…」

 

オ「…ショートストラングル」

 

ス「え?」

 

オ「Short Strangle……OTMのcallとputを同数sell。相手は死ぬ」

 

ス「…な、なんてカッコいいんだ!その技、僕が使うんだい!!」

 

 

---------------
ショートストラングルとは…アウトオブザマネーのコールとプットを同数売ることで、コールまたはプット単独売りの時よりも、遥かに幅広い株価の変動に対して利益を得られるようにしよう、という戦略です。


オプション道場を含め、どのオプション解説サイトでも必ず説明されている戦略なので、具体的な理論・解説はそちらをご覧いただければと思います。

 

また、これと似たような戦略に、ショートストラドルというものもあります。こちらは、同じ行使価格のコールとプットを同数売る戦略であり、ショートストラングルと比較して、「株価が動かなければより利益が大きくなる」「しかし、利益を出せる安全圏の広さは、ショートストラングルに劣る」という特徴があります。
その設定上、ほぼ間違いなくどちらかのオプションの権利が行使されてしまうわけですが、小幅な株価変動を期待している場合には、強力な戦略になるようです。

---------------

 

 

オ「さて、スライムさんの勢いに釣られて紹介してみたものの、実はいくつかの理由で、スライムさんは現在ショートストラングルを使うことができません」

 

ス「な、なんだって…?!僕のレベルが足りないというのかい?」

 

オ「まぁそれもありますが、まず一つ最も重要な点として、現在スライムさんが注目しているNYMXのオプションには、非常に残念なことにアウトオブザマネーのプットオプションが存在しないのです」

 

ス「な、なんだってー!!…そうか、NYMXの現在価格は2.50未満だから、最低行使価格の2.50のプットですら、インザマネーになってしまっているということか!」

 

オ「ご説明ありがとうございます。したがって、アウトオブザマネー、それも割と安全圏に位置する行使価格のオプションを売るのが肝になるショートストラングルは、NYMXのオプションにおいては採用できないことになりますナ」

 

ス「なんてこったい!もうおしまいだー、しょせんモンスターは人間に刈りとられていいように利用されるしかないんだー、もうドルなんて捨ててやるんだー……ん?捨てるドル…ステルドル…ストラドル?!」

 

オ「…やや強引ですが、いい所に気付かれましたナ。そう、上でも説明がありましたが、オプション売りのもう一つ重要な戦略にショートストラドルというものもあります。これは、同じ行使価格のコールとプットを同数売る、というものですナ」

 

ス「なんだなんだ、むしろショートストラドルの方がカッコいい気がしてきたよ!『straddle: またぐ』の方が、『strangle: 抑えつける』よりも優しそうな感じがするから、僕は好きだな!よし、コレで行こう!!」

 

オ「ところがどっこい、なんですナ。今スライムさんの口座を確認した所、GLBSに力を使い過ぎたのか、スライムさんに残された買い付け余力では、残念ながらプットを2単位売るのが精一杯、という感じのようなんですナ。株価自体もしょっぱいNYMXにおいて、わずかこの程度の取引では、さすがのショートストラドルといえども思うような利益は出せないと言ってしまって差し支えないかもしれませんナ」

 

ス「ぐぬぬ…僕はなんて無力なモンスターなんだ…。しかしオ師匠、別に同数売らないといけないということはないのでしょう?同数売らないといきなり戦略が破綻して、突然ストラドル星人が襲ってきてボコボコにされたあげく所持金の半分を取り上げられてしてしまう…なんてことはないでしょう?」

 

オ「もちろんそんなことはないですナ。一般的に同数売ることが『ショートストラドル』として安定して利益を出しやすい戦略として知られているだけで、現在のスライムさんのようにそれができないならば、自分なりにアレンジすることは全く問題ないですナ」

 

ス「カッコよく『ショートストラドル・発動!』みたく決めてみたかったけど、コブチャさんの恥ずかしい姿を思い出したらむしろそれをせずに済んで良かったとすら思えてきましたよ。

   じゃあ僕は今回、前回同様コールの注文を多めに出すけど、同時にプットもわずかばかり売るという、ショートストラドルもどきに挑戦してみるよ。ちょうど、NYMXもこうして株価がくすぶっている内に買い増ししておきたかったから、プットの権利が行使されることになってもちょうどいいやね!」

 

-----
オ「では実際にスライムさんが注文を出す前に、オプション売り2大戦略のショートストラングル・ショートストラドルについておさらいしておきましょうかナ。例として、豊富なオプション品目をお持ちのTWTRさんに、例によって登場してもらいましょう」

 

 

オ「こちらがアウトオブザマネーの同数売り、すなわちショートストラングルの注文画面ですナ。他の証券会社については分かりませんが、スライムさんの利用している証券会社では注文時に大体の損益グラフが出てきて、大体どこまでの範囲であれば利益を生み出せるのかが分かるようになっています。

   便利な世の中ですナ。私の頃は、そろばんパチパチの方眼紙にグラフ描き描きのしたものです。
   ショートストラングルは、この富士山型の損益曲線が特徴ですナ」

 

 

オ「オーダーチケットにも、Strangleと表示されていますナ。なお、他の証券会社ではどうなのか分かりませんが、この証券会社では、一括注文する際、コールとプットを合算した価格での一括指定になっているようです。大量の注文を出したい場面では便利である反面、それぞれの注文で細かく指値を注文したいような場合は、やや困る場合もあるかもしれません。その場合は一括注文するのではなく、別々に注文すればよろしいかと思います」

 

 

 

オ「こちらはさらに同一行使価格の場合、すなわちショートストラドルの例です」

 

オ「ショートストラドルの損益グラフは、ご覧の通り頂上に平面のない、三角形型になります。行使価格が違うので単純には比較できませんが、ショートストラングルに比べて利益になる額は大きく、幅は狭いことが分かるかと思います」

 

-----
ス「さて早速注文してみるんだ!今回も僕はBidとAskの中間、ちょうど最新の取引値と同じ、コールを0.10、プットを0.30の価格で売り注文を出すんだ!」

 

オ「それで約定するといいんですがナ…」

 

 

ス「暴騰すると損失が大きくなるけど、暴落しても利益が保たれるという大分いびつなグラフだね。でも、プットの数がコールに比べてわずか1/50しかないから当然か。こんなグラフだけど、僕はNYMXのホルダーだし、プットは現状インザマネーだし、むしろ株価が上がっていってくれた方が嬉しいね!」

 

 

ス「この注文はストラングルでもストラドルでもないから"Custom Spread"って呼ばれるのか……って、えぇぇー!!何じゃこりゃ~!注文価格がマイナスになってるぅ~!!一体何が起きたっていうんだいこれは、わけがわからないよ…」

 

オ「NYMXのようにオプション取扱い品目が貧弱な銘柄で、今回のスライムさんのようにいびつな形の複合注文をすると、このような注文価格に負の値が出てしまう逆転現象が見られることもあるようですナ」

 

ス「この注文を出したら、オプションを売るのにお金を取られちゃうということ??こんなの絶対おかしいよ…」

 

オ「ホッホッ、そのまま注文してもお金を取られることにはならないのですが、いずれにせよこんないびつな形の注文を一括で出すのは特にメリットもないので、今回はコールとプットを分けて注文出した方がよさそうですナ」

 

ス「うーん、その方がよさそうだね。何が起きてるのかは気になるけど…」

 

オ「またいずれ機会があったら説明してあげますナ」

 

ス「(…オ師匠も実はよく分かっていないだけなんじゃ…。)じゃあそれぞれバラバラに注文だね。えいやっ、ぽちぃーっとな」

 

 

 

 

ス「注文中を示す青い三角形が表示されたね。正直、プットの注文はショートストラドルうんぬんの話を出すためだけに入れたようなもんだから、どちらかと言えばコールの注文が約定してくれれば嬉しいけど……何となく金曜日の時点でNYMXは普通にまだ2.50未満でぐずぐずしてる予感しかしないしね」

 

オ「それは誰にも分かりませんが、そろそろスライムさんは直感に頼るだけではなく、何らかの理論に基づいた予測ができるようになると良いと言えるかもしれませんナ。難しい統計学に基づいた理論とまではいかなくとも、せめてチャートを見て、簡単なテクニカル分析ぐらいできるようになれば、良い武器になるでしょう。もちろんそれだって完璧ではないですが、丸腰でいたずらに注文を繰り返すよりはずっと良いのではないかと思…」

 

ス「…あぁーっと、オ師匠がぶつぶつ独り言呟いてるうちに、約定してしまったー!約定したのは、期待に反してプットでしたぁー!」

 

 

 

ス「これで、金曜日にNYMXが2.50を超えない限り、僕はNYMXを200株買わなきゃいけないんだね。プット売却代金で0.30儲けてるから、実質2.20で買うことになるのか。…まぁ、以前は2.59で買ったわけだし、ナンピンする意味ではちょうどいい感じかな?たった200株だからほとんど意味のないナンピンだけどね!」

 

 

オ「…と言っているうちに、市場ではコールオプションが0.05で約定したようで、全てのBidが吸収されて、Bid Sizeは0になってしまったようですゾナ。スクリーンショットは撮り忘れてしまいましたが、これではスライムさんの0.10売りなど夢のまた夢の感じになってしまいましたナァ」

 

ス(ぐにゃあ~)(画像略)

 

オ「しかし、もう満期日まで大分時間がなくなってきたとはいえ、まだ数日ありますからナ。もしNYMXがこの先大きく上がれば、ひょっとしてコールを買いたい人もまた出てくるかもやしれませんから、希望を捨てるには早いかもしれませんナ。

   もっとも、仮にコールを売れなくても、スライムさんはコールを売る機会を逸したのみで、積極的に大きな損失を出してしまったわけではないのですから、そこまで絶望するほどのものでもありますまい。ポジティブな気分でいることも、相場では大切なことなんですナ」

 

ス「そうだね、僕は0.10の売りに自分で納得した上でチャレンジしたんだ、仮に失敗しても、0.05でいいから売っとけばよかったぁ~、なんて言わないよ!」

 

オ「それは良い心がけですナ。元々スライムさんは取引を楽しみたい、と言っていますからナ、こういう小さな失敗ともいえない失敗もまた、楽しむためのスパイスになってると思えば得られるものもあったと言えるのかもしれませんナ。
…と、そうこう言ってるうちに本日の市場は終了したようです。言うまでもなく、コールは約定しなかったため、本日はプットを2単位売ったというのがスライムさんの行った取引の全てですナ」

 

 

ス「『ショートストラドルもどきに挑戦』どころか、ただしょぼい枚数プットを売っただけだったね!看板に偽りありだけど、はてなマークがついてるから良しとしましょうか!」

 

オ「ホッホッ、恐らくそんなこと誰も気にしておらんと私は思いますがナ。下手に人々の顔色を窺うより、スライムさんの好きにやった方が結果として面白いんじゃなかろうかと、私は思いますナ。…私が言っても『自分で言うな』となってしまうのが悲しい所なんですがナ…!」

 

ス「明日も懲りずにコール売りに挑戦してみるよ!いつの間にかBid Sizeが(Bid 0.05だけど)また2枚になってるし、まだコールを売るチャンスが完全に潰えたわけではなさそうだ!

   もちろん、NYMXが大きく上がってくれれば一番いいんだけどねぇ~。ここはやっぱり、祈るしかない所だな…!」

 

 

 

なけなしの余力でプットを購入したスライム。すっかり影を潜めたGLBSは、本日一応プラスだったもののまだまだ底辺で腐っているレベルに過ぎないぞ!そしてストラングル・ストラドルの例としてしか登場しなかったTWTRも忘れちゃいけない存在だ…!


出来ることは限られているけれど、自分自身とみんなを楽しませるために、頑張れスライム、リモ・フィナーレ!!