そういえば、りんさんは病気で高校4年かかって卒業して2浪して大学入ったらしい。
まぁこれはもう少し後になって聞く話なんだけど。
だから病気に悩む私の気持ちを分かってくれるのかなー。
そんなわけで、階段下でりんさんとお話。
「過呼吸だって?大丈夫?」
「はい。今日はもう帰ります」
「ふーん…過呼吸もち?」
言おうかどうか迷ったけど、最終的に「・・パニック障害かもしれない、らしくて」と小さく答えた。
「あー…そっか。俺も昔似たようなやつだったから。分かるよ」
「(いや貴方の方がよっぽど重症だと思うんですけど…)ありがとうございます。お疲れ様でした」
そう言って頭を下げ、りんさんに背を向けて歩き始めた。
「氷雨さん」
「あっ、はい」
振りかえると、彼が手招きしている。
「はい、なんでしょう?」
近付いたら、無言で頭を撫でられた。
精神的にも身体的にも弱っていて、一人で帰るのも正直不安だったタイミングで優しくされたもんだから、気を抜けば涙が出そうで。
無言で頭を下げてその場を後にした。
彼に背を向けた瞬間に涙がボロボロこぼれて、周囲の目も気にせず泣きながら駅まで歩く。
歩いてるうちに色々と限界がきて、歩くことも座り込むこともできずに立ち尽くしてしまった。
どう頑張っても動けない。
ミーティングを終えたスタッフの皆がこちらに向かってくるのが分かったけど、運悪く誰も私に気が付かず、声も出せない私は1人道端で立ち尽くしたまま途方にくれていた。
そんな時。
「氷雨さん?」
うん。来るんだわあの人が(笑)。
なんだか一瞬で私の状況を察してくれていたらしく、無言でそばに来て手を握ってくれた。もう色んなもの全部が限界中の限界に達してまた泣いてしまった。まじでドン引きするレベル。←
ちょうど駅前の交差点の信号の下で人通り凄かったけど、そんなの気にもせず抱き締めてくれた。
とりあえず移動しよっか?って言われたから、肩を抱かれたまま交差点を渡って道の端っこに行く。
「大丈夫だよ。大丈夫。よく頑張ってる」
「貴女が頑張ってるのはみんな分かってる。少なくとも俺は分かってるよ」
「辛い時はね、誰かに頼っていいんだよ」
ぎゅってしながら、欲しかった言葉ばっかり、耳元で言ってくれた。
そんで、本格的に私の涙が止まらなくなったから少し歩いて座れるところまで移動して、自分のコートに入れてもっかいぎゅーーーーってしてくれて。そっからはほとんど何も言わずに、私が落ち着くまでひたすら抱きしめてくれた。
「ん、ありがと・・もうだいじょうぶ」
涙が止まると急に照れくさくなって身体を離す。
「大丈夫?何かあった?」
「・・特にやなこととかはない、けど・・でも、暗いのこわい・・!」
もちろんそれだけが涙の理由なわけなかったし、りんさんもそれは分かってくれてたんだろうけど、とりあえず
「そっか。よく頑張ったね」
って頭を撫でてくれた。
そんなんされたらまた泣くしさ私←
「ん、よしよし。どうしてほしい?さっきみたいにぎゅってする?」
そっからまた彼に抱きついて、泣いて、なぐさめられての無限ループ(爆)。
1時間くらいはそうしていただろうか。
ようやく私の涙がちゃんと止まると
「送ってくよ」
と言って手を取って、やっぱり無言で私の家まで送ってくれた。
(実際は申し訳なかったから何度か断ったんだけど)
「じゃ・・本当にありがとうございました。こんな遅くまでごめんなさい」
「全然いいよ。大丈夫?」
「はい。気をつけて帰ってくださいね」
「うん」
どちらからともなく、抱き合う。
身体を離すと彼の手が私の頬に伸びてきて、ふにふにってされた。
「じゃあね」
勿論キスなんかするわけがなく。
彼はそのまま帰って行った。