吹奏楽コンクール九州大会(in福岡サンパレス)を聴いて来ました。
以下、感想です。前半(午前)の部から。



前半の部



1. 鹿児島 大島 Ⅳ/森の贈り物(酒井格) 金賞


指揮者の先生は松陽高校時代に何度も九州大会を経験しているベテラン先生ですね。
しかし、生徒達は九州大会はもちろんサンパレスもおそらく初めて。
課題曲序盤は固さが見え隠れしていましたが、艶のあるサウンドは
しっかり出せていて素晴らしかったです。
朝一でコンディション調整も大変だったと思いますがそのハンデを感じさせない!!
自由曲はこれまた自分達のサウンドに合った選曲。
コルネットのソロが素晴らしく、それと溶け合う木管もgood。
爽やかな演奏で今日の一日が始まりました。


私の個人的評価:金-




2. 熊本 熊本北 Ⅳ/世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」(C.オルフ/J.クランス) 銀賞


課題曲冒頭2拍目の裏のティンパニの打点が、この曲の最初で最大の鬼門ですね。
そこが嵌まらないと如何しても直後の木管の上昇系連符の登場感が「演出」出来ないのです・・・。
全体を通して、中音域セクションは常に木管高音を意識したトーンを出して欲しいですね。
それだけでも大分聴き手の印象は変わってくると思います。
そして自由曲ですが、取り上げる以上はもっと楽曲への理解を上げて欲しいと願います。
少し棒吹きの所がチラホラ見られたのが残念。「技術不足」よりも「イメージ不足」の方が気になります。


私の個人的評価:銅




3. 福岡 城東 Ⅳ/交響詩「ローマの祭」(O.レスピーギ/建部知弘) 金賞


非常に個々の技量が高い。序盤から木管の音程がここまで安定しているのは普通に凄いです!!
Tubaの安定感は県大会よりさらに良くなっていましたが、メロディラインが少し
テンポ面のセーフティーを意識し過ぎたのか、前に前にという推進感が今一つという印象。
県大会ではメロディの受け渡しも含め素晴らしかったのですが・・・。少し迷いが見えました。
そして今大会4団体も取り上げたローマの祭。
チルチェンセスでの極端なフェルマータで流れが一回一回止まるのがちょっと抵抗がありました。
バンダの3人は非常に良く頑張ってました(拍手)
主顕祭はホルンを筆頭に個々の技術の高さは随所に感じられましたが、
打楽器の音量過多によってバランスにやや難を感じる場面が多かったです。
全体的に、県大会ではほとんど気にならなかったネガティブ要素が沢山表面化したのが
非常に残念です。一生懸命さが伝わるだけに、その意思が効果的に伝わって来ない
解釈に少し複雑な心境となりました。個々が上手なだけに・・・。


私の個人的評価:金




4. 宮崎 宮崎学園 Ⅱ/科戸の鵲巣-吹奏楽のための祝典序曲(中橋愛生) 銀賞


良い出だしでマーチがスタート。
奇を衒わず、しっかりと歌心があって良かったです。もう少し発音の変化があると
さらに説得力が増すと思います。
さて、自由曲。私が以前聴いた2年前の同校よりも非常にスキルアップしてますね。
ただ、基本的に12分間ずっと指揮が「もっさり」しており、
じっくり歌う所は良いのですがこの曲の肝であるスピーディーな場面で
前に前に進んでいかないのが少し違和感がありました。
もう少し生徒達にテンポが走らない程度の積極性ならぬ「前進性」を持たせられたらなと思いました。


私の個人的評価:銀




5. 福岡 修猷館 Ⅳ/ハリソンの夢(P.グラハム) 金賞


個々のパートがはっきり聴こえるスカッとしたマーチですね。
サックスソロの部分は少し焦点が定まらず流れてしまいましたが、
直後の金管のコラールファンファーレは非常にバランスも良く見事でした。
終盤のff盛り上がりまでの持って生き方も自然でgood。
指揮者によってしっかりとコントロールされていてスマートな演奏でした。
自由曲はウッドブロックが常に前面に聴こえてくるバランスが少々一本調子でしたが、
テンポが遅めの部分のクリアーな歌いこみは非常に素晴らしくドラマティックでした。
超絶技巧主体のこういう曲では無く、A.リード等の曲で聴いてみたいバンドですね。


私の個人的評価:金-




6. 長崎 西陵 Ⅳ/ア・ウィークエンド・イン・ニューヨーク(P.スパーク) 銀賞


コンパクトな響きと言えなくもないですが、まだ楽器への息の吹き込みが足りておらず、
音が非常に細い印象。旋律をしっかり聴かせる統一感はしっかりと感じられました。
ドラムセット大活躍の曲ですが、常に「冷静」をモットーとしてるのか、
淡々と譜面の音を並べていました。そういう演奏自体は嫌いじゃないですし、
丁寧に正確に吹く意識は常に大切です。がしかし、
スパークの曲であればもっと絶対的な熱量がより大事かも知れません。


私の個人的評価:銀-




7. 福岡 筑紫台 Ⅳ/バレエ音楽「アパラチアの春」(A.コープランド/森田一浩) 銀賞


九州大会で30人少々の演奏が聴けるのは久しぶりではないでしょうか。
小編成の利点を活かした端正な演奏。ユーフォニウムのサウンドが素晴らしく、
中音域がしっかり安定しているため音が痩せないのが良かったです。
自由曲はクラリネットの音色が優雅で美しく、思わず引き込まれました。
しっかりとしたアンサンブルが続くので聴いていて安心感があり尚且つ
一つの楽曲としての完成度も高かったと思います。


私の個人的評価:金




8. 大分 大分舞鶴 Ⅲ/バレエ音楽「ガイーヌ」(A.ハチャトゥリャン/林紀人) 銀賞


基本技術や丁寧さは他校より1ランク以上落ちますが、
指揮者のテンションと共に華やかに楽しい演奏を演出していました。
剣の舞はある程度ビート感が取れていただけに、課題曲も
もう少しリズムを感じる余裕が欲しかったですね。
シングルリードの楽器はもっと発音をはっきり、そして繊細に!!


私の個人的評価:銅




9. 福岡 城南 Ⅳ/交響的舞曲第3楽章(S.ラフマニノフ/佐藤正人) 金賞


タイトル「汐風」の雰囲気が一番出ていたのは個人的にはこの学校です。
リズム隊も大変歯切れがよく、音圧に頼らずに躍動感が出ていた見事なマーチ!!
自由曲はまさに「情熱的」な秀演。弱奏部の密やかさもあり、
クライマックスのサウンドは素直に感動しました。
午前の部の中では、私的にはナンバーワンの演奏でした。


私の個人的評価:金+




10. 長崎 長崎女子商業 Ⅱ/「GR」シンフォニック・セレクション(天野正道) 銀賞


個々の技術は決して高くは無いですが、技術内で出来る事を最大限やりきった
演奏だったように感じます。非常に集中していましたね。
もう少しハーモニーに対する拘りを持って、合わせる所はしっかり歩み寄りたいですね。
今回の経験と自信が今後に活きそうなバンドです。


私の個人的評価:銅




11. 熊本 玉名女子 Ⅳ/交響詩「ローマの祭」チルチェンセス、主顕祭(O.レスピーギ/建部知弘) 金賞


例年通り、しっかり鳴ります。対旋律もハーモニーもリズムも前に前に来ますね。
この長所は持ちつつ、しっかりと色んな要素が埋もれず聴かせるバランスの「妙」も
今後追及して欲しいと願います。
自由曲のローマ。確かにレスピーギは金管大活躍の曲ではありますが、
木管の色彩豊かな情景・映像感が随所に見られる場面転換豊かな楽曲。
全てが直球ストレート一色で進行していくのがやや残念でした。
城東と同じく不自然なテンポ設定で流れがせき止められるのも残念です。
ローマはそういう解釈が流行っているのでしょうか?・・・。
それでも、トランペット・ホルンの技術の高さ・音の伸びは超高校級!!で
しっかりと印象に残っております。


私の個人的評価:銀+




12. 佐賀 佐賀学園 Ⅳ/バレエ音楽「中国の不思議な役人」(B.バルトーク/加養浩幸) 金賞


課題曲も自由曲も指揮者の先生の拘りが良い意味で濃く伝わって来ました。
特に自由曲は理論整然と作られていて、バルトークの極め細やかさが
ちゃんと演奏に表れていました。
指導者に恵まれている羨ましいバンドです。もっと生徒から積極性が出て欲しいですね。


私の個人的評価:銀+




13. 沖縄 コザ Ⅲ/交響詩「ローマの祭」(O.レスピーギ/森田一浩) 金賞


冒頭のTuba・Tbは実にお見事!!というハーモニーでした。
まずここでしっかり「うちなー」感が出ていました。
それだけに、続く木管高音のピッチが揃わなかったのが少々惜しかった・・・。
非常にオーケストレーションが(ある意味)難解な曲ですが、
スムーズな流れで好感が持てました。
自由曲のローマは十月祭辺りからスタート。
主顕祭は(城東・玉名の)建部編曲と違い、森田編曲なためサウンドは薄めになりますが、
各声部が鮮明に聴こえ、やや上品過ぎる位の華やかなローマでした。
終盤の畳み掛けで流れが止まらずに進んでいくのは非常に好印象。
スッキリとした一体感を感じました。


私の個人的評価:金




前半の部 全体の印象


年々レベルアップしている九州大会ですが、今年も好演が続きました。
生徒一人一人の技術の上達ぶりにこちらも嬉しくなりますし、
しっかり自分達の「思い」・「個性」が伝わって来ました。
若干「作為的な個性」に流される傾向が幾つかの学校に見受けられたので、
音楽の自然流れをもっと意識して欲しいと思いました。