2015-05-27 07:21:00

【自主避難者から住まいを奪うな】「自立」強調する復興庁、避難者からの〝直訴〟にも沈黙貫く内堀知事

テーマ:被曝

「自主避難者から住まいを奪うな」という運動が広がっている。26日には、都内で避難者自ら福島県知事に〝直訴〟。福島や大阪でも自主避難者への住宅無償提供を打ち切らないよう求める要請行動が展開された。「被災者の自立」を前面に押し出し予算を縮小させたい国。支援継続に消極的な福島県知事。真夏日の永田町で、避難者は言った。「汚染が解消されていない以上、避難に対する支援を求めるのは正当な権利だ」



【積極さ感じられない内堀知事】

 「今日は復興事業に関する会議なので、そういう話は出ません」

 都内のホテルで開かれた18回目の復興推進委員会。終了後、記者団の取材に応じた内堀雅雄福島県知事は、表情を変えることなく私の質問に淡々と答えた。「そういう話」とは、全国の自主避難者たちが求めている住宅の無償提供継続問題だ。

 たしかに、議事次第には「平成28年度以降の復興事業のあり方について」とある。だが復興庁の配布した分厚い資料には「自立」の二文字が随所に見られ、<避難指示解除→帰還促進→支援打ち切り>という構図が透けて見える。復興推進会議には竹下亘復興大臣や小泉進次郎復興大臣政務官も出席した。福島県の用意した資料では、原発事故からの復旧・復興事業に関して国の財政負担を続けるよう盛んに求めているだけに、会議の場で自主避難者への住宅無償提供継続を持ち出すことは何らおかしなことではない。だが、国、福島県双方の資料のどこにも「自主避難者」の支援に関連する項目は無かった。

 「知事のお考えは固まっているのでしょうか」と質問を続ける私の顔を、もはや内堀知事は見なかった。ホテルを後にする知事を、私は追いかけた。「住宅の無償提供は打ち切りということでよろしいのでしょうか」、「お答えいただけませんか」…。背後から声をかけ続けたが、内堀知事は歩みを止めず、一度も振り返ることなくエレベーターに乗り込んだ。予定調和の質問にしか答えない、内堀知事らしい対応だった。

 多くの自主避難者たちが強い危機感を抱いて注視している以上、ノーコメントを貫くことは当事者の言葉にも耳を傾けていないことにもなる。事実、会場に駆け付けた避難者の〝直訴〟に、内堀知事は歩みを止めることなく黙ってうなずいただけだったという。「無視はされなかったけどイエスでもノーでもなかった」。必死に頭を下げた男性は振り返った。「もう結論は出ているのかな…」。
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(上)復興推進委員会の終了後、記者団の「ぶら下が

取材」に応じた内堀知事。住宅支援問題について

沈黙を貫いた

(下)復興庁の資料には、至る所に「自立」の二文字

が登場する=東京都千代田区


【「避難を選択する権利認めて」】

 内堀知事への〝直訴〟から4時間後、坂本建さん(47)=富岡町=は内閣府の面談室にいた。「避難・支援ネットかながわ」の代表として、安倍晋三首相宛ての要求書を署名とともに提出するためだった。「子ども・被災者支援法」の理念に基づいた要求は7項目だが、自主避難者への住宅無償提供継続を一番目に据えた。住まいが不安定では、原発被害者の自立はおろか日々の生活さえままならないからだ。
 「国が自主避難者の住宅供与を2016年度末に打ち切ることを検討していることに対し、現時点で期限を決定しないことを強く求めます」

 「福島県の放射能汚染は放射線管理区域と同等なのが現状です」

 「避難者を生活困窮に追い込むことのないよう重ねて求めます」

 慣れない国への要請行動。緊張で手や声が震える。対応した内閣府の男性職員は、直立不動のまま聞き、首相官邸だけでなく経産省や文科省、復興庁への写しを届けることを約束した。

 要求書の朗読が終わっても、坂本さんは政府による避難指示の有無に関わらず、等しく避難の権利を認めるよう訴えた。「ここで打ち切られたら福島に帰るしか選択肢が無くなってしまいます」。特に母子避難の場合、幼い子どもを抱えての労働では多くの収入を得るのは難しい。子どもを預けて働くには保育料負担が重くのしかかる。そもそも、福島県外に逃げなければならないのは原発事故によって汚染されてしまったからだ─。汗を拭いながら坂本さんは言葉を続けた。

 「土壌を測定してください。避難指示が出ている区域に限らず、福島はどこも放射線管理区域に相当する汚染があるのが分かるはずです。今、国が進めているのは福島県民に被曝のリスクを強いる復興のプランニングですよ。何も難しいことを言っているとは思いません。正当な権利を主張しているだけです。避難を選択できる権利を与えてくれたって良いじゃないですか」

 職員は時折メモを取りながら、坂本さんの訴えを聴いていた。同じ頃、福島県庁や福島県大阪事務所でも、自主避難者や支援者らが住宅の無償提供を打ち切らないよう求めた。被害者が自ら声をあげ続けなければ切り捨てられる。だが、彼らが放射性物質を撒き散らしたわけではない。

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(上)福島県富岡町から横浜市への避難生活が続く

坂本さん。「住宅の長期間無償提供」などを求める

安倍晋三首相宛ての要求書を内閣府に提出した

(下)復興推進会議の開かれたホテルの入り口では、

「福島老朽原発を考える会」(フクロウの会)代表の

阪上武さんも、内堀知事らへの要請行動を行った


【避難指示解除=「自主避難者」】

 富岡町から神奈川県横浜市に避難中の坂本さん。「福島に残っている子どもたちを守りたいんです。彼らが被曝回避をするために福島県外へ逃げる道を閉ざしてはいけないんです」と語る。「県外にいる僕らが声をあげないと、福島に残った人々は声をあげにくくなりと考え、神奈川県に避難した福島県人がつながれる活動を続けてきました」。残念ながら、坂本さんの悪い予感は的中してしまった。

 今でこそ富岡町には政府の避難指示が出されているが、坂本さんは自主避難者たちの気持ちが良く分かる。未曽有の大地震が起きた翌日には、政府や自治体の指示に関わらず被曝を避けるための行動を起こしていたからだ。

 「3月11日の夜には、原発で働く知人から『冷却水が入らない』という話が入っていました。若い頃、原発関連の本を読んで関心があったから、万が一の時にはどのように動けばいいかイメージは出来ていました。日付が12日から13日に変わる頃です。富岡町を離れたのは」

 川崎や横須賀の親類宅を経て、横浜市内のUR賃貸住宅に落ち着いた。しかし原発事故から4年が経ち、国は避難指示を解除して避難者を福島に戻そうとする動きを加速させている。「避難指示が解除されても子どもを連れて富岡に戻るつもりはありません。避難を続ければ、避難指示が解除された瞬間に僕らも『自主避難者』になるわけです。今回の問題は他人事ではないんです」
 28日にも福島県庁を訪れ、改めて住宅の無償提供継続を訴える。



(了)

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