攻撃受ける反原発運動。千葉麗子さんは愛車破壊~新宿で「反原発へのいやがらせの歴史展part2」 | 民の声新聞

攻撃受ける反原発運動。千葉麗子さんは愛車破壊~新宿で「反原発へのいやがらせの歴史展part2」

反原発運動に携わる人々が受けてきた嫌がらせを展示する「反原発へのいやがらせ展Part2」が18日、東京・新宿中央公園内にある区民ギャラリー1階で始まった。昨年8月に続いて2回目。これまで、全国の原発反対運動の関係者が受けてきた嫌がらせが紹介されているほか、主催した海渡雄一弁護士や千葉麗子さんによるトークも行われた。千葉さんは、自身が受けた愛車破壊を初めて告白したうえで「脅しには屈しない」と語った。19日まで。入場無料。


【愛車にスプレーで「原発推進」】

 「事件が起きたのは昨年、7月2日の朝でした」

 まるで、封印を解くかのような〝告白〟だった。

 学校へ送り出したはずの息子が息を切らせて帰ってきた。お弁当でも忘れたのかと振り返った千葉さんは、息子の言葉で事態を知る。「母ちゃん、やられてる!」。

 駐車場に出ると、愛車の窓ガラスは粉々に割られ、タイヤはパンク。ボンネットには黒い油性スプレーで「原発推進」と殴り書きされていた。

 福島原発事故以降、抗議集会などでマイクを握ることの多かった千葉さんは、いつしか反原発運動のシンボル的な存在になっていた。ツイッターなどでもストレートに「脱原発」「脱被曝」を訴えてきたことから、ありとあらゆる誹謗中傷を受けてきたという。

 「それはそれは『千葉麗子死ね』など、いろいろ言われてきました。でも、こういう性格だし、いくら汚い言葉で罵っても響かないと考えたのではないでしょうか」

 時折、笑みを浮かべながら明るく話したが、当時の話になると涙があふれた。「多くの方に支えていただき、今でこそ笑って話せるようになりましたが、当時は怖かった。一番心配したのは、息子が殺されるんじゃないかということです。私はいい。でも、息子はきちんと守りたかった」。愛車を破壊されて数日後、今度はツイッターに「お前、毎週金曜日は18時から20時までは官邸前に行っているんだろう。その間、お前の息子1人だな、イヒヒヒ」と書き込まれたのだ。「母親の私の一番弱いところを陰湿に突いてくるやり口は許せない」と振り返る。

 現在も警視庁による捜査は続いているが、犯人逮捕には至っていない。眠れぬ夜を幾晩、明かしただろう。車を目にしただけで吐き気に見舞われることもあった。それでも、事件を公にし、聴衆の前で話す決意をしたのには「同じような被害に遭っている人がいるんじゃないか」という思いがあったからだという。

 「ここまでされて、それでもなお、皆さんは声をあげられますか?今回は、負けちゃいけないんだというメッセージを込めて発表しました。絶対に負けないぞと。私は脅しには屈しません」
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昨年夏、愛車を破壊される嫌がらせを受けた千葉

麗子さん(中央)。ボンネットにはスプレーで「原発

推進」と殴り書きがされていた。「脅しには絶対に

屈しません」と力強く語った

=新宿区立区民ギャラリー


【運動を揶揄した「いろはカルタ」も】

 会場では、海渡弁護士が「特筆すべき面白さがある」と語る、反原発活動を揶揄したいろはカルタも紹介されている。1993年夏に原子力資料情報室に贈られてきたというカルタは「いつまでもチェルノブイリじゃ人は飽き」「運動が取材されればただ嬉し」「生い立ちになぜかわけあり反原発」「誇張して怖がらせるのが僕らの手」などと、反原発運動を徹底的にこき下ろしている。「ものすごい時間と労力、費用がかかっているはずだ」と海渡弁護士。「言葉も巧みに使われており素人仕事ではないだろう。広告代理店に勤めているような人が、アルバイトで作ったのではないか。では費用は誰が負担したか。お金のある電力会社に違いない」と分析した。

 「福島原発告訴団」などが、昨年9月以降に受けたサイバー攻撃も紹介。同告訴団には一晩で14万通もの「メール爆弾」が送り付けられ、活動に支障が出た。その後、全国で30を超す市民団体が同様の被害に遭っていることをスクープした朝日新聞社会部の須藤龍也記者は、トークで「日本で初めて市民団体が標的となったサイバー攻撃だ。1分間に最大で300通ものメールを送りつけるなど執拗な攻撃の意思が感じられる。『Tor(トーワ)システム』を使って発信元を短時間でドイツ・フランクフルトやアメリカ・ボストンに変えるなど、用意周到に綿密に準備されたものだろう」と話し、市民団体側の自衛を促した。
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「原子力資料情報室」を設立した故・高木仁三郎

さんも嫌がらせを受けた1人。存命中に死亡をで

っち上げられたこともあった

【「ひるまず発言続けよう」と主催者】

 「嫌がらせをする連中の狙いは、 反原発運動の内部をいがみ合わせて運動させなくすることです。実態を知ることによって、こういうものに動じないという我々の中での合意を作っていく必要があります」と主催した海渡弁護士。「萎縮してはいけません。ひるんではいけません。むしろ大らかに、どんどん発言していきましょう」と来場者に呼びかけた。

 日本は民主主義社会だと、誰もが小学校で習う。日本には言論の自由、思想の自由があると。だが、原発政策に異を唱える人々は、常に嫌がらせの対象となってきた。運動に積極的に参加する人たちが、付きまとわれたり隠し撮りをされたり、自宅の電話番号を流布されたり、宅配の食品を大量注文されたりしてきた歴史が、会場には詰まっている。

 さらに現代はネット社会。須藤記者も「サイバー攻撃は、技術さえあればかつての嫌がらせよりお金も手間もかからない。サイバー攻撃そのものがビジネスとなっている」と警鐘を鳴らす。
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「福島原発告訴団」は昨年9月以降、一晩に14万

通ものメールを送りつけられるサイバー攻撃を受

けた

(了)