「子どもを第一に」と品川市長が所信表明。早急に被曝回避策を打ち出せ~郡山市 | 民の声新聞

「子どもを第一に」と品川市長が所信表明。早急に被曝回避策を打ち出せ~郡山市

品川市政が船出した。郡山市の品川万里市長は13日、市議会本会議で所信表明演説をし、「郡山市はいまだ異常事態」として「子どもたちの健康を第一に考える」と今後の施政方針を語った。全体的に新鮮味に欠けた内容だったが「議会対策」とも。除染だけでなく保養や放射線量の〝見える化〟など、早急に取り組むべき施策を今後、打ち出していくという。ぜひ打ち上げ花火に終わらず、子どもたちの被曝回避に取り組んでほしい



【「郡山市はいまだ、異常事態」と明言】

新鮮味はなかった。

原発事故以来、郡山市政を担ってきた原正夫前市長と同様、「除染の拡充」「観光客の誘致」「子育て世代が安心して定住できる環境づくり」を次々と表明した。

「子どもを第一に、中心に考えて姿勢を進めて行く」「子どもたちの健康を第一に考える」と強調するが、子どもたちの避難や保養に関する言及は無し。「効果的な除染を進める」「小中学校の外周部の除染を行う」「通学路を優先に道路除染を進めていく」と語るにとどまった。日赤から立位式の測定器を寄贈されたとして「4歳未満の内部被曝検査も近く始める」とも話した。「子どもたちの体力や運動能力が低下している」としたうえで「市内の民間プールを子どもたちに提供する」と語った。被曝対策を進めるため「原子力災害対策直轄室」を外部被曝担当、内部被曝担当に再編したことも強調した。

唯一、光った言葉が次の言葉だ。

「郡山市はいまだ、異常事態だ」

福島第一原発事故から2年3カ月が経過した今なお、郡山市内には深刻な汚染が存在し、子どもたちの被曝の危険性があることを行政の長として認めた形だ。前任の原正夫市政では「もはや危険ではない」と安全・安心啓発に尽力していただけに、公の場で現在の郡山市が「異常事態」と明言したことは評価できる。子どもたちの被曝回避は、汚染や被曝の存在を認めなければ始まらない。
民の声新聞-所信表明
当選後、最初の市議会に臨んだ品川まさと郡山

市長。所信表明演説は新鮮味を欠いたが唯一、

光ったのが「郡山市はいまだ異常事態」。汚染の

存在を認めて子どもたちの被曝回避に取り組ん

でほしい


【「保養休暇を認める方針を」と女性市議】

「子どもを一番に、と言ってくれたのは良かった。女性職員を積極的に登用するなど『女性と子どもが輝く街づくり』を示したのはいいと思う」。閉会後、女性市議の一人はそう振り返った。「現状を『異常事態』と言い切ったのも評価したい。でも、あくまで施策の大枠の大枠しか語っていない。あまり今までと変わらないようにも思える。せめて一つだけでも、品川さんらしさを示すような、目玉となるような施策を具体的に語って欲しかった」。

品川市長は、除染を進めて「子育て世代が安心して定住できる環境を整える」と強調した。しかし、この女性市議は「年間被曝線量が1mSVを超えるような空間線量になったら保養休暇を認めるような方針を打ち出さないと、本当に安心しては暮らせない」と反論する。「今の郡山で、年1mSV以内の被曝線量は現実的には無理だ。だからこそ、避難や保養に関する具体的な施策が必要なのです」。

この女性市議は現在、「郡山市民の初期被曝が無きものにされている」として、当時の実際の放射線量を改めて調べている。「その後の低減した放射線量でばかり影響が語られるが、あの時、本当はどれほど被曝したのか。『ただちに影響ない』などと喧伝される中で、本当に子どもたちの身体に影響がない程度の被曝だったのか。はっきりさせたいのです」。来週の一般質問では、その点も含めて品川市長の考えを質すという。
民の声新聞-分庁舎
郡山市役所前のバス通りは依然として0.6μSV超。

市内に点在する危険の〝見える化〟と除染を早急

に行う必要がある=郡山市朝日


【まずは高線量の〝見える化〟から】

品川市長は、最後まで子どもたちの避難や保養には触れなかった。なぜか。閉会後、傍聴に訪れた支持者らを見送る品川市長に直接、真意を質した。
「今日は補正予算の提案理由がメインの本会議。それに、議会にはいろいろな考え方の議員がいる。『まったく危険でない。大丈夫』という人もいるのだから、いきなりその話を切り出すと対立してしまってやりたいことができなくなってしまう。ちゃんと考えています。これから少しずつ出して行きますよ」

先日、品川市長は市民に同行し、開成山公園の放射線量を測定して歩いた。大規模な除染が行われたにもかかわらず、依然として1.0μSVを超すホットスポットが点在する実態を目の当たりにした。今すぐ立ち入り禁止にするべきという私の言葉には賛同しなかったが、「開成山は確かに高かった。まずは線量の高さを明示して、危険の存在を子どもたちにも分かるようにしたい」と〝見える化〟は約束した。「子どもたちが近づかないようにすることは、すぐにできる」。

また、市内でも放射線量の低い湖南地区に関しても「移動教室どころではない規模の取り組みを考えている。市教委など関連部署には検討を始めさせている」とも。避難の動きが頭打ちになっている中で、子どもたちが等しく参加できる行政の保養プログラムこど必要だ。

所信表明のなかで、「市民の声が速やかに市政に反映されるよう取り組む」とスピードアップも明言した品川市長。ぜひ、子どもたちの被曝回避も早急に取り組んでほしい。
民の声新聞-湖南行政センター
郡山市内でも放射線量の低い湖南地区。湖南行

政センターのモニタリングポストは約0.06μSV。

子どもたちの保養や移動教室に活用するべきだ

(2013.05.07撮影)


(了)