母たちの願いを根性論で一蹴した郡山市議会~エアコン設置はこうして見送られた | 民の声新聞

母たちの願いを根性論で一蹴した郡山市議会~エアコン設置はこうして見送られた

「賛成少数であります。よって、請願第24号につきましては、不採択とすべきものと決しました」─。今年6月、郡山市議会に市民から提出された「小学校そして中学校へのエアコン設置を求める請願書」は、反対多数で採択されなかった。「窓を開けても被曝しない」、果ては「我慢させるのも教育」…。屋外プールと並び、教室へのエアコン設置は子どもたちの被曝回避に大きな課題だった今年の夏。自ら扇風機を購入して学校に寄贈した母親もいる一方で、郡山市教委の幹部は言った。「まあ、放射能は心の問題ですからね」。被曝回避に最大限の努力をしない市議会のやり取りを、全文掲載する


【「窓を開けても放射線量に大差はない」と不採択意見】

佐藤徹哉委員

「3月定例会でも小中学校のエアコン設置を求める請願書が提出されまして、常任委員会では採択するべきではないという結果でした。
 以前、採択されなかったにもかかわらず、今回同趣旨の請願が2件提出されてきているため、現場を確認しようと思い聞き取りを行ってきました。
 中心市街地の4校、いずれも300人以上の大規模校で、先日行われましたプール除染のモデル校になった6校のうちの4校です。現在、いずれの学校も暑くなればすべての戸をあけて授業を行っております。このことに対して、保護者からの苦情や申し立ての件数はゼロです。
 とある学校は、けさの校庭のモニタリングポストの数値は0.23マイクロシーベルト、それに対し、戸を開放した時の教室内の空間放射線量の数値は0.11マイクロシーベルト・パー・アワーであり、校庭の0.23マイクロシーベルトの半分の数値です。こちらの学校は去年の春先から戸を閉めた状態とあけた状態でそれぞれ測定することをずっとやっております。それで、戸を閉めているときとあけているときの数値の差も調べたんですが、ことしに入って、直近1カ月間、戸を閉めている状態と、戸をあけている状態との差が最大で0.02マイクロシーベルト・パー・アワーです。つまり、戸をあけても閉めても大差はないという状況です。これは、郡山市、PTA、地域の方々、学校の先生が行っている除染活動の結果であり、評価すべきと思います。
 また、学校はこういった結果を教育委員会に報告しており、このデータはすべて学校のホームページ及びPTA会報などで保護者に周知されており、現在保護者からエアコン設置を求めるという話は1件も上がってきていないそうです。
 また、各校のPTA会長、それから校長先生とお話をさせていただきました。とあるPTA会長は、夏は暑くて冬は寒いという当たり前のことを子どもに教えてあげたい。行き過ぎた暑さをしのぐために夏休みがあり、行き過ぎた寒さをしのぐために冬休みがある。温度に対する耐性というのを子どもが体で覚えるのもこの成長期である。教室で余り快適な空間を与えてしまうことは、体育の授業のときに熱中症で倒れる子どもがふえたり、大人でも問題になっている冷房病といった問題を少年期から植えつけることになってしまいかねない。こういったことになるのは好ましくないとおっしゃった会長がいらっしゃいました。また、エネルギー問題について触れた校長先生もいらっしゃいました。
 エアコンを設置して欲しいという需要が私には感じられませんでしたので、この請願は採択すべきでないと思います」


石川義和委員

「学校では、今放射線量の面から見まして、震災前とほとんど変わっていません。窓を開放しながら授業をしているという状況でございます。それから、扇風機とよしずで暑さ対策を図っていまして、教室内の温度も二、三度下げることができています。

そのようなことから、私はエアコンを設置すべきではないと思います。あと、健康面の影響も含めて、不採択とすべきという意見です
民の声新聞-3a in 郡山

子どもたちの被曝回避に取り組んでいる「安全・安心アクションin郡山」。参加している母親たちは屋外プールを使った水泳授業や教室の窓を開けることによる被曝の危険性など、今年も多くの場面で市に申し入れをしてきた。この請願書もその一つ


【「子どもたちに我慢をさせるな」と採択意見】

滝田春奈委員

「私は採択すべきとの立場で話をさせていただきます。まず、伊達市と二本松市は、去年の7月、普通教室全教室にエアコンを導入しています。伊達市は、放射能対策で設置していまして、ちりやほこりと一緒に放射能が入ってきてしまうという考えのもとで全普通教室に導入しました。学校関係者の意見ですとやっぱり喜びの声のほうが大きいというお話を聞いています。
 それから、二本松市ですが、放射能対策に加えて、年々暑さが厳しくなってきており、学習する環境が厳しくなってきているという理由で設置しています。ことしは風が強い日だけ窓を閉め切って、風の強くない日は窓をあけて放射線量の推移を見るということを聞いています。二本松市はほかの自治体の方から、去年エアコンがないところは鼻血を出している子どもたちがたくさんいたということを聞いたそうでかなりうらやましがられたそうです。これは去年の話です。
 私は、やっぱり福島県に残って頑張っている子どもたちや保護者の方々の安全・安心をしっかり守っていく責務があると考えています。放射能の対策に加えて、学校は東京電力福島第一原発事故がまだ落ちついていない状況なので、これからいつ防災拠点になるかもわかりません。それからやっぱり年々夏の暑さが厳しくなってきているし、あとは中核市の動向を見ても、41市中、小学校が22市、中学校が24市、現段階で設置しています。検討中である市が、小学校が3市、中学校が8市ということで、暑さ対策の面でも、子どもの学力向上の面でも、エアコンはこれから非常に必要になってくると思います。また、太陽光パネルを学校の屋上などに設置して、再生可能エネルギーのまちをPRするとか、そういう対策が必要なのかなと思います。
 やっぱりこれから、子どもたちを育てやすい環境を郡山市がつくっていかないと、人口流出もふえていきますし、それから学力向上の面でも必要だと考えますので、私は採択すべきだと思います」


岩崎真理子委員

「子どもたちに対してどういう環境整備をしていくのかという請願ですが、3月定例会でも同趣旨の請願書が提出されましたが、結果は不採択でした。
 今回は、前回とはまた別の団体からも提出されてきているわけです。委員から需要がないというお話がありました。需要をどのように把握するのかということですが、真意、胸の内をどう伝えるかというのは、いろいろな葛藤のもとで大変複雑なことがあると思うんですね。
 しかし、こうした放射能汚染の中で、本当に苦しみながら、不安を抱えながら日々生活している。子どもたちが被害を受けやすい状況に対して、行政として、議会として、環境を整えていく努力をしていると思うんです。
 県内でエアコンを設置した市町村のデータを持ってまいりましたけれども、福島県内では31の市町村で360台のエアコンを設置しています。郡山市を見てみますと、89台設置されているんですが、残念ながら教室ではないんですね、保健室に設置したんです。やはり子どもたちの健康管理をしっかりとしていくという意味で保健室に設置されたと思うんです。
 しかし、健康管理という面では、放射能の問題ももちろんあるわけですけれども、地球温暖化が進む中で気候的には非常に暑い状況があるわけです。私が子どものときは30度まで気温が上がるようなことは考えられませんでした。ですから、教室の学習環境がどうなのかということなんですね。去年の夏ですけれども、郡山市も努力をしてよしずと扇風機を設置しました。何とか子どもたちによい環境をということで設置したんです。しかし、保健室に通う子どもたちが相次いだり、あせもやアトピーで苦しんだり、実際手だてが必要で病院に通った子どももいます。鼻血が出て、この鼻血の原因は暑さなのか、放射能の影響なのかという別の問題もまた抱えるわけですけれども、暑さ対策のため環境を整えるということと、放射能汚染対策ということでは、大人の社会を見てみても必需品同様に各施設にも設置されておりますし、議場をはじめ、庁内にも入っているわけです。各家庭を見た場合にも、クーラーを設置していると思います。ただそれをどう使うかだと思うんです。設置したから各教室が毎日稼働させるのかといったらそうではないと思うんです。必要なときに使えるように環境を整えていくというのは、郡山市の責任で果たしていくことだと思います。必要だから89台設置しましたけれども、これはあくまでも保健室です。大人の社会で設置しているものを子どもに我慢させる理由の第一はやはり台数が多くなるので、費用面について考えられていると思うんですけれども、費用がかかるという理由で子どもに我慢をさせるということがあっていいのだろうかと思います。二重三重の苦しみを負っている子どもにさらに我慢をさせるということがどういうことなのか。やはりきちっと対応すべきだと思うんですね。ですから私はこの請願は当然採択すべきということで意見を申し上げます」
民の声新聞-郡山市②

郡山市役所に隣接する「ニコニコ子ども館」の屋

内遊び場はこの夏、多くの親子連れが利用した。

「屋外ではやはり、被曝が心配」「気にしていない。

屋外は暑いから来た」と、親たちの考えは様々だ

ったが「もう放射線量は下がったんでしょ?」と話

す母親が目立った


【「我慢させるのも教育だ」との意見も】

諸越裕委員

「今、岩崎真理子委員の話を聞いて、本当にすばらしい発言だと思います。私も賛成したいなという気持ちはあるんですが、しかしちょっと立ち止まって考えてみると、先ほど費用についての話もありましたけれども、今、原発反対、節電に努めていくという状況で、エアコンを全教室に設置した場合のイニシャルコスト、そしてランニングコストについては、どのように郡山市の財政で考えるのか。その辺もしっかり踏まえて、考えなければいけないのかなと思いました。
 さらには、今日の新聞で、プールに入った子どもの笑顔を見ました。私はこれこそが復興の一歩なんだと思いました。今、当局においては、原子力災害対策直轄室を中心としてハード面では一生懸命除染活動をしています。さらには、学校の中でもしっかりとした放射能対策はやっております。1年と数カ月たった今、これからハード面からソフト面の対策へ切りかえていくべきではないでしょうか。
 さらには、学校教育の中でもどんどん校庭で遊ばせよう、しっかりとした健康管理をしようとしています。先ほど佐藤徹哉委員も言いましたが、自然環境の中で思いっきり汗を流し、しっかりとした形で運動し、そして初めて子どもたちの健康が保たれるのです。ペップキッズこおりやまを企画された菊池信太郎先生もおっしゃっていました。今子どもたちに大切なのはそういうことなのです。外でしっかり遊ばなければ子どもが大きくなってから大変なことになるのです。今子どもたちに求められているのは、エアコンのきいた環境で勉強することではなく、多少暑くても、多少寒くてもそういった中で掛け算九九を一生懸命学ぶ姿です。要求だけに答えるのが愛情ではない、我慢をさせるのも教育の一環だと、私は思っております。
 さらには、先ほど郡山市役所の冷房もとめたほうがいいのではないかという話も出ましたが、市役所はパブリックスペースです。年老いた方がつえをつきながら住民票を取りに来る。そういった中でほっと一息できるのが、この郡山市役所ではないでしょうか。それと対峙するような問題ではありませんが、やはり郡山の子どもたちの将来を考えた場合に、与えるだけ与えてはいけない。しっかりとした環境を整えれば、エアコンの設置はしなくてもいいのではないかと私は思います。ですから、私は、この請願は不採択とすべきだと思います」


(了)