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●金袋山・人形山  晴れ
 東京都奥多摩町   2010年11月13日(土)

 金袋山(1325m)・人形山(1176m)

<参考コースタイム>

 JR奥多摩駅→(バス30分)東日原バス停→(40分)一石神社→(5分)登山道入り口→(20分)①巨樹周回分岐→(10分)②巨樹周回分岐→(45分)ミズナラ巨樹→(50分)金袋山山頂→(20分)ミズナラ巨樹→(10分)一石山山頂→(5分)③巨樹周回コース分岐→(20分)④巨樹周回コース分岐→(20分)登山道入り口→(40分)東日原バス停→奥多摩駅

 山行所要時間:4時間45分  参考歩数:20,000歩
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金袋山は、奥多摩の北端にほぼ近いタワ尾根に連なる1325mの山だが、どの登山ガイドにも紹介されていないほど無名に近い。辛うじて途中にある人形山が、奥多摩でも屈指のミズナラの巨樹で知られている程度。

人形山から金袋山、さらにその奥の蔫(すず)坂ノ丸までの山道は、踏み跡のハッキリしない”破線”であるのが原因のようだ。


近くには、奥多摩でも人気の高い川苔山や鷹ノ巣山、観光名所の日原鍾乳洞がある。



奥多摩駅は、紅葉シーズンということもあって、駅前は7時46分着の登山客であふれている。われわれが乗る予定の8:28分発のバス停には、すでに50人以上の登山客が並んでいることもあって、急きょ30分も早く臨時バスを出してくれた。

それでも車内は満員で、途中川苔山に向かう登山客が川乗橋で降車して、やっと車内に空席が出た。

山   写真 温泉 東日原のバス停

東日原のバス停に降り立ったのは、30名ほどか。一体どれほどの人が金袋山を目指すのか興味があったが、その数は予想通りそう多くはなさそうだ。



日原集落は、新編武蔵風土記によると「この村に入れる所はただ一方の道にて、いとも辺境なれば自ら盗賊の患いもなく・・・」と言われるほど山奥にあるが、日原鍾乳洞を奥宮とする「一石山神社」は、役の小角(634-706年)が開山したというから歴史はかなり古い。江戸初期に上野・寛永寺の管轄下になってから、信者や修験者の往来があったという。一石とは、この鍾乳洞が一つの岩でできていることに由来する。

登山口に向かう途中、役の小角が入山の際に名付けた「萬寿の水」という古井戸がある。ちょうどいい具合にここで水を補給。
山   写真 温泉 萬寿の水
人家を離れ、 徐々に渓谷が深くなると、みごとな紅葉が迫ってきた。まさに紅葉真盛りで、心浮き立つ気分。山奥の紅葉が終わっていなければ良いのだが。山   写真 温泉
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登山口は、日原鍾乳洞を過ぎ、小川谷林道を数分歩き、一石山神社をやり過ごしてさらに先に進むと階段があり、「金袋山のミズナラ入口」と書かれた看板がある。地図で見ると一石山神社の脇から破線の登山道があるようだが、見落としたか。しかしこの神社からの破線歩きは、初心者には不向きのようだ。

バス停からここまでのんびり歩いて約45分の道のり。
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一石山神社から5分ほどで、登山入口に
山   写真 温泉 登山口入口

入口付近に、わざわざ「この先急坂」と書いてあるが、確かにいきなりの急途で早くも汗が出て来て、シャツ一枚になった。
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登山口付近はまだ紅葉していない木々が目立ったが、高度を稼ぐに従って、ミズナラやカエデの葉が色濃くなってきた。

先を行く登山者に追いつく頃になると、すっかり汗だくになり、とうとうTシャツ1枚になる。


歩き始めて20分ほどすると、1番目の「ミズナラ周回コース」の立て札があり、さらに10分後に2番目の同じ立て札をみた。どちらの道を選んでも、ほぼ同じ時間でミズナラの巨樹がある人形山(1176m)付近に着くが、われわれは右のコースを辿ることにした。

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1番目の道標               2番目の道標

目指す金袋山には、”徳川埋蔵金伝説”がある。

「金の袋」という山名に由来するのか、その論拠は不明だが、地理的に久能山東照宮(静岡県)と日光東照宮のちょうど中間地点にあるのは確からしい。もちろん千三つ伝説の類だろうが、気になることもある。

それは、麓の一石山神社が、天海僧正によって寛永年間(1624-43年)に上野寛永寺の管轄下に入ったこと。

天海といえば、日光東照宮の造営を発願し、徳川家三代の政治顧問を務めた”怪僧”でもある。 その天海が、なぜ草深い奥多摩の一寺を管轄下に置いたのか?


この埋蔵金?より、日原の集落を潤したのは、現代でも正月に使う「白箸」の生産だったそうだ。

江戸時代、一石山神社が輪王寺宮家の所領となり、京都から帯同した御用箸師が、日原のミズキで白箸を作ったのが始まりという。やがて幕府柳営で白箸が使われ柳箸と呼ばれ、これが一般に広まったことから、この一帯は「箸割村」ともいわれていたそうだ。

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広葉樹林からわずかなヒノキの人工林を経て、燃えるような紅葉を頭上に仰ぐようになると、樹間から薄っすらと奥多摩最奥の尾根、長沢背稜の山々が見えて来た。
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期待通りの、いや期待以上の紅葉の樹林にうっとりして、登り坂もほとんど苦にならない。

登山口から40分ほどして視界が少し開けて来たので、タワ尾根の背に出たようだ。登りも少し緩くなってきた。
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人形山の山頂に近付くと、ブナやミズナラの大木が多くなってきたが、朽ち果てた倒木もかなりある。まるで古木の墓場のようで痛々しい。
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のんびりとした足どりだったせいか、登山口から1時間20分かかって「ミズナラの巨樹」に着いた。

この巨樹は、幹周り7.5mというから直径2.4m、全国でも有数の巨樹で、ミズナラでは関東一の大きさとか。もっとも奥多摩は、全国でも有数の巨木の森で、幹周りが3m以上の巨木が900本近く(891本)もあるという。

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しかし本日は、巨木よりも紅葉が一番のハイライト。微妙に異なる色彩の木々がまるで自らの装いを誇っているようで見飽きることがない。ここに来るまでも、その景観に見惚れて何度足を止めて、立ちつくしたことか。観光地の紅葉と違って、自然林ならではの豊富な色彩がここにはある。

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さてここから先が、地図上の”破線”になる。

とくに落ち葉の堆積するこの季節は踏み跡が分りにくい。案の定、金袋山へのトレースが見当たらず、思い思いの登り口を探して上を目指す登山者がいる。

トレースはなくても、タワ尾根の高い背を目指せば山頂に着く。
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正しいルートは、金袋山に向かって巨樹の左側を登る。しばらく行くと東京都の石標や赤いテープがある。

人形山の山頂はこの辺りのはずだが、それを示す標識がない。

しばらく歩くと、相棒が「イヤなものを見つけた」という。

鹿の糞より大きいから、イノシシのものだろうか。念のために朝からカウベルを付けているが、やはりこの辺りは必需品。
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巨樹から50分ほど比較的緩やかな坂道を辿り、ようやく金袋山の山頂に着いた。

ほとんどトレースの見分けがつかないので不安だが、尾根の背を探して歩けば、ルートを外ずすことはないだろう。

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金袋山の山頂は平坦地で広いが、樹木に囲まれてほとんど眺望は得られない。

ただ北面が開け、酉谷山や三ツドッケ(天目山)の長沢背稜の峰が見渡せる。

さすがに山頂の紅葉は落ち、冬枯れの景色。

ここで昼食。本日は、相棒が持ってきたワインを飲みながら、天ぷらうどんを温めた。

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当初、この山を登る人は少ないだろうと思っていたが、意外にも時間が経つに従って登山客が増えて来た。山頂には4、5組のパーティがいるだろうか。
この先の蔫(すず)坂ノ丸を目指すパーティもいる。

これだけの豊富なブナなどの広葉樹が多いから、新緑の季節も素晴らしい景観が楽しめるだろう。いっそルートを整備すれば、人気の山になるだろうが、半面、この豊かな森をそっとして置きたいという気持ちもある。

山   写真 温泉 一石山

山頂で40分ほど休んで、ミズナラの巨樹まで引き返し、そこからは登りのルートとは違う道を辿り、一石山(1007m)へ。

山頂と言っても、樹林の中にあって見晴らしもきかず、ただ小さな標識が木にぶら下がっている程度。ここまで約30分。

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一石山から少し下ったところに分岐があり、左に下ると、朝、登って来た道に出る。

分岐をそのまま進むと破線のルートだが、いっきに一石山神社に降りることができる。

違うルートを辿ってみようと、この破線道を進んでみたが、トレースも分りにくくなってきた。それ以上に道が狭くなり、とうとう両側が切り立った馬ノ背のような場所に出た。

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慎重に岩場を進むと、本日一番の見晴らしの良い場所に出たが、道は険しくなるばかり。とうとう、道が途切れたような断崖に出た。崖から下を覗くと目がくらむように切り立っている。

この断崖を不用意に下るのはどう考えても危険。恐らくこのルートは、一石山神社で修行する修験者が切り開いた道だろう。両足を綱で縛って逆さずりにする修行にはうってつけの場所。

面倒だが、来た道を引き返すことにした。

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1時間ほどで下って登山口に着いた。時計を見ると13時45分。東日原発14時50分のバスには十分間に合う計算。このバスを逃すと、15時台のバスがないから大きなロスになる。
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日原鍾乳洞辺りの楓は、わずか数時間のことだが、今朝見たより少し色濃くなってきたようだ。同じ1本の木でも陽のあたる葉と日陰の葉のグラデーションが美しい。
奥多摩駅には3時過ぎには着いたので、温泉に浸かる時間はあるが、本日は湯に浸からず、定番の駅前食堂に直行。

ここで冷えたビールに、マイタケの空揚げ、コンニャクの刺身をつつきながら一杯、二杯。ビールのあとは熱燗を1本頼んで、早々におつもり。

何だか本日は紅葉をたっぷり堪能して、酔った気分!

あとは車中に冷酒を持ち込んで・・・・。

本日の登山歩数は約2万歩なり。
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