●石丸峠・牛ノ寝通り 温泉付
山梨県小菅村 2010年9月11日(土) 快晴
石丸峠(1957m)・榧(かや)ノ尾山(1429m)・牛ノ寝通り
<参考コースタイム>
JR中央線・甲斐大和駅→(バス40分)小屋平→(50分)石丸峠→
(1時間5分)榧(かや)ノ尾山→(1時間)大ダウ→(25分)大マテイ山頂→
(25分)小菅分岐→(1時間10分)小菅の湯→JR奥多摩駅
歩行時間:5時間
参考歩数:27,000歩
<日帰り温泉>小菅の湯
9月中旬、見上げる空にようやく秋の気配が漂ってきたが、それでも、気温は30度を下らない。
そこで、2000m級の山なら、少しは涼しいだろうと選んだのが、大菩薩峠から東に連なる”牛ノ寝通り”の尾根歩き。ちょうど、多摩川と相模川の分水嶺にあたる。
去年の盛夏、大菩薩嶺
に登った時を思い出して、甲斐大和駅からバス
を使って石丸峠からの最短距離を歩くことにした。
甲斐大和駅の上日川峠行きのバス停には、大菩薩を目指す登山客が多いせいか、40人乗りの小型バスはあっという間に満席になり、もう一台臨時便が出ることになった。
小屋平のバス停
小屋平(石丸峠入口)バス停に降り立ったのは、我々2人と、10人程度のパーティーと単独行程度か。
クマ笹が生い茂る、いきなりの急坂を20分ほど登ると、視界が開けて、富士山や八ヶ岳が見えて来た。
眼前には、小金沢山のなだらかな稜線も樹間から垣間見える。
八ヶ岳
小金沢山
再び樹林に入り、急途が続くが、唐松やシラカバ、ブナの自然林に囲まれているので、気持ちが良い。どこからか涼風も吹いてくる。
40分ほど登り詰めると、徐々に視界が広くなって、稜線に出た。
目の覚めるような青空をバックに、富士山の全貌が見える。その裾野には、御正体、三ツ峠や、富士五湖を臨む十二ケ岳、黒岳の山波が二重、三重に連なっている。
真夏なら、靄がかかって、これほどの景観は望めないだろう。
ちょっぴり冷気を含んだ、清明な初秋ならではの景色。冠雪した富士山や南アルプスが眺められる冬はさらに素晴らしい眺めだろう。
西側に視線を移すと、北岳、間岳に連なる南アルプス全山が、水平に広がっている。手前の人工の大菩薩湖が、この景観のアクセント。
登山口から、第一目的地の石丸峠までは50分ほど。
我々のうしろから、年配の登山者が来て、小菅に下るのかと尋ねられた。以前、大菩薩から小菅に向かおうと思ったが、道が分らず、仕方なく石丸峠に下って行ったと言う。
確かにガイドブックには、小菅への分岐が分りにくいとあるので、一緒に行くことにした。
しかし、それは恐らく昔のことだろう。道標を辿り、10分ほど歩くと、小金沢山と牛寝通りとの分りやすい立派な道標がある。ここは、1957mの天狗の棚山と呼ばれるところ。
あとで分ったことだが、この分岐で、富士山や南アルプスの景観は見納めになる。
牛ノ寝通りへの分岐
日差しは強いが、予想通り2000m近い標高だけに、ほとんど暑さは感じない。
それどころか、赤く染まりかけた紅葉があり、秋色の気配。
実は、この山行を思い立ったのは、暑さしのぎもあるが、展望の良い尾根歩きを楽しむのが目的。クマ笹の生い茂る、稜線をのんびり歩こうと、ひそかに楽しみにしていたのだが、見晴らしの良い展望はこのあたりだけ。
そのあとは、ただ樹林の中を歩く予期せぬ誤算。
そのせいか、この尾根筋を行き交う登山者の数は少ない。後ろからは、恐らく2組(12人程度)ほどで、前からは単独行の登山者が2人だけ。
もっともこの森は、紅葉する広葉樹が多いので、晩秋の頃はさぞきれいな尾根道に変身するのだろう。実際、秋は、紅葉で山が燃えるようだという。
牛ノ寝への分岐から、尾根を右に巻きながら、榧(かや)ノ尾山(1492m)辺りまで一気に500mほど下る。
途中、米代と呼ばれる分岐があり、長峰に下る道もあるが、いまは廃道になっている。
この辺りから、かなりの大木が目につくようになったので、一体何の木だろうか考えていたら、ここが榧ノ尾と思い出して、榧(カヤ)の木と納得。
この尾根筋を、牛ノ寝通りと言うが、謂れは文字通り、牛の寝姿に似ているからだろう。緩やかな登り降りを繰り返し、狩場山(1376m)を巻いて、小菅に抜けるショナメという分岐に着く。
ショナメには、小菅に抜ける道筋があるが、ここも今では通る人はいないようだ。
登山口から、3時間ほど経って、ようやく12時、大ダワに着。
この尾根道は、小菅から大菩薩に抜ける古道だったようで、道のわきに古いお地蔵さんがポツンと佇んでいる。
ほんのわずかだが、大ダワに、青空が見える場所があるので、そこで昼食を摂ることにした。ダワ(たわ)とは、山岳用語で、鞍部を意味するタワ(「乢(たわむ)」)から来た言葉だろう。
樹間から覗いている山は、秩父の飛竜山辺りか。
大ダワ
大ダワの標識
すぐ上にある大ダワの標識
昼飯に40分ほど時間を費やして、次に向かうのは、大マテイ山(1409m)。
しかし大マテイのマテイとは一体どんな意味だろう。山頂の標識には、大マテイの山名の下に「山沢入」という名前がカッコ書きで書いてある。
とすると、マテイは地元の呼び名か? 北海道でマテイとは、「真たいら」という意味らしい。確かに山頂は平らだが・・。
大ダワから、小菅方面に向かう道を取るのだが、方法が2通りある。一つは大きく左に降り、川久保から小菅に至る道。
もうひとつは大マテイ山の下を巻いて鶴寝山に向かう道だが、さらに新旧2つの道に分かれている。新しい道を作ったせいか、道標を新しくしたようだが、設置場所がそれぞれ異なるので、却って分りにくい。
我々はここでキツネに化かされたような経験をした。
大マテイ山に登るため、鶴寝山方面に向かい、標識のある分岐を左に曲がり山頂に着いた。残念ながら、山頂から眺望は全く得られない。
大マテイ山頂
山頂は、登山道から離れているが、、いま来た道と反対側の坂道を下り、再び大ダワに戻れば、小菅方面に降りることができる。
そう思って道を下って行くと、分岐があり、そこを左折すると、相棒が切り株を見て、「この道はさっき通った道だ」という。そんなハズはないと、聞き流して先を進むと、こんどは、こっちが見覚えのある個所に出くわした。
やはり、知らず知らず、さっきと同じ道を歩いているのだ。
今もって、その謎は良く分らないが、標識の設置場所に問題があるようだ。
結局、山頂への分岐点から鶴寝山方面に直進し、小菅の湯に向かう分岐を左折することにした。このコースは、今年の5月、奈良倉山
に登った際に歩いたばかり。
山の植物は、着実に秋の準備を進めているようだ。いたるところに、いくつものキノコが顔を覗かせ、山の動物に食い荒らされた無数のトチの実も落ちている。
本日は、登山口から石丸峠への登りと、大マテイ山への10分ほどの登り以外は、ほとんどが下り坂。いい加減、つま先や足の関節が痛くなってきた。
おまけに展望が効かないので、楽しみは、下山後の小菅の湯 に浸かること。ここには食堂があり、春には、地元で採れた「こし油」の天ぷらを食べた。
歩きながら、今日は、キノコ汁にでもありつけないだろうか、と考えてみる。その分、足取りが早くなり、足への負担が増えてくる。
トチの巨木を過ぎ、ワサビ田の静流を下り、足を引きずるように、ようやく15:00、小菅の湯に着いた。
コスモスとそばの花が、いまが盛りと咲き誇って、秋の風情。
ワサビ田 小菅の湯
湯上がりに生ビールと赤く染まった紅葉の葉、トチの実で秋色の記念撮影。
4時30分のバスに乗ろうと思って、早めに切り上げたら、この時期の(この時間帯の)バスは、上野原駅(中央線)への直行便はないとのこと。
しかたがないので、村内バスに乗り換えて奥多摩駅に向かうことにした。
バスが来る間、土産物館の前の広場で、ヤマメの塩焼きと冷酒で時間つぶし?
奥多摩駅では、行きつけの食堂か、シカ肉を食べさせる店に寄りたいが、あいにく満席で、駅わきの小料理屋で、アユの干物と澤之井の冷酒でちょいと一杯・・。
店を出ると、当然のことながら、駅前はすでに暗くなっている。
本日の登山歩数は27,000歩也。