4月から花の勉強をする為に東京に行き、将来は「小樽フラワー」の3代目としてお店を受け継ぐ鈴木達也さん(20)に聞く


---昔から花は好きでしたか?
はい、子供の頃から花が好きでした。匂いも大好きですし、これを摘んだらどんなキレイな姿になるのかな?と考えるのが楽しかったです。中学生くらいには「いつか花屋になりたい」とずっと思っていました。しかし、いろいろ事情もあったので桜陽高校を卒業し、大学からは全く違う道へ進みました。

---大学ではどんな事をやろうと?
それが無かったんですよ、何にも(笑)元々英語が好きだったので通訳でもなれたらいいなーと、でも英語なんて話せる訳でもない。ただのちゃらんぽらんでした。その中で、父親は花屋として年中無休で働いて、おばあちゃんも高齢なのに店を手伝っているんです。親を安心させるためにも早く一人前にならないと、とは思っていました。それは花屋を継ぐ、という訳ではなく立派な社会人としての姿を見せようという意味です。

---花屋を継ぐきっかけになったのは何ですか?
大学2年生の時に、父親に「花屋やらないか?」と言われたんです。気持ちはありましたが、直ぐに返事は出せませんでした。それから1週間くらいよく考えて、決めました。
そして今年の春から東京で、花の勉強を2年ほどしてきます。その為に2013年の8月ごろに大学を辞めて、それからはアルバイトや若者によるイベント企画運営団体「ヤングシップ」に入って活動をしました。

(まずは東京での学びについてお聞きします)
---東京ではどんな勉強をしてくるのですか?

東京の学校に1年、東京の花屋に勤めて1年、2年後に小樽へ帰ってきて小樽フラワーを手伝う予定です。自分が行く学校は花の勉強だけじゃなく経営から財政、マネジメントまで花屋の経営者になる為の学校なんです。その後は東京の花屋で、花の見せ方などを学んできます。

冗談話ですけど、よく小学校の文集で将来の夢を書くところに「お花屋さん」って書く人がいるじゃないですか。最初は「この娘、可愛いな」と思ってましたけど、今は「そんなに簡単じゃないぞ!花を店頭で売ってるだけじゃないぞ!」って気持ちが少しあります(笑)
花って生鮮なので売れ残ったら処分しなくてはいけない、仕入れる量やその時期に合わせた仕入れや人件費、室温など全ての環境を考えなければいけない。そして花屋と言っても1種類だけじゃない。そんな楽じゃないぞ!と、まぁ冗談です(笑)


(ではヤングシップの話をお聞きします)
---大学を辞めてからヤングシップに入っていたんですか?

以前から友達に誘われたんですが「ヤングシップに入って自分は何が出来るだろうかー」とか「社会人との関わりも多いヤングシップの活動で、自分が迷惑を掛けたら困るなー」なんて事を考えすぎていたら、入るきっかけを失いました(笑)
でも大学を辞めたのがきっかけでヤングシップに入ったのですが、
刺激のあり過ぎた日々でしたね(笑)
入って思ったのは将来的に小樽でお店を継ぐ人間として、小樽フラワーで父が持っている繋がりを受け継ぎながら、それだけでは無く自分自身の人脈を広げていかなければいけない。ヤングシップに入る事で改めて繋がりという大切さを気付かせてくれました。


(小樽出身の達也君に小樽の印象を)
---小樽の良い所はどこだと感じていますか?

変わらない町並み、そして人の温かみだと感じます。他の街を知っている訳ではないですが、小樽の人はみんな優しく若者の活動を見守ってくれている印象がありました。

---小樽を色に例えると、何色だと思いますか?
赤ですね。温かい色です。運河に行ってもガス灯があって、暗い中でも灯りがある。小樽雪あかりの路のイベントなどもあって、冬でも温かい。人の温かさもそうですし、小樽の色は赤だと思います。

---小樽に対する思いを聞かせてください
同級生や周りはみんな「小樽から出たい」と言うんですが、あれはなんなんでしょうかね。
札幌を見ちゃってるから都会に憧れて、だから出たいと思っちゃうのかなと。都会に甘えるんじゃ無い!と思います(笑) 
地元で、つまり自分の家族や大切な人がいる地域で、自分がやりたい事をやって発展させる事が何よりも良いんじゃないですかね。そのあとで都会に行けばいいと、今はそう思います。


(花に関してお聞きします)
---花に関する想いはありますか?

皆さんに花をもっと身近に感じて欲しいと思っています。
冠婚葬祭などの特別な時にだけではなく、ふと目に入れば心が落ち着く、そんな花の魅力を伝えながら
生活の片隅でもいいので、花のある生活を提供していきたいです。

最近は自分の感覚ですが、花離れが進んでいるんじゃないかと思うんです。花を貰っても、どうしていいか分かんない。花をプレゼントされても喜ぶのはその母親。そんな人が増えているんじゃないかなと。
だからこそ、花の価値観を変えていきたい。身近な人が花を扱っていたら、それだけで親近感が湧くと思うので自分の身近な人から伝えていきたいです。


---いまから花の勉強はしているんですか?
はい、父親のお店である小樽フラワーの手伝いを今でもしているので、花の名前は自然と覚えています。ただ父親からは変な癖をつけず、東京で勉強する際には真っ新な状態で学びに行って欲しいという想いがあり、詳しい技術などはあえて教わっていません。他にも、今までは目に入らなかった花束や花壇なども真剣に見て勉強する事もあり「笑っていいとも!」なんて見てたら、ゲストよりも後ろの花に目が行きます(笑)

---花の魅力とはなんでしょうか?
花は見せ方で変わるんです。
店頭に並んでいる花と祭壇に並んでいる花、同じ種類の花だとしても全く表情が違う。ホントに全然違うんです。


---何が違うんですか?
花の可能性ですかね。
この花はこんな感じになるんだ、と驚くこともあります。全然違うんです。


---お店を継ぐ不安はありますか?
それはあります。自分が継げば3代目になるんですが、今まで築いて来たものを自分で壊さないだろうか、業者さんや関係者の方々は自分のやり方について来てくれるだろうか、東京のやり方を学んで帰って来て小樽で受け入れられるだろうか、考えたら不安ばかりですし東京へ行くにしても2年間で何かを持って帰ってこなければ、というプレッシャーを感じています。それでも、学ばないと意味が無いので。

---後継者問題はどの業界でも騒がれていますよね
実は同世代でしかも同じ地域に、お寺の息子、和菓子屋の息子、そして自分は花屋の息子。店を継ぐ同級生が居るんです。親の仕事を継ぐ苦労や大変さをこの年になって実感し始め、最近はその友達と合ったら継ぐ話しばかりしてます。消費税が上がったり人口が減ったとしても3人で頑張っていこうな!って(笑)

---東京に行くいまの心境を教えてください
周りに流されず、学ぶ所はしっかりと学んで、将来は華々しい道を進める様に今を頑張ります。

---将来の夢は?
花屋は夢ではなく通過点、絶対にやります。
夢として考えると、小学校の卒業文集には「小樽市長になる!」と書いた事もあって、将来は小樽のまちづくりに関わって行ける人間になりたいですね。そして、今まで関わらせてもらった大人の方々のように、若者と繋がって様々な活動をして行きたいです。


小樽フラワー
〒047-0022 北海道小樽市松ケ枝1-15-8