前回のエントリーは福富町に出店して一年が経ち。。。といった内容でしたが、それから諸々ございまして、今度は弘明寺に二号店を出させて頂く運びとなりました。

 

これもご縁というものなのでしょうか、GW前のある日、鎌倉街道を車で走っていたところ、偶々『テナント募集』という貼り紙を見掛け、駄目元で不動産屋さんに連絡してみたところ、トントン拍子に話が進んだという。。。

実は三月頃から二号店出店を検討しておりまして、当初は湘南エリアもいいかなぁなどと考えていたのですが、そちらは話が流れてしまい、見ようによってはその穴埋めとでもいったところなのでしょう。

 

そんなふわっとした感じで着手した弘明寺店ですが、何とか予定通り七月一日にオープン出来そうです。

オープン初日と、それから七月に関しましては大体月の半分程、ワタクシも店に立つ予定です。

スタッフ共々、皆様のご来店を心よりお待ちしております。

移転、そして自ら出店して一年が経ちました。

場所は福富町、それも特殊浴場の真ん前というなかなかの立地ではありますが、お陰様で何とかやっていけております。
 
さて。
自らラーメン屋としての軌跡を辿ってみると
 
2012年11月和奏 茅波@馬車道にて間借り営業開始
2013年01月 同店における間借り営業終了
2013年02月 Launchpadcafé@元町にて限定提供開始
2013年04月 スナックいっちゃん@野毛にて間借り営業開始
2014年08月 同店における間借り営業終了
2014年09月 ピアノバー@野毛にて間借り営業開始
2014年11月 同店における間借り営業終了
2014年12月 N-1@野毛にて間借り営業開始
2016年02月 同店における間借り営業終了
2016年02月 福富町にて開業
 
上記の通り、正に紆余曲折の極みだったワケでして。。。
 
実のところ、何となく成り行きでラーメン屋を始めることになったワタクシは、スナックいっちゃんで間借りさせて頂いていた頃迄は単なる興味本位であったというか、(週に二日程しか営業していなかったこともあり)ラーメン屋を営んでいるという実感も自覚も無かった様に思います。
そんなワタクシではありますが、開店して一年が経った今となっては、小さい店ながらも社員が四人に増え、流石にこうなると心構えも少しは変わってきたのかなぁ、などとボンヤリ考える今日この頃といったところでしょうか。
 
ほぼほぼ一年半もの間、完全に休止していた当ブログですが、以前のようにラーメン食べ歩きをただただ綴るだけではなく、少なくとも今後暫くは(断続的且つ不定期にもなりそうですが)ラーメン屋の店主として、そして料理人としてのワタクシの考えなどをつらつら書き連ねてみようと思います。
『美しさ』というのは、一見絶対的なようでいて、実は多様な基準があるのではないかと、近頃思うようになりました。

これは例えば、時代、若しくは地域によってその価値基準が異なる、そういうことではありません。
同時代の同じ文化圏においても、謂わば一種の逆転現象でさえ起こり得る、ということです。

2013年に日本の和食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
懐石に代表される様式美と、器などへも拘りを持つ和食は、非常に強い美意識を感じさせる食文化です。
ここで求められる美しさというのは、フランス料理や中華料理で重視されがちな華美ではなく、空白を楽しむ侘びに通じる、正に日本的な美学の一面と云えるのではないでしょうか。
とはいえ、方向性に違いはあるものの、フレンチも中華も和食も、何かしらの『秩序』に則った美しさが重視されるというのは同じなのだと思います。

機能美という言葉があります。
ワタクシは何となく工業デザインを連想するのですが、具体的に挙げるなら、イームズの椅子などでしょうか。
本来デザインは機能を含む、という考え方があるので、そもそも機能美という言葉自体、無意味なのかもしれませんが、しかし機能に由来する美しさというのは、確かに存在し、そしてそれは一般的な美とは一線を画すこともあると思うのです。

例えば芸人に求められる美しさとは何なのか。
『笑われるのと笑わせるのは違う』などとも云いますし、更には『出オチ』という一種の蔑称もこざいますが、それでもしかし、その存在意義が『笑いを取ること』である以上、矢張り笑いを誘うフォルムが重んじられるという現実は在り、それがつまりお笑いの機能美(の一つ)とも云えるのではないでしょうか。

随分と前置きが長くなりましたが、ではラーメンにおける美しさとは、一体何なのでしょう。

現在二極化が激しく進んでいるラーメンのまず一つ目の極、これは間違い無くB級からの脱却を目指し、美しく盛り付けることに拘るタイプです。
我が神奈川では神奈川端麗と一頃呼ばれたカテゴリーなどもここに含まれます。
こちらが追求しているのは普遍的な美しさなのだと思います。

そしてもう一つの極、これは二郎系に代表される、脳髄を揺らすことに特化した、謂わば嗜好品型とも呼ぶべき一群です。
ここで求められるモノ、それこそが『嗜好品としての機能美』なのではないでしょうか。

旨みでえぐり
糖質で更にえぐり
脂質できっちり打ち抜く

ある意味、えげつない。

昨今では横浜のみならず、都内でも繁盛店を見掛けるようになった家系。
これらもそんな一派に含まれると思います。

先日行った、瀬谷の『四号家』。

こちらの一杯は、そういった家系の黎明期を支えた骨太さの名残を、存分に味わわせてくれます。
正に『美しい』。

暴論、付会に過ぎると思われる向きもありましょうが、しかし自身が作り手の端くれとなった今、こういった考え方が安易に看過出来ないのではないかと、つくづく思わされる今日この頃です。

ご馳走様でした。