19) 三千世界の糸車

19)　三千世界の糸車　　Spinning Wheel of Thousands Days

翌日、パーテーム国立公園へと足を運んだ。
タイのグランドキャニオンとも言われるパーテームは、ラオス国境のメコン川を見下ろす断崖上に在り、絶景が堪能できる国立公園である。



[メコン川の対岸はラオス，パーテーム国立公園]　(2013)


小雨が降る中を、二時間ほどの周回遊歩道へ向かった。
オーバーハングした岩場には、岩を支えるかのように、固い草の茎や木の枝が差し込まれている。
それは、螺旋状に渦巻く時間軸同士の、近接部をつなぐ経路と映る。

ヤソートーン訪問は、幼年期の祖父母宅を訪ねることに等しく、Erika 叔父・叔母は祖父母、Ong と Ei は夏休みだけの親友 Show と Sub 、Erika 従妹の子は従妹 ...　　
竹の縁台横の揺り椅子は、横浜の元町公園プールの客席、Ong の川魚の竹蒸しはアユタヤ カウボーイ・バーの魚料理 ...　　
ワット (寺院) のえんじ色の屋根の中間部の傾斜は、今はもう建て替えた父母の家の瓦屋根の色と、'95年の６月５日から７日の間に見当たらなくなったマンセル色立体 ...　　

観念奔逸のようで関連性を有することは、細い経路でつながった三千世界の向こう側に在る。
そして拮抗する存在は、遠く離れていても影響を及ぼし続ける。



[岩の間に差し込まれた木の枝，パーテーム国立公園]　(2013)


遊歩道に倒れた木の幹を、黒く太い百足のような節足動物が渡って行くのが見えた。
初めて見る虫だ。
一体、この虫は何だろう。

「 電車虫です 」

3000～4000年前の鮮やかな壁画の近くを電車虫が行く。
Erika は電車虫を手に取って弄ぶ。
三千世界の糸車に惹かれて、ここまで来たのは、電車虫に会うためだったのかもしれない。


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