15) 雨の夜 虹の道 | BIG BLUE SKY -around the world-

15) 雨の夜 虹の道

15) 雨の夜 虹の道  Rainbow in the Rainy Night

従弟妹たちに礼を言い、また明日来るよと言ってバイクに跨る。
バイク一台に三人乗りをして、しかも荷物を積む。
スーツケース、キャリー・バッグ、バック・パック.....
絶対に無理だと思ったが、従妹のご主人は手際よく荷物を積み込むと、バイクを発進させた。
キャリー・バッグを右手で押さえて、左手で荷台を掴む。

ここはタイですから、大丈夫です。
雨が降る中を少し蛇行しながら走るバイクに、危うさ感じるのを見透かしたように Erika が呟く。
水溜りの出来た路地を出て左に曲がり、砂利道を抜けて突き当たった大通りを右に曲がる。
BIG-C とは反対側、ウボンラチャターニーから来た道の方へ向かう。
雨が降る中、三人乗りのバイクは 50~60キロで走った。

道路の左側には、数十メートル置きに虹を描いた看板が見える。
花の名前を書いて花壇に挿す表示板を、大きくした形の看板だ。
看板の虹は、赤・黄・緑・青・紫の五色に見える。
タイの虹の色は、何色有るのだろうか。
Vibgyor, Roy G. Biv.....
虹の七色の頭文字を並べた単語を呟くと、幾つ目かの看板の虹が富士山に見える。


BIG BLUE SKY -around the world--1501_叔父宅のバイク
[叔父宅のバイク,ヤソートーン] (2012)


満月の冬の夜、西の空に富士山のシルエットが見えることがある。
雪が積もった富士山が、月の光を浴びて夜空に浮かび上がるのだ。
関東から見る富士山は、向かって左側の稜線が長く伸びる。
葛飾北斎が冨嶽三十六景に描いた姿そのままに、夜空に長く伸びる稜線が美しい。
冬の夜の富士山を、Erika は見ただろうか。

ロータリーを横切って陸橋をくぐり、川を横に見てバイクは走り続ける。
右側に家具屋が見えたところを右折すると、新興国の新興地区と言った趣の通りに出た。
ヤソートーンらしくない道だなと思ったところで、バイクはさらに右折して停車した。
従妹のご主人は手際良く荷物を降ろすと、胸の前で手を合わせて挨拶をして走り去る。
バイクのテール・ランプが見えなくなると、雨の夜に Erika と自分の二人だけが残された。


⇒§16) 修羅の郷


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