24) ワットの赤レンガと王様の神殿
24) ワットの赤レンガと王様の神殿 Wat Made of Red-Bricks, The Royal Palace
カントリー・バンドのステージが終わって、次は昨日と同じロック・バンドが準備を始めていた。ママさんが私たちのところへ来て、バンドへのリクエストをどうぞと言ってペンとメモ用紙を置く。
「何にしましょうか?」
古いロックで、昨夜のステージでは演奏されていない曲で、Erika と私が好きな曲で、バンドが知っている曲 ... となると、リクエストの選曲は難しい。
"Knockin' On Heaven's Door" (Bob Dylan) は?
「重い歌ですね」
"I Want To Take You Higher" (Sly & The Family Stone/Ike & Tina Turner) は?
「女の人に歌って欲しいです」
なかなか決まらないので、この際、アユタヤならではの曲をリクエストすることにした。
[赤レンガ造りのワット] (2007)
"Another Brick In The Wall" (Pink Floyd) は? この曲は、赤レンガ造りのワットから思いついた。
「いいですね、大好きです」
"The Temple Of The King" (Rainbow) は? これはバーン・パイン離宮から思いついた。この曲はタイで最も人気が高い Rainbow 楽曲で、Erika が好きな曲だ。
「いいですね、でも一つだからどちらにしましょう?」
迷った結果、"Another Brick In The Wall Pt.2" をリクエストした。
バンドの演奏が始まり、1曲目が終わったところでリクエストが伝えられたようだ。メンバー間で、少し長めの打ち合わせが行われて、"Another Brick In The Wall Pt.2" が始まった。
"We don't need no education. We don’t need no thought's control. No dark sarcasm in the classroom. Teachers leave them kids alone. ... "
Erika と私は一緒に歌った。この曲は、タイではとても良く知られている。ギタリストは 「よくぞリクエストしてくれた」 といった顔で私たちの方を見て、David Gilmour のソロを再現して弾いてみせた。Erika も大変満足していた。
[バーン・パイン離宮] (2007)
次の曲のイントロが始まった瞬間、二人で顔を見合わせた。何と "The Temple Of The King" だったのだ。
誰がリクエストしたのだろうと思ったが、Erika と私がどちらにしようかと迷っていた時に、店のボスがテーブルの横を通り過ぎて行ったことを思い出した。
カラバオの Aed のような風貌で、Lek のようなひげを生やし、Thierry のようなカウボーイ・ハットを被ったボスは、バンドの演奏を静かに聴いている。ボスは客と言葉を交わすことは無いが、店をコントロールしている。おそらく、ボスが私たちのために、リクエストしてくれたのだろう。
"One day, in the year of the fox came a time remembered well, when the strong young man of the rising sun heard the tolling of the great black bell. ... "
「この歌の意味は?」
狐年,ライジング・サンの猛き若者 ... 改めて意味を問われると、架空の世界を描写した歌詞としか答えられない。
「どこか昔の王様の国なのね」
Erika はそう言って頷く。曲が終わると二人で立ち上がってバンドに拍手を送った。今日のこの店は、私たち二人のために在る。この頃には自分もそのように思っていた。
(この時の事を書いた過去記事: http://ameblo.jp/r602/entry-10900276150.html)
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