17) クラブを覆う幸福感 | BIG BLUE SKY -around the world-

17) クラブを覆う幸福感

17) クラブを覆う幸福感  The Club Filled with Happiness

クラブは、先のカウボーイ・バーと同様に、オープン・エアの作りだった。
建屋に入ると、正面中央におよそ 10メートル四方のタイル貼りのプールが有り、向こう側の一辺は一段高いステージ兼 DJ ブースになっている。プールの残り三辺には四人掛けの席が並び、側辺には通路を挟んで二列,底辺には三列に、テーブルが配置されていた。午前 2時過ぎにも関わらず、客席は 8割方埋まっている。

「ここにしましょう」

Erika は、ステージを正面に見るプール底辺の最前列に席を取る。Erika は一番良い席を選び、まるで自分だけのためにこの店があるかのように振舞う。

エレクトロニカは終わって、ステージではアコースティック・ギターの弾き語りが始まっていた。カントリー調の曲だ。エレクトロニカにカントリーとは、バラエティに富んだ演出が行われている。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1701_softandwarm
[やわらかいライト] (2011)


気が付くと、Erika も周りの客達も、ステージの歌手と一緒に歌っている。タイではカントリーの人気が高いのは知っていたが、ごく自然に歌声が起こったことに少し驚く。Erika は今日一番の穏やかな表情だ。

周りを見回すと、皆一様に明るい表情をしていて、幸福感がクラブを覆っているのが分かる。やわらかい電灯の下を、熱帯特有の湿った甘い風がぬめるように通り抜けて行く。熱帯の風を頬に感じると、異国の煌きの中で彼らと同じ幸福感に包まれた。Prozac も กัญชา も、ここでは必要ないのだろう。
やがて、Lily が Annie を連れて戻って来て、席に着くと皆と一緒に歌った。

カントリー歌手のステージが終わると、やわらかい拍手の音が建屋に響く。30分に満たない出来事だったが、この国の文化に畏敬の念を覚えた。


< to INDEX >

 [#0432]