17) ムエタイ・ファイターの夢 | BIG BLUE SKY -around the world-

17) ムエタイ・ファイターの夢

17) ムエタイ・ファイターの夢 ≪路地の晩餐≫  Dream of the Muay Thai Fighter

HL 氏は、元兵士か、諜報機関の元工作員ではないだろうか?
一番似ている人物としては、ロシアのプーチン首相を挙げることが出来る。
「あなたは、既に引退しているのかもしれませんが、国家のために働くような仕事をしていましたか?」
変な言い回しで聞いてみた。

HL 氏は、DS 夫人と顔を見合わせて笑った。
「私はボクシングの選手でしたが、国家のために働いていたのかと言うと、そうではありません」
彼は、タイ式キック・ボクシング、いわゆるムエタイのファイターだった。
確かに、武道の達人に共通する雰囲気を感じる。
HL 氏の、類稀なる身体能力、正確な英語力、そして強い意思と責任感の瞳にも納得が行った。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1701_像
[Pattaya 1st Rd. 歩道の像] (2009)


HL 氏と、一通りの自己紹介と世間話しをすると、直ぐに親近感を感じた。
「私には夢があるのです、一度、日本で、本物の K-1の試合を見たいのです」
HL 氏は K-1 の大ファンで、TV 放送は欠かさず見ている。
「リアルな試合を見ることが出来たら、もう思い残すことはない」
HL 氏は、日本までの往復の航空運賃を聞いて、少し驚いた。
「行きの航空券代くらいは出せますが... 」

「日本へ行って、試合を見て、それで、コロッといっちゃえばいいじゃない。いいんでしょ、試合が見れればタイへ帰って来なくても」
DS 夫人が、突然口を挟んでそんな事を言ったので、HL 氏は怒るんじゃないかと、私は内心焦った。

「ははははは、そうだね、そうするとしよう、リアルな試合が見れればそれでいいんだ、ははははは」
HL 氏は、禿げた頭に手を当てて、最高の笑顔を見せる。
その姿に、リアルなムエタイ・ファイターを見た気がした。


< to INDEX >

 [#0395]