久しぶりにフジテレビで放映されている「ザ・ノンフィクション」の話題を書いてみたいと思います。
というかそもそもブログを書くこと自体が久しぶりなんですけどね(汗)
今日のザ・ノンフィクションのタイトルは
「おくりびとになりたくて~大切な誰かと別れるとき~」
というタイトルで、内容は、母親の死をきっかけに納棺師を志したシングルマザーの物語でした。
これを見て、2016年に私の母親が亡くなり納棺式をした日のことを思い出しました。
私と姉、納棺式で笑いが止まらなくなってしまったんですよ。
テレビのワンシーンでも出てきましたが、納棺式の最後にご遺体の好きだったものとか旅の途中で食べて欲しいものとかを棺に入れますよね。
私たちの場合、あのシーンが笑いの発端でした。
テレビでは、ご遺族が見ている前でお着換えをさせていましたが、私の母の時はそこは納棺師さんだけで行い(自分たちは葬儀場内で待機)、終わったら専用の部屋に呼ばれて最後の化粧をしてあげたり、棺に持ってきたものを入れるという感じの流れでした。
確か私のときに葬儀場にあるその部屋に入ったのは父親と姉と私と姪だったと思います。
口紅を塗ってあげたりした後に、納棺師の方が
「お母様に持たせたいものなどを入れてください。金属以外でしたら大丈夫です」
と言われるのですが、それはあらかじめわかっていたため、私たちは母が晩年作ったたくさんの毛糸で作った作品を紙袋に入れて持っていきました。
母はもともと手先が器用で手芸は得意だったのですが、70歳を過ぎて腰の手術をしてから自立歩行が困難になってしまったことで、さらに毛糸作品の制作に熱が入り、亡くなったときには何百という毛糸玉とたくさんの毛糸で作った作品が部屋に残っていたのでした。
ポケットティッシュカバー、鍋敷き、ステンレス磨き毛糸スポンジ、など家庭用品として使っていただけそうなものは母の友人や私や姉の友人、母を担当してくださっていたヘルパーさんに受け取っていただいたのですが、それでも大きな紙袋に3袋くらいの作品が手元に残りました。
ですのでそれを持っていったのです。
棺に入れ始めました。
最初は配置を考え、母に言葉をかけながらひとつひとつ入れていたのですが、何しろ作品たちは大きな紙袋に3袋、ぎっしり入っています。
入れても入れても入れても作品がなくなりません。
また、「これなんだろう?」といったような緑の丸い球とか、ヒトデのようなもふもふしたものとか、不思議な作品も出てきます。
次第に配置など考えている余裕もなくなりただ一心不乱に毛糸作品を入れ続ける私と姉。
次第に母の足元が毛糸でいっぱいになり、体の横も毛糸でいっぱいになり、お顔の周りも毛糸だらけに・・・
毛糸作品で埋まっていく母親を見ていたら、唐突に笑いがこみあげてきてしまいました。
「お、お母さん、、なぜにこんなに作った。。。」
「いやいや作り過ぎだって・・・」
姉と私、どちらが最初に言ったのか忘れましたが、その一言で涙腺ならぬ笑線が崩壊。声を出して笑い始めてしまいました。
毛糸に埋もれたお母さん。
いつもならそんなことして娘が笑ったら
「ちょっとふざけんじゃないよ!」
と大怒りするはずのお母さんが、すまし顔で棺にいます。
そのカオスな空間がまたおかしくて、また笑いがこみあげてきます。
「お母さん、もうやめてよ!と言ってるんじゃない?」
「でも仕方ないよ。家に形見で取っておく分はもういらないし」
こうなると、母の横で短い両手を広げてきょとん顔をしているキューピー人形さえ壺に入ってしまいます。
(昭和世代ならおわかりだと思いますが、キューピー人形に毛糸で洋服を編んで着させるのはやりましたよね。母もたくさん作っていたのです)
納棺師の方、あの光景を見てどう思っていただろう。
若い男性と女性の2人組でしたが、実際におもしろい光景だったとしてもつられて笑うわけにはいかないですものね。
こらえていたとしたら申し訳ないことをしました。
それとも笑っている家族は不謹慎だと思ったかもしれないですよね。
でも、私は納棺式に姉と泣き笑いしながら毛糸を入れまくったあの時間をまったく不謹慎だと思っていません。
むしろ、たくさんの自分の作品に囲まれて(というか埋もれてww)娘たちに笑って送りだしてもらえた母の人生はとても幸せだったと思っていますし、母の人生というものを姉も同じ感覚で見ていたのだと思うと一種の安堵感のようなものを覚えました。
76歳という女性としては短い生涯の母でしたが、目にものもらいができてヘルパーさんに眼科に連れて行ってもらったそこの病院で意識を失い、その3日後にやはりヘルパーさんがいるときに意識を失い、検査をしたら胆のう癌ステージ3だと言われ、その数日後に昏睡状態になり、私たちの到着を待ってすぐに眠るように亡くなりました。
苦しむことなく、点滴などの治療も最低限で穏やかでした。
母が亡くなる1年くらい前から中~高度の認知症になっていた父は、母が亡くなったことを認識できず、葬儀場をうろちょろするので、母が自作し「ひとみちゃん」と命名したお人形を持たせ、いたずらでひとみちゃんが被っている帽子を父の頭にかぶせたら、おとなしく被り続けてひとみちゃんをずっと抱いていました。
細かくて口うるさい父が毛糸の人形をおとなしく抱っこしている姿。人が老いていくということは悲しいことではないのだ、という達観のような感情がわいたのを覚えています。
結局父がひとみちゃんを離さないので、ひとみちゃんは棺に入れませんでした。
そういう母は認知症になった父親を毛嫌いし、最後は手話のようなかたちで
「お父さんを病室に入れないで!」
とまで訴えていましたが、その3年後、父は急になくなりました。
文句を言いながらも父を頼りにしていた母でしたので、やはり寂しくなって父を天国に呼んだような気がします。
享年78歳でした。
ひとみちゃんは、父の棺に入れてあげました。
母の作った鍋敷きはめちゃくちゃ重宝しています。
あと、トイレットペーパーを入れる「ロールちゃん」も箱型ティッシュが値上がりした今、床にはねたちょっとした水滴をふき取るときなどに大助かりしています!
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