プレイヤーの感想にもあるように,VASSALは十分な実用性を持っている。ただし,現状ではまだまだプレイヤーに素養を要求する。私が知る限り「フリーで手に入る,最も簡単なVASSALのゲーム」である今回の「シュペー号追撃」も,一度もボードゲームをやったことがないという人にはハードルが高く感じられるだろう。  日本国内においては,VASSALによる対戦やモジュールの開発は,主に「Must Attack」というSNSで行われている。登録制のSNSなので,メールアドレスがあれば誰でも参加可能だ。  また,VASSALは単に「アナログのシミュレーションゲームのエミュレーター」であるだけではなく,VASSALという環境であるということにも注目したい。  現在,UGC(user Generated Content=ユーザー作成コンテンツ)というムーブメントはさまざまなジャンルで広がっており,ゲームもまたその例外ではない。Flashなどを使った手軽なカジュアルゲームは,さまざまなプラットフォームで展開されている。  しかしながら,「やっぱりプログラミングとなると……」と思っているユーザーは,少なくないだろう。便利なツールが用意されていたとしても,それなりにハードルが高いのは事実だ,cabal rmt。  VASSALは,ro rmt,モジュールの制作にこそJavaの知識が必要になるが,モジュール化される前のルールであれば,紙と鉛筆(+あふれる熱意)があれば誰でも作成できる。そしてその作品が十分に面白ければ,誰かがモジュール化を進めてくれることだってあるだろう。  同様に,Javaが使える技術があるならば,紙と鉛筆の世界に拘束されず,VASSALという環境ならではのシミュレーションゲームをデザインすることだって可能だと思う。  UGCのプラットフォームとしてVASSALはいささかマニアックかもしれないが,十分な可能性があるのだ。  なお,VASSALはいわば「ファンの良識と努力」によって支えられている。これはまたVASSAL上で展開されるゲームにも通じるもので,VASSALそのものは,露骨なインチキであってもこれを阻止する能力を持たない。だからといって,したい放題をすれば,それは多くの人々の努力と愛情を破壊する行為にしかなり得ないことは,忘れられるべきではない。  同様に,「なぜこのゲームのモジュールを作らないんだ」「オレはこんな面白いゲームを作ったのに,なぜ誰もモジュールにしてくれないんだ」と他人に強要したり,ましてや「このゲームが面白いのは分かったから,これをみんなに遊んでほしいならルールの違法コピーを配布するのが当然だろう」といった反社会的な行動は,その人の品位をいたずらにおとしめるだけだ。たとえUGCであろうと,いやむしろUGCであればなおさら,作る人と遊ぶ人が相互に補完し合わなければならない。  ちょっと大げさなことを書いたが,ゲームを好きな人間として良識をわきまえて遊ぶ限り,VASSAL環境とシミュレーションゲームは,大きな楽しみをもたらしてくれるだろう。  なお,以下に現在日本でVASSALのモジュールを入手できる場所を紹介する。基本的に,当該の雑誌/ボードゲームを購入した人向けのサービスであることをお忘れなく。
関連トピック記事: