「今のPlayStation Vitaに足りないものとは……?」と聞かれて「ロボットや!」と即答してしまう人なら,マーベラスAQLが6月28日に発売したは,すでにレーダーで捕えているに違いない。

PlayStation Vita「アサルトガンナーズ」 。PlayStation Storeダウンロード専売 1480円(税込)


 本作は,プレイヤーが人型兵器をカスタマイズ/操作して,迫り来る敵と戦っていくTPSタイプの3Dアクションシューティングゲーム。iOS向けアプリ,Android向けアプリを下敷きに,PS Vita向けにグラフィックスの強化や,新たなインタフェースへの対応,ミッションの拡充などを行ったダウンロード専売タイトルだ。
 ちなみ開発元は,1995年の設立以来,数々の大手パブリッシャのもとで着実にゲーム開発実績を積み重ねてきたSHADE(シェード)。それまで社名が表に出ることは少なかったが,Destroy Gunners Zがで特別賞を受賞したこともあり,その知名度が飛躍的に高まっている。


 さて,本作は簡単にいうと「ロボゲー」なわけだが,ロボゲーと一口に言っても,操作のシミュレーション部分にフォーカスした「鉄騎」,プログラムに特化した「カルネージハート」,アクション要素とカスタマイズ要素をバランスよくミックスした「アーマード?コア」など,シリーズによってその魅力はさまざまだ。その中にあって,本作はどういったプレイフィールを持つタイトルなのか,コアな魅力がどの辺りにあるのかを見ていきたい。
 なお,実は本作には“隠し機体”として,4Gamerとのコラボパーツが収録されている。そのパスワードを以下に紹介するので,製品版所持者も現在購入を検討中という人も,ぜひチェックしてほしい。

アサルトガンナーズ×4Gamer.netコラボレーションパーツ


 4Gamerコラボ機体の特徴はズバリ,「搭載できる弾数が多い」という点。同じ武器でも,4Gamer機体にセットすると,最大装弾数が増えるというスグレモノだ。延々とWAVEに立ち向かう後述の「インフェルノモード」などで威力を発揮してくれるだろう。この機体を手に入れるには,本作で以下のパスワードを入力してほしい。

パスワード:
WQJHF86Z339DNFAP


予想以上に硬派なSF-TPS

豪華声優陣が一服の清涼剤か


 本作の舞台は,208X年という近未来の火星だ。人類は,火星のテラフォーミングの途上にあり,その火星で実作業を担う自動化されたロボットの無人システム「ANTS」が,突然暴走を始める。
 プレイヤーは,火星と軌道エレベーターで結ばれた衛星「デイモス」の宇宙基地でパトロール任務を行う部隊「DESTROID ARMS ASSAULT TEAM」(通称「DAT」)のメンバーとして,「DESTROID ARMS」という搭乗兵器に乗り込んでANTSの暴走を食い止めるべく戦うことになる。

 シングルプレイのモードは,ストーリーに沿って進める「ミッションモード」と,タワーディフェンスゲームのように“WAVE”という単位で押し寄せるANTS配下のロボット達を蹴散らしていく「インフェルノモード」の2つ。
 アドホック通信で最大4人が同時参加可能なマルチプレイは,シングルプレイの2モードに加えて,プレイヤー同士で対戦できる「バトルモード」を備えている。

【ミッションモード】

ストーリーに沿って次々と課せられる任務を遂行していくミッションモード。難易度はEASY/NORMAL/HARD/VERY HARDの4つ



【インフェルノモード】


 ミッションモードとインフェルノモードでは,経験値と「開発ポイント」を入手できる。得た経験値で「パイロットLV」を上げ,開発ポイントで機体を強化することで,さらに難度の高いミッションや,より多くのWAVEに挑めるようになるわけだ。


 ゲームの流れとしては,まずはストーリーを楽しみながら,ミッションモードをひたすらクリアしていくことになるだろう。ミッションを進めていくことで,前述のとおり経験値と開発ポイントが稼げるのはもちろん,さまざまな要素がアンロックされていく。代表格は,機体に装着する武器,装甲,ECM(誘導ミサイル撹乱装置)などのパーツ群だが,そのほかにもカスタマイズのベースとなる機体そのものや,プレイヤーを音声でサポートしてくれる「ナビゲーター」などがある。





 ——このように,本作は昨今珍しい(?)かなり硬派な内容だ。基本的に人間を始めとした有機体は映像としてまったく登場せず,砂っぽく乾いた火星の土地や,ひんやりとした無人の施設内を舞台に,ひたすら敵味方の機体がバトルを繰り広げる。
 そんな本作にとって,豪華声優陣の勇ましかったり黄色かったりする声は,一服の清涼剤となるだろう。花澤香菜さん,能登麻美子さん,田中敦子さん,坂本真綾さん,藤原啓治さん,中田譲治さん,子安武人さんなど,こう言っては失礼だが,CVを担当するのは1480円(税込)のタイトルにはアンバランスな印象さえ受ける豪華な布陣である。
 ゲーム自体が無骨な作りなだけに,声優陣の声とのギャップも否めないが,本作における声の要素はそれなりに重要である。物量で迫ってくるANTSとの交戦中は,HUDでステータスを確認しているヒマすら惜しく,ナビゲーターの声は,戦況を知る上で重要なサポートとなったりもしてくれるのだ。




プレイフィールは“無双”ライク。

“敵弾をくぐりぬけて撃つ”という謳い文句に偽りなし


 結論から言ってしまうと,本作はアクションに特化した作りといえる。ストーリーは要所に意外性はあるものの,良くも悪くもSF然とした展開であり,カスタマイズ要素も本作においては重要ではあるが,緻密な設計を重ねた上で戦闘に臨むようなものでもない。
 とにかく,自分の腕を頼りに“いかに効率良く目の前の敵の攻撃をかいくぐりつつ殲滅させるか”を追求するような遊び方になる。


 基本操作は以下のとおりシンプル。操作説明にあるとおり,攻撃(Rボタン),視点移動(右スティック),武器変更([△/○/×/□]ボタン)という3つの操作は,タッチパネルでも行える。
 ちなみに,Rボタンで敵を攻撃する場合は,画面中央のレティクルを敵に合わせる必要がある。こうなると,エイミングの速度がDESTROID ARMSの旋回性能に左右されるので,画面内のタップした場所を直接攻撃できるタッチパネル操作のほうが,使い勝手は良いだろう。


画面左が右スティックとRボタンで,画面右がタッチパネルで攻撃を行う場合。このあたりはスマートフォン用ゲームが元になっているからこそといった感じで,操作上効率が良いのは後者のほうだ

 ミッションの内容は主に,敵の殲滅,拠点の破壊,一定時間レーダーなどのオブジェクトの“そば”を制圧する,などといったものだ。制限時間内に目的を達成できなかったり,自機の耐久力がゼロになったりすると,そのミッションは失敗となる。
 自機は徐々に回復するシールドで守られており,シールドが0(ゼロ)の状態で敵の攻撃を受けると,耐久力が減っていくという仕組みである。

 さて,本作の謳い文句は,「飛び交う弾道をくぐり抜け,無数の敵機を撃ちまくる」というもので,実際になどにはそのように書いてある。それを見た筆者は「ププッ。くぐり抜けるってどういう状態?」などと思っていたのだが,実際にプレイしてみると,だんだん「なるほど」と思えてくる。

 序盤こそ,一定の広さを持つマップで,数体のまとまった敵を各個撃破していくというのんびりした内容だが,ミッション15以降あたりからは敵が全体として一つの“塊”と形容できそうなおびただしい数になってくる。
 一つ一つの威力は弱い敵弾も,数十体から繰り出されることで瞬時にこちらのシールドを削る威力となり,比較的ゆっくりとした誘導ミサイルも,束となって噴射のパーティクルで画面を覆いながら迫ってくる。



 こうなってくると,こちらは手も頭も極めて多忙だ。速い弾も遅い弾もひっくるめて「敵の攻撃」とだけ認識し,できるだけ敵に背後を取られたり挟撃されたりしないように,また一度の射撃でより多くの敵を破壊できるように位置取りしながら戦うことになる。まさに,“止まったら死ぬマグロ状態”である。
 尾をひきながらぎゅるぎゅると迫ってくる誘導ミサイルを縦横に移動してやりすごしていく感覚は,たしかに「弾道をくぐり抜ける」と形容できるもので,これによってサーフィンにも似たスリルと爽快感を味わえるのだ(サーフィンやったことないけど。たぶんそんな感じだろう)。



 面白い,というかちょっと疑問符が付いたのは,瞬時に加速して移動するというロボゲーには欠かせない「ブースト」の仕様。
 アーマード?コアシリーズを始め,ほとんどのロボットアクションゲームはブーストと耐久力のゲージに依存関係がないことが多いのだが,本作はちょっと違う。本作では,ブーストとシールドのエネルギーが共有されているのだ。
 これは,ブーストの使用でシールドエネルギーを消費すれば,シールドが消失して機体を耐久力減少の危険にさらしてしまうということであり,同様に,被弾してシールドが消失した状態ではブーストを使うことができないということでもある。
 ブーストを使うことがリスクを伴うという点には納得できるが,追い込まれれば追い込まれるほどブーストが使えなくなる点には少しストレスを感じた。粘ったり,形勢逆転を狙ったりしにくいという点で,少し爽快感が削がれているポイントと言えるかもしれない,rmt。リアルっちゃあリアルなのかもしれないが。



ボリュームは少ないものの,

カスタマイズは“遊ばせてくれる”ポイント


 先ほど,本作のカスタマイズについて「緻密な設計を重ねた上で戦闘に臨むようなものでもない」と書いたが,これは「数値を細かく設定してプレイフィールの変化を感じ取れるようなものではない」という意味だ。
 裏を返すと,武装やオプションを替えると劇的にプレイフィールが変わるということでもある。とくに,ボス級のキャラクターが登場したり,敵の攻撃が弾幕化してくる中盤以降で,カスタマイズはかなり重要,というか必須といえる要素だ。


 「DESTROID ARMS」の機体設計では,まず機体のベースとなる上半身(「BODY PARTS」),下半身(「LEG PARTS」)を選択する。この時点で耐久力/基本攻撃力/オプション装備のスロット数などの基本的な能力が決定。これに対して,メイン/サブ/フィスト/ショルダーという4か所に武器を,空きスロットにそのほかの戦闘を有利に進めるためのパーツを装着する仕組みだ。

メインとなる上半身/下半身のパーツは10種類以上。下半身のパーツには,機動力の高い逆関節型や,高い耐久力を持つタンク型などがある。つまり,萌える

メイン/サブには,比較的高い攻撃力で装弾数の多いアサルトライフルや,近距離用のショットガン,貫通力のあるレーザーライフルなどを装備可能。フィストには格闘用の武器を,ショルダーには,誘導ミサイルのランチャーやキャノン(榴弾砲),バルカンなど重量級の武装を装着する

 上半身/下半身というメインパーツは,アンロックしたものなら,貯めた開発ポイントで「開発」(使用可能状態にすること)したり,10段階の「強化」によって能力を上げたりすることができる。なお,強化では,段階に比例して必要な開発ポイントは増加する。
 また,上半身/下半身合わせて種類は15以上あるので,すべてのメインパーツを最大レベルの10まで持っていくにはかなりの時間を要する。しかし,この点が,空いた時間にでも本作をコツコツ進めようというモチベーションの一つとなっている。


 重要なのは,本作におけるバトルは,シングルプレイ時には僚機3機を含めて4機,マルチプレイ時にはプレイヤーのみ4機が出撃可能な点。これは,ミッション/インフェルノのどのモードでも共通している。
 自機も僚機もすべてプレイヤーが設計可能となっており,4機すべてを同じ構成にしてもいいが,僚機は「シールド」を持っていないため,どうしてもプレイヤー機より倒されやすい。そこで,耐久力とダメージ軽減を重視するなど,機体そのものの設計,そして部隊としての設計をキチンと行うことで,殲滅力は大きく変わってくるのだ。



 さて,ジワジワとパーツの能力が上がっていく「強化」だが,レベルを1つ上げるごとに向上する能力はランダム。例えば,上半身パーツなら耐久力や基本攻撃力,各種攻撃の耐性など計10のパラメータがあるのだが,レベルアップさせてどの能力がどの程度上がるのかは,実際に上げてみないと分からない。最大レベル10まで上げたときの結果はどのプレイヤーも同じになるが,それまでのパーツAとパーツBの能力の違いがハッキリとは分かりにくいのである。

「標準ボディ系」のMKRV-BD/ZのパーツLVを1→2へ上げたところ。エネルギー回復速度と衝撃耐性,爆発耐性が向上している


 開発にはそれなりの開発ポイントを消費するので,まんべんなくあらゆるパーツのレベルを上げていると,プレイヤーのスキルによってはミッションの進度と機体の強さがアンバランスになり,能動的に「開発ポイント稼ぎ」を繰り返して機体を強化しなければ苦戦するミッションが出てくることになるかもしれない。
 この「全パーツを最大値まで上げないと,本来の強さが分からない」部分は賛否両論ありそうだ。長く続けるモチベーションにつながるととる人もいるだろうし,低レベル段階におけるカスタマイズの戦略性を削ぐと感じる人もいるだろう。
 ミッションにできるだけ苦戦しないように進めていくなら,汎用性が高く序盤で手に入る二脚のいずれかに開発ポイントを全部突っ込んで,とりあえず最大レベルのパーツを一つ作って進め,またほかのパーツに集中してレベルを上げていく,という形でプレイすると難度の問題は出にくそうだ。


1480円(税込)という価格で

ロボゲーのエッセンスを一通り体験できる


 ボリューム面に関しては,「1480円という価格なり」と言えるかもしれない。ベース機体にはもう少しバリエーションが欲しかったところだし,最強に強まった(と思える)自機を試すための場がオンラインに存在しないため,ゲームをクリアしたりプラチナトロフィーを取ったりした段階で,遊ぶモチベーションがガクンと下がってしまう人がいるかもしれない。

 一方で,射撃,スピーディーなアクション,カスタマイズと,ロボットをモチーフとしたゲームの持つエッセンスを一通り備え,豪華声優陣を起用している作品として,そのコストパフォーマンスの高さはキラリと光っている,ro rmt
 そもそもロボットモチーフのゲームそのものが多くないわけだが,さまざまな目標を設定してトライ&エラーを繰り返せる,なんというか,良く言えば「硬派」な,悪く(?)言えば「古き良き時代を思い出す」作りは,「ロボットゲーム」と聞くとズボンをガッと下ろしてしまうような筆者からすれば,「続編もどうぞよろしくお願いします」と期待したくなるものだ。

 かつてはアーケードゲームがフラッグシップとなってコンシューマへ——誤解を承知でいえば——「降りてくる」のが一般的だったが,本作はスマホのヒット作品がコンシューマへ——誤解を(略)——「昇ってくる」といった形となっている。
 その流れの中で,「昇ってくる」ときに取捨される/追加される機能はどんなものかなどを細かく見ていくことで,コンシューマ機の現在の立ち位置が明確になっていくのかも知れない。

 ちなみに本作は,PlayStation Storeで無料体験版も配信されている。本作に興味を持ったはいいが,「くっ……1480円(税込)とはいえ,ランチ三日分だぜ……」という筆者のような方は,まず体験版で遊んでみてはいかがだろうか。


関連トピック記事: