厳重に監視された列車 | Untitled

厳重に監視された列車(’66)チェコ国旗

 

原作:ボフミル・フラバルの同名小説。

 

監督:イジー・メンツェル

 

 

観たかったんですっ! この映画・・・・

 

“チェコ・ヌーヴェルヴァーグ” の代表的作品で

廃盤DVDが笑うしかないぐらい高値が付いていて

半ば、諦めかけていたところ、嬉しい、嬉しい、再ソフト化泣

 

 

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに占領されたチェコ。

父親の跡を継いで駅員となった青年のミロシュは、まだ女を知らない。

恋人の車掌マーシャとの一夜に臨むが、男になれず絶望してしまう。

そんな時、彼の前に性の手ほどきをしてくれる謎の美女が現れる。

"勝利の女神"と呼ばれる彼女は、駅を通過するドイツ軍の

軍用列車を爆破する命を受けたレジスタンスの闘士だった。

 

 

主人公の新米駅員と恋人が、今まさに唇を重ねようとした時

ドイツ軍の物資を運ぶ“厳重に監視された列車”が二人を引き離す。

 

ま、このシーンは比較的分かり易くて “まとも” なんですけれど

この映画を一言で言ってしまうと、相当 “ふざけてる” んです。

 

主人公の青年が初体験するまでの青春物語を、ブラックユーモア

性的な暗喩をあちこちに散りばめながら描かれています。

 

青年ミロシュの祖父はドイツ軍の戦車を催眠術で止めようとして

気を送ったら、そのまま戦車に押し潰されて死んでしまったとか

ミロシュの名字“フルマ”は、ちょっとここでは書けないような

意味を持っていて、「僕の名を聞くと誰もが笑う」とこぼす。

 

駅員たちの何気ない会話の中で、唐突に女性駅員の胸元が

アップになったり、夜勤中に女性駅員の太ももやお尻に

ゴム印を押して遊んでいたり・・・・ “ふざけてる” でしょ。

 

 

ただ、映画の舞台となっているのは、ナチス・ドイツの統制下のチェコチェコ国旗

                                             (正確にはチェコスロバキア)

 

下ネタが、ちょいちょい登場するように

ナチスの黒い影もちょいちょい、見え隠れする・・・・・・。

 

ふざけた中にも、もやもやとした悲劇性が浸食してくる・・・・

 

そして、この映画製作されたのは、社会主義統制下で

映画などの文化活動が極端に制限されていた時代。

この時代のチェコ自体も “厳重に監視された列車” だったんです。

そんな中で何とか“自由な表現”をしようとして生まれたのが

 

“チェコ・ヌーヴェルヴァーグ”

 

女性駅員の太ももやお尻にゴム印を押すという行為も

ナチスの軍用列車を通過させる際、押印するドイツ語のゴム印を

女の子のお尻に押して、恍惚とした表情をさせることで

“自由への渇望” を表しているんだと思います。

 

 

主人公のミロシュは、勤務中以外でも駅員の帽子を脱がない。

恋人とベッドに入っても帽子を脱ごうとしない(だから上手くいかないんだよ、笑)

 

初出勤の日に母親から、うやうやしく被らされた駅員の帽子が

この青年にとって “枷(かせ)をはめられた” 状態となり

女の子と上手くできないことが、ナチス・ドイツから、もしくは

ソ連から睨みをきかされた状態のチェコを暗に表していたのでは?

 

 

 

アカデミー賞外国語映画賞受賞作

 

 

 

 

イジー・メンツェル監督が「プラハの春」以前の1966年に製作した長編初監督作。

新米駅員の性の悩みと奮闘、そして忍び寄る戦争の不穏な空気をユーモラスなタッチで描き出す。