瀧の白糸 | Untitled




瀧の白糸(’33)日本


原作 : 泉鏡花の「義血侠血」

監督 : 溝口健二


サイレントの日本映画なんて初めてかも。

登場人物の台詞を話したり、ナレーションしたりする “活弁士” も新鮮っ。

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

明治23年の初夏、北陸一帯を巡業する見世物師の中に

“瀧の白糸”と呼ばれる美人で人気の水芸人(入江たか子)がいた。

舞台が跳ねた夜半、ふと見上げた橋の上で白糸が再会したのは

以前、馬車に乗り合わせた、法律を学ぶ苦学生の村越欣也(岡田時彦)

欣也に一目惚れをしていた白糸は、学費の援助を申し出て、欣也を東京へ送る。

しかし、浮き沈みの激しい旅芸人にとって、長きに渡っての仕送りは難しく

高利貸しにまで手を出してしまう白糸だったが・・・・。

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

白糸と欣也が橋の上で語らうシーンが何とも風情があるんですよね。

援助の恩返しに何をすれば良いか尋ねる欣也に対し

白糸は恥らいながら 「ただ、欣さんに可愛がってもらえたら・・・」

今夜だけ可愛がってもらえれば・・・・

の先にあるものを、ほのかに望んでいたんでしょうね。

この白糸という女は、ほんとバカなんです。

ただでさえ、仕送りもままならない状態なのに

妹分の親が病気だと知って、有り金をその娘に渡してしまう。

終いには、その娘は男と一緒に夜逃げしてしまう有様。

困った人を見ると助けたくなる人が良すぎる白糸。

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

終盤、白糸と欣也が再会するシーンが、なんとも悲しい因果か。

愛する男が立派に出世してくれることだけに生きがいを感じ

女のプライドを貫き通した一人の女芸人。 泣かせるぜィ。


フィルムの傷みで、映像は相当ひどいものですが

この時代の作品が観れるだけでも貴重なことなのかも。

ふだん馴染みのない、泉鏡花の原作にも触れることができたし。


→ 溝口健二監督作品




愛する青年の夢を叶えるべく、身を削って金の仕送りをする水芸人“瀧の白糸”の破滅を、溝口らしい容赦ない筆致で描いた作品。
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