残菊物語 | Untitled




残菊物語(’39)日本


原作 : 村松 梢風の同名小説

監督 : 溝口健二


だから “ミゾグチ” が好きなんだ・・・・そう強く感じさせてくれる作品。

クロサワ? オヅ? いや、やはり “ミゾグチ” だっ!!

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

歌舞伎役者の二代目菊之助(花柳章太郎)は、周囲からは 「若旦那。若旦那。」

と、ちやほやされているものの、芸の未熟さゆえ陰口を叩かれている。

その様子を見かねた弟の子の乳母のお徳(森赫子)は

菊之助の身を思い敢えて彼に厳しい言葉を投げかける。

これを機に菊之助とお徳は次第に愛し合うようになるが、周囲がそれを許さない。

二人は駆け落ち同然で大阪に行ったのだが・・・・

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

この作品で確立されたと言われている

流れるようなワンシーン・ワンカットの長回し。

冒頭、歌舞伎の舞台裏の楽屋の1階から2階へ、そして舞台へ。

菊之助とお徳が歩く夏の夜の道。

少し斜め下からのアングルで、かなり長い長回し。

そして、主演2人をはじめ登場人物のアップがほとんどない。

常に、冷めた目線のような引きのカメラで捉えていている。

台詞を喋っている人間を敢えて画の中から外して

最後の方で、ポンと画の中に入れたりして、存在感を強調させている。

ちょっと!あなたが食べてるの消しゴムですよ!

物語の内容的には、メンロメロのメロドラマ。

2時間23分とやや長め、映像は古い、台詞は聞き取りづらい。

そんなマイナス要素を全く感じさせない作り。

お徳が袖で見守りながら菊之助が復活の舞台に立ったシーンは涙してしまったし

船乗り込みの先頭に立つ菊之助のラストシーンは、ほんと見事だった。

人間国宝にもなった花柳章太郎をはじめ、役者たちの

帯を締めたり、立ったり座ったり、といった立ち振る舞いのしなやかさが

作品の “気品” を高めていたようにも感じる。


→ 溝口健二監督作品


五代目・尾上菊五郎の養子である菊之助は、上滑りな人気に思い上がっていた。そんな彼の芸の拙さを指摘した弟の若い乳母・お徳に、菊五郎は愛情を抱き始めるが…。
残菊物語 [DVD]/花柳章太郎,森赫子,高田浩吉

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