夏の嵐 | Untitled



夏の嵐(’54)イタリア国旗


原作は、カミロ・ボイトの短篇小説 『官能』

監督は、ルキノ・ヴィスコンティ


フェリーニが庶民芸術なら、ヴィスコンティは貴族芸術

貴族の末裔であるヴィスコンティが描く、本物の絢爛豪華な世界

衣装、美術品、建築物、すべてにおいて美しいです。

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1,866年、オーストリア占領下のヴェネツィア

オープニングはオペラから始まります。

オペラのことなんか、さっぱり解らない私ですが

感じるんです。伝わってくるんです。響いてくるんですっ!

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オーストリアの中尉ファーリー・グレンジャーと

地下運動の指導者マッシモ・ジロッティとの決闘騒ぎが起こる。

マッシモ・ジロッティのいとこである伯爵夫人アリダ・ヴァリが仲介に入るんですけど

彼女は、敵対する国の軍人であるファーリー・グレンジャーにメロメロになってしまうんです。

深夜のヴェネチアを2人で歩くシーンがあるのですが、川?沼?のほとりを歩いているとき

建物の壁に、月明かりで照らされた水面のゆらめきが、ゆらゆらと映るんです。

2人の距離が縮まる情緒的でとても好きなシーン

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逢引を重ねているアパルトマンの一室で、風でカーテンがゆらめき

ゆらめいた光が2人を映すんです。

毒々しい描き方のイメージが強いヴィスコンティが、こんな優しい描き方するんですね。

ただ、物語は狂おしいぐらいの愛憎劇、そして復讐劇です。

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このシーンも好きです。

カメラをこの位置で固定して、アリダ・ヴァリが歩いていく後姿をずっと映しているんです。

その後姿が哀しい・・・・妄信的な愛なんです。

相手のファーリー・グレンジャーは、 “伯爵夫人” という階級に憎しみを持っているんですね。

彼女から、お金を巻きあげます。

「愛している」 と言いながら彼女が差し出した金を拾い集める。

この男の退廃っぷりは愚かでもあり、時代がこんな男を生んだのかとも感じる。

いや、今もいますね。こんな男(笑)

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貴族の伯爵夫人であるアリダ・ヴァリが、愛に溺れ堕ちていくんです。

オーストリア兵の宿舎にまで、彼に会いにいくんですけど

沢山の兵士に冷やかされ馬鹿にされ、貴族としてのプライドがずたずたになるんです。

正気を失ったかのような表情をして、自分がとんでもないことをしていると頭では分かっているけど

もう自分でも止められないんです。

この作品の原題が 『Senso』=『官能』

彼女は、醜くも美しい “官能” を体現していました。

そして “壁際に立つ” を、美しく撮れるのは、ゴダールだけではなかったですね。

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当初、主演にマーロン・ブランドとイングリッド・バーグマンを迎える予定だったらしいですが

いやいや、このアリダ・ヴァリとファーリー・グレンジャーで、良かったのではないですか。




→ ルキノ・ヴィスコンティ監督作品






舞台は19世紀オーストリア支配下のヴェニス。そこで運命的に出会った伯爵夫人(アリダ・ヴァリ)と青年将校(ファーリー・グレンジャー)の激しい愛と別れを重厚に描いていく。
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